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カテゴリ:思い出
昔々、はみ出し野郎で傍若無人だった就職したての私を、何故だかわからないがとても可愛がってくれたOさんと言う上司がいた。話好きで毎日の朝礼では仕事の話に留まらず、昔話から武勇伝まで一人で毎日10分もしゃべるのだから、辟易していた人も多いだろうが、私はついつい引き込まれ聞き入っていた
Oさんは秋田県の鳥海山麓にある矢島と言う小さな町で育った。父親は営林署勤務で、鉄砲撃ちの名人でもあった。事情があり私は別の会社に移ったが、私の結婚式ではOさんに主賓になってもらい、それからも親戚付き合いのような関係が続いている。 親戚にYと言う娘さんがいる。その彼女、矢島に嫁ぎ若夫婦で遊びに来てくれた。私は話の種に矢島出身のOさんの話をし、父親は営林署勤めだったことを話すと、家の母方の祖母も営林署勤務だったと新郎が言う。世代も違うし70年も昔の事だからわからないだろうなと思いつつも、念のためOさんの氏名を記したメモを若夫婦に託した。 矢島に帰った若夫婦、さっそくおばあさんのSさんにメモを見せたところ、「知っているなんてもんじゃない」とOさんの消息が知れたことに感激し、涙まで見せたと言う。なんでも父親同士が営林署勤務で、Sさんも営林署に勤めたとか。それならば世代は合っている。Sさんのお兄さんとOさんは親友であったらしい。 それでも半信半疑で、写真を送り確認してもらおうと思っていたが、SさんはOさんの事を「大きなことを言う人だった」と言っていたとのこと、これは間違い無いなと私も納得しOさんに電話した。 矢島のSさんをご存知ですかと尋ねれば、「知っているなんてものじゃない」と期せずしてSさんと同じ答え。「昔、筋迎えの家に住んでいたんだ。いやぁ、最近にないうれしい話だ」と感激したご様子。私も長らくお付き合いいただき、初めてお役に立てたかと大いに喜んだ。お互いの住所、電話番号を知らせ、Oさんには娘Yが撮って送ってくれたSさんの写真を送った。お歳を召しても上品な顔立ち、若い頃は秋田美人だったに違いない。 Yは、SおばあさんにOさんに電話してみるよう勧めたらしい。「急になんて恥ずかしくてできない」とのこと。そりゃそうだろうと思う。若い者がやるのはここまでにして、後はお年寄り同士に任せようとYに言ったが、これは普通若い人のために年寄りがやることで、話が反対だと可笑しくなった。 世の中は狭いもの、こんなことがある。なんだか関係者全員の心が温まった早春の出来事。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2022/04/11 09:25:39 AM
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