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2010.02.20
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『星空のメモリア』感想 第二十七回

“姫榊こさめ”編




「見えなくてもそこにあるモノ」というのは、この作品の重要なテーマのような気がしてきた。

その要旨は、「かわいくて健気な女の子だったら夢幻でもなんでもいいよね」という主張にありますか?



※以下、ネタバレ注意



















































前回のあらすじ。

例えこさめが夢幻でも、彼女はそこに在る。



【9月15日】

満月の中、存在が揺らいでいるこさめを抱き締めることは出来ない。

例え声を掛けても、どんな愛の言葉も無意味だろう。

洋は目を閉じる。



たとえ夢幻だったとしても関係ない。

惑わされるな。

視覚は誤魔化せても、感覚は誤魔化せても。

その気持ちだけは、誤魔化されることはない。



こさめの存在を信じて、手を伸ばす。

引き寄せて、抱き締める。

「つかまえたぞ、こさめさん」

洋の腕の中に、確かな輪郭を持って、こさめが居た。

やりやがった…。

こさめは驚きに目を見開いている。

「お母さんや、雪菜先輩だって、満月の日は難しかったのに……」

「わたしの姿を捉えられなかったのに……」

じゃあ、愛の力だな。

少なくとも、星天宮とかいう連中が使う胡散臭い霊能力もどきよりは、よほど信じるに足る理由だろうよ。

洋は、こさめにキスをする。

「小河坂さんが……エッチな狼男さんに、変身してしまいました……」

「そうなるように、誘われたからな」

誘う誘わない以前の問題で、そもそも服着てないわけだ。

「小河坂さんに、初めてを、無理矢理奪われてしまいました……」

「あなたに……あげてしまいました……」

洋の腕の中で微笑みながら、幸せそうに繰り返す。

良かった、本当に良かったなぁ……。

「言葉だけじゃ……まだ、わかりません……」

「だから……」

その場で求め合う二人。

今回は、洋にはあまり非が無いとは言えまた野外か。

「満月の下で……わたしを抱けるのは……」

「世界できっと……あなただけ……」

「わたしは、恋の資格を得たんじゃなくて……」

「あなたとなら恋ができる、その資格をもらったのかもしれませんね……」

うん、良かったな……こさめ。

でも、とりあえず早く服来た方がいいんでねーの。

「あ……月にうさぎがいるって、本当なんですね……」

「今まで……ちゃんと向き合えなかったから、知りませんでした……」

悪夢は克服されたか……今回はメアの力も借りず、洋一人でよく頑張ったよ。



【9月16日】

そういうわけで、晴れて恋人になった二人。

街中で待ち合わせして、呑気にデートを楽しんでいる…。

「デートしてあげるんだからありがたく思いなさい、とか」

「デートして差し上げるんですから、ありがたく思ってくださいね」

「わたしのクツをお舐め、とか」

「わたしのクツをお舐めになってくださいね」 

「……なにか違うな」

何か違うのはお前の頭だ、と思ったが呆れ顔のこさめが非常に可愛いので何でもいいやもう。

以前のデートごっこのやり直しとばかりに、腕を組んで歩く二人。

「鼻の下、伸びてませんか?」

「言いがかりはよしてくれないか」

いや、そりゃ伸びるよ。

無茶言っちゃいけないよ。

「鼻の下、伸びますか?」

言いながらぐいぐいと胸を押し付けるこさめは、洋の鼻の下を伸ばすギネス記録にでも挑戦しようとしているの?

結局、こさめの胸に腕を埋めたまま観光案内を受けることになった。

なんて目の毒なカップルなんだ。

「わたしはこれまで、自分の身体を氷の彫刻のようだと考えていました」

「冷たく精緻で、作り物めいた、まるであたたかみの感じられない肌だと思っていました」

「ですから、小河坂さんも……」

…まだ微妙に卑屈なのが治っていないが、どうしてこのゲームのヒロインは皆してこうなんだ。

「俺の恋人になってくれないか」

「ごめんな。順番、逆になったな」

確かに逆過ぎるけど、あの場はこさめから求めたんだし。 

問題ないかと思われたが、こさめは逡巡し、返答を保留する。 

「神社に、来ていただけますか」

「返事は、そのあとでもよろしいですか……」

……まだ何かあったっけ。



洋はこさめに連れられて、星天宮の社殿へ。

そこでこさめは、こももルートで語られた、自分の生い立ちを話す。

「わたしの身体は、月の干渉を受けやすいんです」

「月の輝きとは、太陽の光を反射しているものです」

「逆を言えば、満月は、月本来の光が最も弱くなるんです」

ふむふむ。

「だから、もしかしたら、雲雀ヶ崎隕石とは月の石なのかもしれません……」

「わたしは、月の光を分け与えられて、ここに存在しているのかもしれません」

こさめの依り代は、月の石……。

道理で、こももが月にだけは嫌悪感を示さないわけだ。

「……こさめさんは、辛いのか?」

「……はい」

「何が辛い?どこか痛いのか?」

「心が、痛いです」

……。

「いつ星天宮がわたしを送り還すかわからない。いつ星神さまから力を借りられなくなるかわからない」

「突然あなたのもとを去るかもしれない……」

「それが、辛いです」

それだけでなく、毎月一回は自分の身体が消えかかる、というだけで凄まじい恐怖だろう。

自分は近い内に消えてなくなるという可能性は、こさめにとって漠然とした不安などではなく、リアルな恐怖として常に傍にあったわけか。

「俺にとって、こさめさんはこさめさんだ」

「かけがえのない女の子だ」

「証明……できますか?」

「できる」

「どうやって……」

「こさめさん、好きだ」

ダ、ダイレクトアタック…。 

証明してくれ、と言われているのに力業に出やがったか。

「俺とつきあってくれ」

「俺の恋人になってくれ」

こさめは一度驚いた後、笑顔を見せてくれた。

「……はい」

洋は、こさめをその場に押し倒す……って、ここで?

ここ、仮にも社殿だぞ。

……。

しかも……こ、これは……。

「やっぱりエッチだな」

「ち、ちが……はあっ……ちがうぅ……」

「違うなら、まだ平気だな」

……。

「こさめさんはエッチってことか?」

「エッチ、ですぅ……!わ、わたしっ、とってもエッチですぅ……!」

「エッチならこれくらい平気だな」

お前いつからこんな鬼畜になったの? 

いじめ方がすっごくネチっこいんだけど。

「ひどいですぅ!泥棒さんですぅ!外道さんですぅ!」

然り、然り。

いや、俺の琴線に触れまくる良いエロだった。

事後、こさめは密かに、眠りこける洋の腕から抜け出す。 

「うさぎは、寂しいと死ぬんじゃない……抱き締められると、死ぬんです……」

「うさぎは、弱い生き物だから……」

「苦しまずに、いなくなってしまうんですよ……」

これはマズい。

完全に油断したな。




社殿を抜け出すこさめの後を、星天宮の刺客が追う。

その刺客の前に、雪菜が立ちはだかった。

「この私から逃れられると思っているのか」

さすが先輩は洋と違って頼りになるぜぇ。

観念した刺客は、雪菜の前に姿を見せる。

「……ほう、キミか」

「飛鳥伊麻か」

……“飛鳥”伊麻? 

どっかで聞いたことある名前だぞ。

「キミは、この雲雀ヶ崎の出身だと聞いている。だがキミ自身は記憶を失っているとも聞いた」

間違いねえ、飛鳥未来の近親者だ。

民間人であるはずの飛鳥の親族が、どうして星天宮なんかに…?

「話すのは初めてだったが、キミは無口なんだな」

「……そちらは、案外おしゃべりなのですね」

「そうだな。総本社にいた頃よりも、そうかもしれない」

「……あなたには失望しています」

「気が合うな。私もなんだ」

「私も、こんな自分に失望している」

雪菜の手には薙刀がある。

自分の力量ならば、対手に敗れることは有り得ないと、絶対の自信を持っているようだ。 

「雲雀ヶ崎に来て一年と半年、それだけの期間を私はあの奇天烈な上司と過ごしてきた」

「ストレスが溜まっているんだ。わかるだろう?」

「よって、私は加減できんぞ――――」

戦いが始まった。

雪菜先輩の男らしさがノンストップ。



その頃、ようやくこさめの不在に気付いた洋。

漠然とした不安を感じながらも、境内に出てこももと出くわし、呑気に世間話なんかしている。

「……わたしを怒らせて楽しんでるわけね」

「Sだからな」

「SはSでもヘタレSでしょ」

ヘタレSが定着してきた。



……いや、頼むからさっさとこさめを探してくれ。





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Last updated  2010.02.20 03:20:29
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