NHKBSプレミアム・山口発のドラマ「朗読屋」感想と風景と
1月18日(水)NHKBSプレミアムで 夜10時から 山口発のドラマ「朗読屋」がありました。山口市生まれの詩人・中原中也の詩を軸にした、詩の朗読と山口の美しい風景が響きあう物語ということでした。出演は吉岡秀隆、市原悦子など。「カモメ食堂」の萩上直子の脚本です。 ドラマはリアルタイムで見て 景色を確認したかったので録画もしました。見た感想は メルヘンティックで不思議な物語。 左から 漁師役の山下真司。この人は下関生まれなので山口弁は本物です^^隣が吉岡里帆。図書館司書のひとみ役。中央がマモル役の吉岡秀隆。お屋敷の老婦人・玲子役は市原悦子。右端が緒川たまき。玲子の世話役係の早川役。早川は ひとみの叔母。 市原悦子さんは自己免疫性脊髄炎という病気で入院していてドラマを見ながらご本人と役が重なって、心配になりました。 主人公のマモルは 妻が出て行ったマンションで眠れない日々を過ごします。ベランダから見える景色はドラマに何度か出てきますが 山口市内ですね。 元妻のサユリからかかってきた電話で話すマモル。「眠れないから、夜中も開いている図書館があればいいのに」というマモルに「あるわよ。でも教えてあげない。探せばある。あると思えばある。見つけられる人には見つけられる」というサユリ。 そして「大切なものを忘れて出てきたから 見つけても中を見ずに捨てて」と告げる。 眠れないマモルは 夜中にバイクで出かけると 偶然24時間営業の図書館を見つける。 偶然すぎるけどね^_^; 24時間営業の図書館って 本当に萩にある「須佐図書館」のことですが私は今回初めて知りました。須佐って、「ホルンフェルス」という縞々の海食崖というか断崖絶壁があるのを小学校で勉強し、山口県民なら「須佐ホルンフェルス」をみんな知ってるんじゃないかしら? 偶然行った須佐図書館で、マモルは司書のひとみから 「叔母の早川がお世話係をしている玲子様に、朗読をする人を探している」と 仕事を紹介されます。 地図で探して行った港町(萩ですね)で、漁師に頼んで舟を出してもらい孤島にある大きなお屋敷へ。 林を抜けた先にある洋館に 老婦人の玲子様は住んでいました。 中原中也の詩を愛する老婦人・玲子様(市原悦子)。玲子様のベッドのそばで 中也の「サーカス」を読むように早川に言われるマモル。 「幾時代かがありまして 茶色い戦争ありました」 「探していたんです、その声を・・・」と玲子様は涙を押さえ、マモルは朗読屋として雇われます。マモルの声は、老婦人の亡き父親にそっくりだったのです。 早川からは もっと朗読を訓練しなさい、「朗読をナメルな!」と厳しく注意されます。 数日後、再び舟で孤島に渡り、浜辺で老婦人に中也の詩を朗読します。 詩が生まれた場所で作者の気持ちになって読んできたらどうか と早川に提案されるマモル。 山口市にある「中原中也記念館」に行き、そしてこの場所へ。「長門峡(ちょうもんきょう)」です。ながときょうではありません。 あぁ 懐かしい景色! 山口に帰っても長門峡まで行ったことがない!何十年も行ったことがない!高校生だった夏、クラスの友達とみんなで行き、子供の頃は紅葉狩りに家族で行った。遠い遠い記憶になってしまった。 「冬の長門峡」を朗読するマモル。 「長門峡に水は流れてありにけり 寒い寒い日なりき。」 再び中也の詩を朗読するマモル。 でも もう老婦人の死期は近づいていました。 老婦人の父親は「かくれんぼをしよう」と幼い玲子に言い、玲子が「もういいかい?」と何度言っても返事がないまま 出征し帰らぬ人になってしまったのです。 老婦人の死の病床でマモルは「月夜の浜辺」を朗読します。 「月夜の晩に、ボタンが一つ 波打際に、落ちていた」 この詩は中也の息子が2歳で亡くなった時に作られたといわれています。 老婦人は朗読をさえぎってマモルに頼みます。「もういいかい?」と言ったら 「もういいよ」と言ってください、と。マモルは涙を流しながら 「もう いいよ」と答えるのです。長い長いかくれんぼが終わったのでした。 元妻が「見つけたら捨てて」と頼んだものは 図書館の忘れ物の中にありました。忘れ物と、最後に朗読した詩の繋がり。この夫婦はこの先どうなっていくのか 少しの希望。 山口発のドラマなので 山口が全面に押し出されているのはよくわかります。不思議な雰囲気が面白かったです。港で漁師さん達が、酒を酌み交わしながら 「汚れっちまった悲しみに」を叫ぶように暗唱しているのは かなりわざとらしかったですけどね。 私が1番気になったのは 老婦人の住むお屋敷。 山口市でこの建物は見たことが無い。友人達と「あれはどこだろう?何の建物かしらねぇ」と ドラマの内容そっちのけで盛り上がりました。 気になって気になって、山口放送局まで電話して聞きました(^_-)-☆小野田市にある「小野田セメント山手倶楽部」だそうです。 スッキリしたぁ^^大正3年に完成した洋館です。第4代社長 笠井真三氏がヨーロッパ遊学の帰途英国からコンクリートブロックの型枠を持ち帰り ブロックを製造。大正時代としては珍しいので 国登録有形文化財だそうです。中に入ることはできませんが 外観は見学できるそうです。 中原中也は 古い時代の人だと思っていたけど高校の同期生は、山口に引っ越してきたとき湯田温泉にある中也の実家「中原医院」のそばに家があったので中也のお母さんと自分のお母さんが 茶道のお友達だったとか。30歳で亡くなった息子・中也のことを お母さんは話されなかったそうです。 中学のクラスメイトは、中也のお母さんにお茶を習っていてお姉さんの結婚式に中也のお母さんが出席したとか。びっくりしてしまいました。 山口が故郷の人間にとって このドラマの景色はただただ懐かしいものでした。再放送があれば ぜひご覧ください。