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山への情熱 音楽への愛

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2008年08月19日
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カテゴリ:登山

市内の図書館で司書に蔵書調べを依頼し、やっとウインパーのマッターホルン登攀記を捜し出した。これも近藤 等さんの名訳である。優れた画家であったウインパー本人の手による細密な絵も挿入されていて、これを見るだけでも価値がある。

     ウインパーの書いたマッターホルン.jpgウインパーの描いたマッターホルン


ウインーパーは1865年7月14日8回目の挑戦で、当時難攻不落、かつ初登争いの感もあったマッターホルン登頂に成功した。一行は「輝かしい生涯を圧縮したようなひととき」を味わった。しかしその下山中に事故がおきて7人中4人が遭難して亡くなったのだった。

その様子を描いた絵がツエルマットの山岳博物館に展示してあったのを昨年見た。遭難の痛ましさより絵としての緻密な美しさを感じていた私は今思えば軽薄だった。事故後、天空に霧が湧き出て、そこに十字架が3本現れたという。実に不思議な話であり、遭難という事実と考え合わせると暗示的にも思える。

      3本の十字架.jpg  不思議な十字架の出現

 そこまでは知っていたが、その後のことは全く知らなかった。下山後すぐにウインパーたち主に英国人が事故現場に行き、倒れている3人を発見し、そのままそこの雪の中に埋葬した。しかしその後政府から厳重な遺体収容命令が出され、今度はツエルマットの村人たち21人が遭難者を捜索にいって遺体を収容し埋葬した。相当な危険をともなう作業だったという。

1800年代当時、まだ一時に多くの人命が失われたことがなかった小さな山村ツエルマットでは人々がどんなに恐怖にさらされ、生存したウインパーたち3人もさぞいたたまれなかったことだろう。

さらにスイス政府の予審裁判が開かれてウインパー達3人はその席で取り調べを受けた。強いロープを持っていたにもかかわらずなぜか最も弱いロープを使用し、それが切れて死亡事故になった点に疑惑が持たれた。状況の説明や弁明とかいろいろつらいことが続いたという。

シャモニーでウインパーのお墓を探しあてた時、ロンドン生まれでスイスのマッターホルンを初めて登攀した彼がどうしてフランスのシャモニーに墓があるのか素朴な疑問をもったことは前に書いた。

その理由がわかった。遭難事故は長く彼を苦しめ、アンデスやグリーンランド等他の地で登山家として活躍したが、傷心のツエルマットを訪れることはなかった。彼がツエルマットを再訪したのは1911年老境に達した72歳の時であったという。何とマッターホルン登攀の46年後である。その後シャモニーに移動し宿舎で客死したのである。

遺骸はシャモニーのガイドたちに担がれ、モンブラン山麓のあの墓地に埋葬されたのであった。

彼が残した言葉は私の心に深く沈み、これからの登山の戒めとなろう。

「勇気も力も慎重を欠いたら何にもならない。ほんの一瞬でもこの注意を怠ると一生の幸福をも打ち砕くことになるかもしれないのだ。どんなことも急いではいけない。一歩一歩しっかり見極めたまえ。ことのはじめにあたって結果がどうなるかを常に考えよ」

      煙るマッターホルン.jpg

      悲喜こもごもの歴史を秘めて 煙るマッターホルン 2008.7.27

 





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Last updated  2008年08月19日 09時41分48秒
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Re:ウインパーのその後(08/19)   美都☆姫 さん
今回の双六に向けて・・・
6月から頭の中はその事ばっかりだったので
今、目標が無くなり呆然って感じでしたが・・・

「勇気も力も慎重を欠いたら何にもならない。ほんの一瞬でもこの注意を怠ると一生の幸福をも打ち砕くことになるかもしれないのだ。どんなことも急いではいけない。一歩一歩しっかり見極めたまえ。ことのはじめにあたって結果がどうなるかを常に考えよ」

そんな中でのこの言葉・・・
身にしみます。

有難うございます。 (2008年08月19日 10時08分52秒)

Re[1]:ウインパーのその後(08/19)   エンジェル フェイス さん
美都☆姫さん
>今、目標が無くなり呆然って感じでしたが・・・

お疲れ様でしたね。「目標がなくなり呆然・・・」という気持がよくわかります。私もそうでしたから。
その目標が達成できてれば嬉しい呆然だけど、そうで無い場合は何とも心の整理がつかないままの呆然になってしまいます。

でも彼の言葉どおり、急がず一歩一歩着実に進むしかないです。お互い慎重にいきましょうね。 (2008年08月19日 10時24分42秒)

Re:ウインパーのその後(08/19)   judge さん
この記事を読み、槙有恒の「山行」をチェックしてみました。彼はウインパーのツエルマット再訪の約10年後にアルプスに行ったのですが、ツエルマット博物館を訪れマッターホルン遭難の遺品を見た時の感想が書かれていました。
「山行」の中にイタリアの登山家ギドレイが老境に達したウインパーをマッターホルン山麓で見かけるシーンが紹介されています。このくだりは若い時から気に入っていて、私のホームページのイントロに使わせてもらっています。忘れていたら、ぜひ再度読み返してください。 (2008年08月19日 14時30分25秒)

良く、登山を人生にたとえますよね・・。   ranaらな さん
「勇気も力も慎重を欠いたら何にもならない~一歩一歩しっかり見極めたまえ。ことのはじめにあたって結果がどうなるかを常に考えよ」この言葉はまさにそれですね。なんだか良い言葉を教えて頂きました。
そして、私の好きなスイス、そしてマッターホルン・・スイスの山々の話を読めるのはとても嬉しいです。登山とはずれてしまいますが(^^ゞ
(2008年08月19日 18時37分23秒)

Re[1]:ウインパーのその後(08/19)   エンジェル フェイス さん
judgeさん
>「山行」の中にイタリアの登山家ギドレイが老境に達したウインパーをマッターホルン山麓で見かけるシーンが紹介されています。このくだりは若い時から気に入っていて、私のホームページのイントロに使わせてもらっています。忘れていたら、ぜひ再度読み返してください。

大変貴重なコメントありがとうございます。槇 有恒の「山行」そのものを読んでいません。是非読んで見たいです。

(2008年08月19日 20時53分23秒)

Re:良く、登山を人生にたとえますよね・・。(08/19)   エンジェル フェイス さん
ranaらなさん
>「勇気も力も慎重を欠いたら何にもならない~一歩一歩しっかり見極めたまえ。ことのはじめにあたって結果がどうなるかを常に考えよ」この言葉はまさにそれですね。なんだか良い言葉を教えて頂きました。

私も生来の向こう見ずとよく言えば情熱、実際はその場の感情で行動してしてしまうので、この言葉は自分を律する言葉として深く心に残りました。 (2008年08月19日 20時58分09秒)

Re:ウインパーのその後(08/19)   みのふ さん
「勇気も力も慎重を欠いたら何にもならない。ほんの一瞬でもこの注意を怠ると一生の幸福をも打ち砕くことになるかもしれないのだ。どんなことも急いではいけない。一歩一歩しっかり見極めたまえ。ことのはじめにあたって結果がどうなるかを常に考えよ」
スピードを優先して つい、疎かになっています。
この言葉のように仕事が出来たらと思います。
難しい…。 (2008年08月19日 21時08分52秒)

Re[1]:ウインパーのその後(08/19)   エンジェル フェイス さん
みのふさん

>スピードを優先して つい、疎かになっています。
>この言葉のように仕事が出来たらと思います。
>難しい…。

ウインパーの言葉、登山だけでなく人生のいろいろな場面で使えますね。車の運転もまさにその通りだと思いました。
(2008年08月19日 21時14分50秒)

Re:ウインパーのその後(08/19)   ougi さん
凄いですね!勉強家、努力家、のエンジェルフェイスさん感心しました、おまけに音楽、クラシックに生け花、私も学びたい!今日のブログの文面、構成、何かしら熱がこもってます: (2008年08月19日 22時56分36秒)

Re:ウインパーのその後(08/19)   ゆきさん1122 さん
おはよう。マッターホルンが綺麗ですね。実物はもっと!!かな?? (2008年08月20日 07時09分20秒)

Re[1]:ウインパーのその後(08/19)   エンジェル フェイス さん
ougiさん
>今日のブログの文面、構成、何かしら熱がこもってます:

ありがとうございます。
興味や関心や疑問があることにはすぐ調べたり、関わったり習ったりする性格です。
今の私の趣味は本当に好きなことだけを続けてきた結果と思います。
ougiさんのコメント、いつも私を勇気付けてくれます。感謝です。 (2008年08月20日 09時15分04秒)

Re[1]:ウインパーのその後(08/19)   エンジェル フェイス さん
ゆきさん1122さん
>おはよう。マッターホルンが綺麗ですね。実物はもっと!!かな??

おはようございます。今となればあのマッターホルンが目の前にあったなんて夢のようです。 (2008年08月20日 09時16分44秒)

Re[2]:ウインパーのその後(08/19)   judge さん
どんな版を読まれたは解りませんが、訳者は近藤等ではなく浦松佐美太郎ではなかったですか。 (2008年08月21日 20時12分33秒)

Re[3]:ウインパーのその後(08/19)   エンジェル フェイス さん
judgeさん
>どんな版を読まれたは解りませんが、訳者は近藤等ではなく浦松佐美太郎ではなかったですか。

全集の中に収められているものを読みました。もう返却してしまって正確に言えないのですが、たしか「世界ノンフィクション」全集だったように記憶しています。訳者は近藤 等さんでした。
ママリーの「アルプス・コーカサス登攀記」も収録されていました。
今、槇 有恒の「山行」を他の図書館から取り寄せてもらっているところです。 (2008年08月21日 20時27分00秒)

Re:ウインパーのその後(08/19)   かずたま58 さん
山では不思議なことに遭遇します。濃い霧の中、前方に現れる、光輪に包まれた像。昔、南ア縦走で遭遇しました。ブロッケン現象というらしいですが、怖いというか神々しいというか…。
数年前、荒天時に携帯電話のアンテナからフーッと光が飛びました。セントエルモの火と似た現象でしょう。

不思議に満ち満ちた大自然の中に身を置いて、喜びを感じることができるのは幸せです。
心臓と膝に「爆弾」を抱えるようになってからは、気に入った低山をカミさんとのんびり歩き、自然と「会話」するようになりました。それもまた楽しいです。 (2008年09月01日 11時23分25秒)


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