40代女性、右上6、Per、自発痛+
他院で抜歯してインプラントと言われてうちに来られたが、
根管治療は労多くして実入りが少ないので、歯医者の本音としてはやりたくない。
特に保険治療では世界平均の1/10の診療報酬しかない。
2回目の治療となると前医が何をやらかしたなど、開けてみるまで分からないし、上手く治療できるかという保証もない。
抜歯してインプラントが最も実入りが良いというのが業界のトレンドだ。それはそれでトラブルを抱えてしまうこともあるのだが、そんなことは知ったことではない。
ここでも「今だけ、金だけ、自分だけ」だ。
レントゲン写真を見ると、近心頬側根の根尖相当と思われる部位に大きな陰影が見える。
確かに通常の治療法で治療を始めても上手くいく保証はない。低い診療報酬で何度もなんども治療を繰り返してもラチは開かないかもしれないことが目に見えている。
歯医者から見ると身体を痛めてしまうだけで、絶望的だ。
そういう意味でも抜歯というのは分からない選択肢ではない。
CKを外して
内部のCRコアを部分的に残して根管口を明示する
問題の根管の充填材を除去すると内部は硫化鉄:FeSで真っ黒だ。これは硫酸塩還元細菌が侵入していたことを示している。理想とされる緊密な根管充填など夢物語に過ぎないことがわかるだろう。
根尖まで器具を届かせる必要はない。既存の根管充填材を外して、超音波スケーラーのエンドチップの届く範囲を洗浄するだけだ。
1回目の根管充填は3MIX+α-TCPセメントの精製水練りだ。
2回目は3MIX+α-TCPセメントの通常練りでカバーする。精製水練りは固まりにくいので、再治療が容易になるが、固まるまで時間がかかるので、その後の充填治療ができないからだ。
こんな簡単なことで通常治療法では治療困難な症例でも治る。再発しても再治療も容易となればやらない手はない。
つづく