中国へのいざない
私のウェブサイトやブログは、基本的に「自分の心に反するリップサービスは一切しない」という主義でやっています。世界中のどこに居ようと、素直に、自分の感じたこと、体験したこと、思考したことを、ありのままに綴っています。時には、読み物として面白くするために、多少誇張することはありますが、意図的にウソを書いたことは一度もありません。自分自身に常に正直でいることが、私のポリシーです。私の書いたエッセイには、もちろん、思い切り偏見と独断が含まれておりますし、加えて、誤った事実認識や、皮相な見方に基づいて書いちゃった、というケースも、多々あることでしょう。読者の皆様には、私という、不完全で未熟な人間の手による不出来なエッセイだということをまず認識していただいた上で、ご自身の知識見聞を広めるための一つの素材として、活用していただければ、作者として、これに勝る幸せはありません。思えば、2000年から2005年にかけて、オーストラリア・シドニーに住んだ4年9ヶ月の間は、「シドニー日記」というかたちで、その後、中国・大連への引越しが決まった半年間は、「大連日記」というかたちで、定期的にエッセイを発表してきました。面白いことに、「シドニー日記」を書いていた頃は、「オーストラリアに移住したい!」というメール相談が、引きもきらなかったわけですが(通算で、千件以上のメールに回答したと思う・・・その多くは移住相談)、大連日記を書いている時期は、「中国に移住したい!」というメールが一通も来ないばかりか、「中国には絶対に行かない」、「私にはちょっと住めないと思う・・・」みたいな反応が次々と返ってきて、書けば書くほど、「中国に対する好感度を低下させている」のではないかと感じ、中国の皆さんに対して申し訳なく思ったりもします。私としては、シドニーについて書いている時も、大連について書いている時も、どちらも正直に、ありのままに書いてきたわけで、決して、アンチ中国の宣伝をしているつもりはないのですが、それでも結果的にこうなっちゃうのは、なぜなのか?やっぱり「痰」のせい?・・・ま、深く考えないことにしましょう。ですが、中国で楽しくエキサイティングな暮らしを送っている者としては、一人でも多くの人が中国に興味を持ち、旅をして、あわよくば移住して私の仲間になって欲しい、という、淡い期待さえ持っています。中国暮らしの魅力とは何か?・・・それは、何といっても、「人」です。「人間の奥深い魅力」です。中国大陸の人々は、おそらくあなたにとって、決して、とっつきやすい相手ではないでしょう。日本人にとってはもちろん、中国で育った中国人にとってさえも、そうかもしれません。私にとって中国人とは、彼らと一緒の空間で暮らしているだけで、トラブルやケンカが絶えない、とても面倒くさくて、鬱陶しい存在・・・でも、それでいて憎めない。派手にケンカすればするほど、彼らの優しさや寛容さが垣間見えたりする・・・。いや、私が言いたいのは、そんな単純なキレイゴトではありません。中国の人々を見ていると、とにかく、人間って複雑怪奇な、ややこしい生き物だよなあ、ということを実感させられます。生身の人間の持つ、優しさと厳しさ、慈愛と残酷、聡明と愚鈍、自尊と卑屈、思いやりとわがまま、計算高さと無私さ・・・ありとあらゆる性格要素が、見た目は日本人とほとんど変わらない中国人の身体のなかに、見事に凝縮されています。これらの性格要素(人間臭さ)は、人間であれば、どの国の民であろうと、自然に持ち合わせているものです。では、何が違うのかというと、中国人の場合、それらが「見えやすい」、「表面化しやすい」んでしょうね。言い換えれば、中国人がそこにいるだけで、人間臭さが、抑制されずに、ナマのままで、ドバドバと分泌されてしまう。そんな個人が寄り集まって、いつも押し合いへし合いしながらワーワーやってる、それが中国の社会だと思うんですよね。だから、中国では、「ヒューマン・ウォッチング」が楽しい。それも、むちゃくちゃな程、圧倒的に楽しいのです。大連でいえば、星海公園とか、中山広場みたいな、朝から晩まで人が集まっているような場所に行って、一日中、ナマの人間を見ていても全然飽きない。ダンスや太極拳をやっている集団、海でコンブを取っている人々、寒さをこらえて泳いでいる人々、蹴鞠に夢中になってる人々、ボケーッとしている人々、饅頭やクレープを売っている人々、メシを食っている人々、クソしている人々、ところ構わずゴミを散乱させている人々、それを一生懸命拾って、金目のものがないか物色している人々・・・おおよそ、我々の考えうる限りのあらゆる人間模様が、日々、繰り広げられています。また、青泥窪橋、西安路のような、商業施設の林立する繁華街に繰り出しても楽しい。耳を澄ましていれば、「客が地元の人間ではないのをいいことに、ボッタクろうとしている店員」、「商品の返品をめぐって口論している店員と客」、「強烈なタバコを吸って痰を吐きまくっている、サングラス姿の怪しげな店主」、「新製品の携帯で遊んでいる若い女性客」など、生々しい人間模様が、いつもそこにあります。良くも悪くも、中国って、「人間の本場」だと思うんですよね。あの広大な大陸には、これ以上は望めないほど、人間臭をプンプンさせている人間たちが、13億人もうごめいている。その、地響きのするような圧倒的な存在感の前には、「アメリカなんて一ひねりだ!」と錯覚してしまうほどです。で、何が言いたいのかといえば・・・もし機会があったなら、一生に一度は、人間の本場・中国で暮らしてみませんか?無論、彼らを好きになれるかどうかは、あなた次第です。