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カテゴリ:憲法
憲法判例編 第12章 判例が文言解釈としての意義をもつ場合 ちょっと今日は趣向を変えて、判例が文言をどのように解釈したかを ご覧頂こうと思います。 文言解釈だけの場合は、あまり背景事情をお伝えする必要は無いので、 テンポが良くなるかもしれません。ちょっとお付き合いください。 まずよくわいせつ物頒布罪とかありますが、そもそも「わいせつ」とは何でしょう。 わいせつ文書を頒布するとわいせつ物頒布罪となりますが、何がわいせつ文書かはわかりません。 そこで、判例(最判昭和32年3月13年)は、わいせつ文書を、 「普通人の羞恥心を害することと性欲の興奮、刺激を来たす事と善良な性的道義観念に反する文書であること」 としました。 次にプライバシー侵害とは何でしょう。およそ個人の情報を公開するとプライバシー侵害となるような気もしますが、そうすると、表現の自由を害する場合もあるので一定限度まではプライバシー侵害とはいえません。プライバシー侵害となる境界線を判例(東京地判 昭和39年9月28日)は示しました。 「1、私生活上の事実または私生活上の事実らしく受け取られる恐れのある事柄 2、一般人の感受性を基準にして当該私人の立場にたった場合、公開を欲しないであろうと認められる事柄であること。換言すれば一般人の感覚を基準として公開されることによって心理的負担、不安を覚えるであろうと認められる事柄であること。 3、一般の人々にいまだ知られていない事柄であること」 次に、出版物を事前差止めできる場合とはどんな場合でしょう。 田中真紀子氏事件では問題になりましたよね。 事前差止めは表現の自由に対する重大な侵害なので限定しなければなりません。 そこで、判例(最判昭和61年6月11日)は以下の場合に限り事前差止めを認めています。 「1、表現内容が真実でなく 又はそれが(真実であっても)専ら公益を図る目的のものでないことが明らかであって 2、かつ被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被る恐れがあるとき」 最後に、「検閲」とは何でしょう。 検閲はよく耳にする言葉ですが、実体は明らかではありません。 検閲自体は禁止されていることが明らかですが、その意味が明らかにならないと 禁止した意味がありません。 そこで、判例(最判昭和50年12月12日)は検閲を以下のように定義しました。 「行政権が主体となって、思想内容などの表現物を対象とし、その全部または一部の発表禁止を目的として、対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査した上、不適当と認める物の発表を禁止すること」 従って、裁判所による差止め命令は検閲とはなりません。ご注意ください。 さて、いかがでしたか。判例はこのように文言解釈の指針として役立つこともあるのです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2005年04月02日 08時20分16秒
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