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カテゴリ:会社法
第3章 資金調達 1 募集株式の発行 会社は基本的には商売をして儲けて大きくなっていくものです。しかし,時にはまとまったお金が必要となるときがあります。そこで,まとまったお金を調達する手段が必要です。 まず,考えられるのは株式を発行して資金を調達する方法が考えられます。 銀行から借りると,儲けようと儲けまいと利息を支払う必要がありますが,株式の発行は儲けた時に剰余金配当として利益配当すればいいので,安上がりなのです。 株式の発行は,会社法では「募集株式の発行」といいます。耳慣れない言葉ですが,昔で言う新株発行です。会社法では新株発行のことを募集株式の発行と呼びます。 (募集事項の決定) 第百九十九条 株式会社は、その発行する株式又はその処分する自己株式を引き受ける者の募集をしようとするときは、その都度、募集株式(当該募集に応じてこれらの株式の引受けの申込みをした者に対して割り当てる株式をいう。以下この節において同じ。)について次に掲げる事項を定めなければならない。 (以下省略) 募集株式の発行は会社にとって有利な制度であって、誰も困らないように思えますが,一つ問題があります。 それは,もともとの株主の持分比率を下げると言う効果を伴う点です。 例えば,清水君200株・三島さん100株の会社では,清水君が67%(200/300)の持分比率を持っており,事実上,清水君は会社を自由に動かすことが出来ます。このときに,1700株の募集株式の発行をすると,清水君の持分比率は一気に10%(200/2000)になって,清水君の発言力は大幅に下落してしまいます。 そこで,株式は定款で定められた発行可能株式数までしか発行できないことにされています。 これを授権資本制度といいます。イメージ的には,授権株式制度と呼ぶべきかも知れません。 「授権」された限度までのみ「株式」を発行できる「制度」と言うわけです。 (発行可能株式総数の定め等) 第三十七条 発起人は、株式会社が発行することができる株式の総数(以下「発行可能株式総数」という。)を定款で定めていない場合には、株式会社の成立の時までに、その全員の同意によって、定款を変更して発行可能株式総数の定めを設けなければならない。 2 発起人は、発行可能株式総数を定款で定めている場合には、株式会社の成立の時までに、その全員の同意によって、発行可能株式総数についての定款の変更をすることができる。 3 設立時発行株式の総数は、発行可能株式総数の四分の一を下ることができない。ただし、設立しようとする株式会社が公開会社でない場合は、この限りでない。 これによって,いきなり多くの募集株式発行をされて,持分比率が大幅に下落する恐れがなくなると言うわけです。 また,例に挙げたとおり,募集株式の発行は既存の株主の持分比率を下げる効果を持ちます。だからと言って,特定の人の発言力を落とすことを主要な目的としてに募集株式の発行をすると,不公正発行として募集株式の発行が差し止められます。 第二百十条 次に掲げる場合において、株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株主は、株式会社に対し、第百九十九条第一項の募集に係る株式の発行又は自己株式の処分をやめることを請求することができる。 一 当該株式の発行又は自己株式の処分が法令又は定款に違反する場合 二 当該株式の発行又は自己株式の処分が著しく不公正な方法により行われる場合 募集株式の発行はあくまで資金調達のためにあるのです。 また,募集株式の発行において著しい瑕疵がある場合は,募集株式発行無効の訴えが出来る場合があります。 (会社の組織に関する行為の無効の訴え) 第八百二十八条 次の各号に掲げる行為の無効は、当該各号に定める期間に、訴えをもってのみ主張することができる。 (中略) 二 株式会社の成立後における株式の発行 株式の発行の効力が生じた日から六箇月以内(公開会社でない株式会社にあっては、株式の発行の効力が生じた日から一年以内) 応援していただける方は、下記のバナーをクリックしてください。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007年11月17日 12時23分20秒
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