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おぢさんの覚え書き

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2015.07.11
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カテゴリ:歴史/考古学/毛人
ここまで木簡、墨書土器、金石文などなるべく現存する資料から、日本列島における文字文化普及について考察してきた。それに基づいて文字文化の進展を表にまとめたのが以下である。

図1 六世紀以前(古墳時代まで)の文字文化普及
文字文化普及1.png

図2 七世紀以後(飛鳥時代)以降の文字文化普及
文字文化普及2.png
元データはこちら「文字資料の誕生」の「文字の普及(10年毎)」のシート参照。

三世紀中頃の魏との交渉、五世紀の倭の五王による遣使などが国書に基づく文書外交であったことは疑い得ない。外交の舞台で文字が使われたことは確実だが、それ以外の用途で文字が使われたことを示す七世紀よりも前の資料は極めて少ない。
三世紀中頃以来、時期による濃淡はあるとしても渡来系氏族などごく限られた者が文字文化を担うという状況が七世紀まで続き、七世紀に入り段階的に倭人たちの間に文字が広まり八世紀初頭には文字文化が定着したというのが私が思い描く構図である。

しかし、これは現在まで残る遺物、文献を基にしたかなり控えめな見通しである。つまりこの頃にはこの段階には達していたと確実に言えるというのが上図である。
可能性としてはもう少し文字の普及が早かったりすることは十分考えられる。

私たちが現在見ることができるのは古代人が残したもののごく一部であり。失われてしまった物、未発見の物はその何倍もあったと考えられる。遺物はどの程度の割合で現在まで残存するのか?以下の例が参考になる。

銭弘俶塔(せんこうしゅくとう)
中国十国時代の呉越国で十世紀半ばに八万四千基作られた銅製の仏舎利小塔。日本に五百基招来されたという記録が残っている。現在までに発見されているのは六基である。残存率 6/500(1.2%)。

百万塔(ひゃくまんとう)
陀羅尼を納めるための木製の小塔で奈良時代に称徳天皇(718-770)の発願により作られた。十の大きな寺に配られたが、現在残存するのは法隆寺にある約四万三千個以外は僅か。残存率 43,000/1,000,000(4.3%)。 

上の例は木簡などより現在まで伝わる割合はかなり高かったのではないだろうか? 銭弘俶塔は銅製で経塚など土中に埋められたものである。百万塔も大寺院で大切に保管されたものだ。木簡などは薪代わりに燃やされたり、朽ちてしまうことが殆どだったと予想すると残存するのは1%未満だろう。そう考えると一点見つかれば似たようなものが百点以上あったことは十分考えられる。

図1、2を見ると四世紀と六世紀には何も書かれていない。実際、日本の考古学的資料、中国側の文献に拠る限りこれらの時代は文字文化については空白の時代となってしまう。しかしこの空白の時代を埋める記述が朝鮮と倭の史書に記されている。

『日本書紀』と『三国史記』 (『倭国と日本国の関係史』 Isshun氏のHP)より

リンク先のページをスクロールして年表を見ていただきたい。図1、2で空白になってしまっている四世紀、六世紀も朝鮮半島とはずっと頻繁な交渉があったことが分かる。 朝鮮との交渉が中国と同じように文書を介したものであったかはこれから検証していきたい。

図1、2に朝鮮関係の記述をほとんど入れなかったのは朝鮮半島こそ日本の文字文化の直接の源流であると考えるものであり、独立して扱う必要があると考えたためである。またもう一つは倭の史書の信頼性を確かめる作業に信頼性が未検証の日本と朝鮮の史書の記述を使うことになってしまうためだ。

しかし日本の考古学的文字資料がない以上、史書の記述を使用するのはやむを得ないだろう。次回からは朝鮮半島に目を向けて日本への文字文化の流入について考えたい。






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Last updated  2015.07.12 06:27:53
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おぢさん@ Re[3]:無(03/15) なんだかねさんへ (続き)昔ある人がお…
おぢさん@ Re[3]:無(03/15) なんだかねさんへ お久しぶりです。永ら…
おぢさん@ Re[1]:土器-編年(02/14) 上毛野形名さんへ 長いこと返信もせず失…
なんだかね@ Re[2]:無(03/15) おぢさんさんへ 遅ればせながら「人新世の…
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