おぢさんの覚え書き

陽気がいいせいか、良く寝れる。今回はおぢさんの霊告ではなく白昼夢を紹介しよう。白昼夢ではトラシュマコスとグラウコンが法務省の方から歩いてきたのでおぢさんは彼らを呼び止めて話を聞いてみた。

おぢさん：どうして、テロ等準備罪を作るんだい？
トラシュマコス：テロ等準備罪があれば、テロリスト集団が実行に着手する前の段階で検挙・処罰が可能になるんだ。テロを未然に防止できるんだよ。

おぢさん：すばらしいね。じゃあ、今回の法律改正に相当する法律が施行されて、ＴＯＣ条約を締結しているアメリカやイギリスやフランスではテロは起きていないんだね。
トラシュマコス：いや、法律自体は間違いなく効果があったはずだけど、残念ながら発生しているようだね。法律が成立していなければもっとたくさん発生しているよ。

おぢさん：本当かな？そもそもテロ等準備罪法案って本当にテロ対策になるの？
トラシュマコス：基本的に共謀した段階で捜査しなければテロを防ぎようがないじゃないか。その意味で効果は大きいよ。

おぢさん：国松孝次・元警察庁長官はオウム事件や国松長官自身が狙撃された事件についてはお手上げだと言っているよ。
トラシュマコス：警視庁本富士署襲撃事件は共謀罪があれば逮捕できたとも言っているよ。

共謀罪ではオウム事件はお手上げ（国松長官）＋政治家、警察官の犯罪は除外
（日本がアブナイ！）

おぢさん：改正案でテロに対して有効に対処できるケースってすごく限られているんじゃないかな。最近イギリスで起きたテロ未遂事件を見ても、基本的に単独犯でイスラム過激派への共感はあるにしても団体との具体的なつながりはないから改正案が通ったとしても対処できるとは思えないね。

Man plotted attacks on Buckingham Palace and Elton John concert（The Guardian）
CCTV shows ‘teenager leave rucksack packed with explosives on busy Tube train’（METRO）

鍵は警察の情報収集だけど、イギリス警察のおとり捜査も無実の者を故意に罪に陥れるタイプの冤罪の危険性がすごくあるように思えるよ。
トラシュマコス：改正案で対処できないというのならもっともっと厳しくしないといけないってことだよ。警察は市民の見方だよ彼らを信じなきゃ。自白に頼らなくてもいいように令状なしで可能な捜査手段を増やすべきだね。今回の改正では捜査方法が変わるわけではないよ。

おぢさん：松本サリン事件では、オウム真理教団がテロ事件を起こしたけど、市民がその犯人扱いをされて報道被害を受けたよね。事件発生後に捜査しても冤罪被害者を出してしまうのに、発生前に捜査して大丈夫かな。
トラシュマコス：それは、法律が悪いわけではないよ。この事件に関して警察の捜査に問題があっただけだよ。

おぢさん：戦後に限っても冤罪事件はかなりあるよ。法律は常に悪用されてきたと思った方がいい。
トラシュマコス：じゃあ、君は法律なんかなくていい。法治国家はやめるとでも言うのかい。

おぢさん：そうは言っていないよ。でも計画段階から逮捕できるとなると一層警察にはプレッシャーがかかってGPS捜査みたいに強引な捜査をしないか心配だな。
トラシュマコス：GPS捜査は尾行と同じだから問題はないよ。警察には今だってプレッシャーはあるし、テロを未然に防ごうと捜査をしているから別に変わらないよ。

おぢさん：そうだよね、今でも実際にテロを目的とするような準備をすれば逮捕できるんだよね。銃も、サリンも、爆発物も所持しただけでアウトだよ。さらに計画まで対象にするなんて冤罪の温床になるだけだよ。
トラシュマコス：いや、計画こそ大事なんだ。だって考えて見たまえ、旅客機とか大型トラックとか通常の武器や危険物ではないものが計画によってはテロに利用されるんだ。フランスのニースで発生したトラックテロは銃もあったけど、主な被害はトラックの暴走だよ。

共謀罪はなぜ過去3回廃案になったのか（HUFFPOST）

おぢさん：トラックテロも警察が情報を得られていなかったから法律でどうにかなる問題でもないね。まだまだ、僕としては「組織的犯罪集団」って誰が決めるんだとか、団体が犯罪を行うことを目的としているかどうかなんてそんなこと分かるのかとか、この法律に関して言いたいことは山ほどあるんだ。
トラシュマコス：そんなうるさいこと言っていたらテロ対策も何もできやしないよ。被害が出てからでは遅いんだよ。人権侵害の前にテロで殺されたら終わりだってこと分からないのかい。ここで君が何と言おうと結果を出す自民党がいずれ採決するから、議論しても無駄だよ。じゃあ失敬する。

トラシュマコスは多少イラついた様子で立ち去ってしまった。僕たちの議論を黙って聞いていたグラウコンが微笑みながら言った。

グラウコン：トラシュマコスらしいね。彼の代わりなら僕が引き受けるよ。
おぢさん：いや、僕も長々と議論するつもりはないんだ。今回はもっと原理的な所が気になるんだ。

グラウコン：どういうことだい？
おぢさん：共謀って「罪」なのかい？

グラウコン：どうだろうね？辞書にもよるけど「法にそむいた行い」というのがあるから今回の改正案が通れば罪になるんだろうね。
おぢさん：まあ法律上はそうなんだろうね。でも何かに対して悪い行為をするからそれを罪とする法律を作るんだよね。辞書にもあるけど法律がなくても道徳上・宗教上もともと罪とされる行為はあるわけで法律はそれを明文化しただけだよね。

グラウコン：そう見えるね。
おぢさん：悪いこと、つまり何かに対して害をなす行為を計画して準備する段階で今回の法律は「組織的犯罪集団」やその構成員に対して拘束とか害をなす行為をしてしまうわけだよね。どっちに罪があるんだろうね。
それに犯罪って最後に思いとどまるってことがあるんじゃないかな？教会の鐘が聞こえてとか、太陽が眩しすぎてとか。

グラウコン：君の言いたいことは分かったよ。でも彼らは「組織的犯罪集団」なんだからやむを得ないじゃないかな。
おぢさん：少なくともキリストの神はそうは言わないよ。キリストの神は罪を犯してしまった者でさえ赦せと言うんだから、未だ罪を犯していない者を罰するとすれば、罰する側が神に裁かれることになるね。例えば「もし人の罪を赦すなら、あなた方の天の父もあなたがたを赦してくださいます」（マタイ6:14）、「イエスは、彼（共に磔にされた罪人）に言われた。「まことに、あなたに告げます。あなたはきょう、わたしとともにパラダイスにいます。」」（ルカ23:43）という具合にね。

グラウコン：そうかな。キリストの神は間違いなく心で思ったことは先んじて罰する主義だよ。「しかし、わたしはあなた方に言います。だれでも情欲をいだいて女を見る者は、すでに心の中で姦淫を犯したのです。もし、右の眼が、あなたをつまずかせるなら、えぐり出して捨ててしまいなさい。からだの一部を失っても、からだ全体がゲヘナに投げこまれるよりは、よいからです。」（マタイ5:28-29）
おぢさん：まったく君という人は同じ土俵で反論してくるから厄介な人だな。心の中で思ったことを罰するのは神に裁かれる前に自分の罪は自分でなんとかしなきゃいけないからだね。他人の心の中は罰しろとは言っていないよ。

グラウコン：政教分離は置くとしても、大体僕らは日本人なんだからさ、南蛮かぶれしてキリスト教の神の言うことを聞かなくてもいいでしょ。
おぢさん：出たな、国粋グラウコン。そういうことなら日本で伝統的な仏教でも念仏唱えれば極楽浄土に行ける宗派が多いんじゃないか。

グラウコン：いや逆だよ。心の中が重視されてるんだよ。
おぢさん：僕にはどうしても世界中の国家が心の中を裁くテロ国家に見えてくるよ。言い古されているけど僕にはやはり治安維持法に似て見えるね。

グラウコン：そういうデマはやめたほうがいいよ。
おぢさん：まあ、似ているかどうかはそれぞれみんなに見てもらって判断してもらうしかないな。気になるのはちょっとづつ改悪されるパターンも一緒だってことだな。いきなりだと飲ませられない話も少しづつだと飲ませられる。今それほど問題になっているように見えなくても気付いてみると大変なことになるのは気を付けた方がいいよ。

グラウコン：そうだね、大規模テロで多数の死傷者が出ないように、テロ被害者の人権が守られるためにも今回の改正案が通るといいね。
おぢさん：ともかく君達と話ができて良かった。

組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案新旧対照条文（法務省）
テロ等準備罪処罰法案について（法務省）

治安警察法が制定される（国立公文書館）
治安維持法（沖縄戦の記憶・分館）

テロ等準備罪を分かりやすく解説（丸山穂高（衆議院議員／大阪19区）BLOGOS）



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