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テーマ:政治について(19783)
カテゴリ:政治関連
<何を資産として考えるのか?>
前回記事の参考リンク先資料をご覧頂くと、時価評価とかストックの積み上げとか発生主義とか普段目にしない言葉が飛び交ってて思わず画面右上の×ボタンを押されてしまうかも知れませんが、ここで考えるのは、国家財政がどんな状態にあるのか、というテーマです。 ざっといくつかを見て頂くだけでも数百兆以上の単位で数字が違ってて、『なんでこんなに違うの?』と困惑されるかも知れません。私もしました。笑 そのテーマに沿って、財政(赤字)の状態がどうなっているのか、を考えるのが目的ですので、負債の反対側にある資産が、債務の返済に充てる事が可能な存在かどうか、つまり市場(民間)への売却が可能かどうか、というのが一つの大きな着目点になります。 実際に有形固定資産として勘定される社会資本ストックの金額を見ると巨額です。国で100兆とか地方で450兆とか、つまり道路、空港、下水道・廃棄物処理施設、教育施設、土地などをどう捉えるかで全然お話が違ってきてしまうのです。 例えば公的機関が持っている土地(空き地)を時価で売却する、というのなら分かり易いのですが、そう単純にはいかないケースがどうも多そうなのです。 以下『公的部門の資産・負債のストック・データ(試算)』より引用。(下線・強調は私が追加) その前にまず、資産総額から負債総額を差し引いた額である「正味資産」の解釈について、議論しておかねばならない。民間企業の場合この正味資産に相当するのは「資本」であり、財務状態の健全性を示す一つの指標となる。ある企業の資本がマイナスの値となった場合、その企業は、清算して資産をすべて売却しても負債を全額返済できないという債務超過状態にあり、経営が行き詰まっていることを意味する。 これに対し、公的部門の正味資産額を評価する場合、民間企業の資本と同じ考え方をそのまま採ることは不適当である。なぜなら、第1に、公的部門特に一般政府部門(中央、地方、社会保障基金)は存続することを前提とし、企業とは異なり清算の可能性を前提としていない。このため、公的部門を清算して債務返済可能かという議論はなじまない。第2に、政府の場合、その信用が究極的には徴税権等により担保されている。第3に、そもそも公的部門は民間では供給が困難な公共財を提供することをその役割としており、市場性に乏しく売却困難な資産や売却になじまない資産が多く、公的部門の保有する資産を企業の資産と同様に売却可能なものとして評価することには無理がある25。(p.7-8) 上部引用には、『売却になじまない公的部門の資産を時価(再調達価格)で評価することには、公的部門の活動の結果として、負債残高に見合ってどれだけの資産が形成されたかを示す一つの指標を提供する意味がある。』という続きがありますが、負債(投資)によって形成された資産を示す指標としては意味があるとしても、それが公的サービスを提供する為の公共財(社会資本ストック)である限り、債務整理に利用できる資産として考えるには適当ではないと思われます。 一番典型的な例を挙げるなら、道路の存在があります。 道路は土地かも知れませんが、単純な土地ではありません。 (公共の)道路が誰かに売れるような存在かどうかに考えてみた場合、売れないと考えるべきでしょう。 高速道路や有料道路など料金を徴収して事業価値が発生している道路もあるでしょうが、道路公団のような存在を民営化するというならともかく、道路そのものを売って(民間企業に払い下げて)負債の整理資金に充当するというのは現実的な考えではないでしょう。 公的な(有形固定)資産の価値が全てそうやって測られるべきものかどうかは意見が分かれるでしょう。 ただ今回の私の目的は財政赤字について負債の対となる資産の内訳/状態などを調べる事にありますので、『発生主義バランスシートから捉えた日本政府の財政状況』で扱われているように、 資産-負債=正味資産 として考えるのではなく、「売却不可能資産」を資産額から除いたものが、売却可能資産、すなわち負債の償却に充当できる資産として考えます。 政府所有正味財産 = 売却可能資産 - 負債 ただし、売却可能資産 = 資産 - 売却不可能資産 この有形固定資産をどう考えるかだけで、財政状況を語る視点が全く異なってくることは確かです。ただし、特に450兆程度と計算される事の多い地方政府の有形固定資産の大半が売却可能資産算であると考えられない場合、『負債と資産のバランス』は大幅に崩れていると言わざるを得ない状況にあります。 上記引用部分で触れられているように、公共サービスの継続提供が大前提にあるので、その施設/土地の売却は基本的に不可能です。さらに採算性を度外視しないと継続提供が難しいのが公共財ですので、民間への売却がもし可能であったとしても、引き受けた民間側は大幅な値上げなどをしない限りサービスの継続提供が難しくなり、値上げがサービスを提供される側から拒否された場合その民間業者は事業から撤退し、結局は人々が公的なサービスとして買い戻すという事態にすらなりかねません。 (好(実)例が水道事業。世界各地で公から民へと切り替わったのですがうまくいかずに、結局人々が公的なサービスとして買い戻したりして負担増を招いたりしています。英ではNPOによる管理に移行している所もある模様。株主への利益還元が無い分、通常の民間企業よりも利用料金を抑えられるそうで、民が経営する事で官よりも効率的に経営できているそうです) 人口減少社会の余波で、この部分で資産として計上されてる金額は今後減少していくと思われます。(特に地方の)地価は下落していきますし、サービスを提供する人そのものが減っていくので老朽化していく公共財の更新・維持に必要な財源を確保できない/または更新しない事を選択されていく場合が全国各地で多発するでしょうから、負債は累積していくのに見合いの資産(評価額)は減少していくことになります。 (続き:日本という国の資本と負債について(3)へ) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005.08.23 17:34:22
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