仕事で東京へ出張することが、時々ある。そんな時、夜は必ず、新しいBARのドアを開けるように努力している。20数年前から、上京の際のそんな酒場探訪を楽しみにしてきた。オーセンテイックなカウンターBARが好きだから、訪ねるのはもっぱら、そんな雰囲気の店を探す。
今はいろいろとガイドブックが出ているが、昔は東京のBARを紹介してくれる本は数えるほどしかなかった。詳しい知人から教えてもらったりして、1軒1軒店を増やしていった。
そのBARを好きになるかは、8割くらいはバーテンダーの印象であり、自分との相性だと思っている。関西から訪ねてきた初めての客にどう接してくれるかは、バーテンダーによって微妙に違う。
だが、私が「相性が合わない」と思っても、その店と「(相性が)合う」人だって、当然いる。私自身が好きになれなかったBARを否定するつもりはないし、否定すべきではない。
東京でもたくさんのバーテンダーと知り合い、親切にしてもらった。20年近く通うまでの、長い付き合いになったBARもある。なかでも、最初のときから変わらず温かく接してくれたのが、87歳まで「現役」を貫いた、あの有名な「クール」の古川緑郎さん(写真右)だった。
クールは東京の酒場通の人ならとっくに承知だが、惜しまれながら昨年(2003年)の11月、55年の歴史を閉じた。銀座のBARの歴史そのものとも言われた店だった。
僕は、本当に運良く出張があって、閉店2日前のクールに立ち寄ることができた。閉店を惜しむ客が、店の表まであふれる状態だったが、元気そうな、笑顔を絶やさない古川さんや奥さんとも写真を撮ることもでき、至福の時間を過ごした。
「いってらっしゃいまし」。僕が店を去るとき、奥さんはいつもと同じように送り出してくれた。カウンターの古川さんともう会えないのは、本当にさびしい。
古川さんほど「絵になる」バーテンダーは、かつて神戸にあった「ルル」の長原さんくらいしか思いつかない。そう言えば、関西にも「絵になる」バーテンダーが本当に少なくなった。 |
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うらんかんろ
大阪・北新地のオーセンティック・バー「Bar UK」の公式HPです。お酒&カクテル、Bar、そして洋楽(JazzやRock)とピアノ演奏が大好きなマスターのBlogも兼ねて、様々な情報を発信しています。
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▼Bar UKでも愛用のBIRDYのグラスタオル。二度拭き不要でピカピカになる優れものです。値段は少々高めですが、値段に見合う価値有りです(Lサイズもありますが、ご家庭ではこのMサイズが使いやすいでしょう)。▼切り絵作家・成田一徹氏にとって「バー空間」と並び終生のテーマだったのは「故郷・神戸」。これはその集大成と言える本です(続編「新・神戸の残り香」もぜひ!)。▼コロナ禍の家飲みには、Bar UKのハウス・ウイスキーでもあるDewar's White Labelはいかが?ハイボールに最も相性が良いウイスキーですよ。▼ワンランク上の家飲みはいかが? Bar UKのおすすめは、”アイラの女王”ボウモア(Bowmore)です。バランスの良さに定評がある、スモーキーなモルト。ぜひストレートかロックでゆっくりと味わってみてください。クールダウンのチェイサー(水)もお忘れなく…。
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