エコノミック・ヒットマン
私:原書の題名は「あるエコノミック・ヒットマンの告白」で、2004年の刊行だね。
まだ、アメリカ経済がサブプライムローン問題で火がついていないときだね。
A氏:エコノミック・ヒットマン(EHM)とはどういう意味だね。
ヒットマンは「殺し屋」という意味だろう?
「経済の殺し屋(EHM)」?
私:途上国を近代化するために、土木・建設工事の重要性をその国の政府に説得し、そのために巨額の融資をする。
それらの工事は、アメリカの多国籍企業が行うので、融資の資金はアメリカ大企業に還流する。
そして、融資先の国の経済を破綻させ、永遠に債務者であるアメリカの多国籍企業の言いなりにならざるを得ないような状況に追い込む。
その国の経済を殺してしまう。
だから、この活動を行うアメリカのビジネスマンを「経済の殺し屋」だというわけだ。
そして、多国籍企業の言うことを聞かないと、本当の「殺し屋」がくる。
それでもだめだと「アメリカ軍」がイラクのように先制攻撃で来るというわけだ。
著者は、その「経済の殺し屋」の一人であったというわけだ。
A氏:そう言えば、内橋克人著「悪夢のサイクル」によると、開発途上国における多国籍企業による支配指数というのがある。
2002年の国連貿易開発会議のデータによるとトリニダード・ドバコ44.1パーセント、チリー28.4パーセント、パナマ28.2パーセント、ホンジュラス27.5パーセントなど、中南米のラテンアメリカの諸国が突出しているという。
私:市場原理主義の拡大とダブル部分があるね。
著者は、この「経済の殺し屋」だったというが、具体的な「殺し」までの話は少ないね。
この本の前半は一般論と「経済の殺し屋」になった経緯で占められている。
著者は、この多国籍大企業、アメリカ政府、世界銀行・IMFなどの大銀行の3本柱の結束を「コーポレートクラシー」と言っているね。
餌に食いついた途上国の搾取による飽くなき利益追求だね。
A氏:日本の政官財の癒着なんて、屁みたいなものだね。
私:この本は、随筆的に書かれているので、あちこちに話がとんで、まとめようとすると大変だ。
そこで、俺は一応、時系列的にまとめてみた。
まず、サウジアラビアだが、これはこの本の主題と違うね。
まだ、「コーポレートクラシー」が確立する前の話だね。
例の第一次オイルショックから始まる。
A氏:1973年の第4次中東戦争が起きる。
ニクソン大統領は、すぐにイスラエルに対して、22億ドルの援助を決定するね。
これに対応して、中東の産油国が輸出禁止を行い、石油が一挙に値上がりする。
今の値上がりと原因が明らかに違うね。
私:これでアメリカ政府、多国籍企業、大銀行がトラウマとなり、3本柱の結束が強化される結果となる。
アメリカは、サウジの石油ドルの還流を狙い、サウジの近代化のための工事を売り込む。
これには「経済のヒットマン」はないが、ドルの還流というモデルができる。
これは、サウジの経済を混乱させるという「経済の殺し屋」の話ではないが、アメリカ政府、多国籍企業、大銀行が結束して「コーポレートクラシー」が確立したという例としてあげているんだろうね。
明日は、グァテマラの話から始めよう。