深海魚の見果てぬ夢?
数年ぶりに、うな丼を食べた。 「土用の丑」の繁盛期を除いたって スーパーさんでも1g1円くらいが相場のような。 だから ちっちゃな個体の、さらにハーフ・サイズでも700円を超える。 そんな贅沢が あたしに許されるハズがなく。 価格が高騰した最初のころは、泣く泣く 最近は、意地になって、ウナギを食べないでいた。 ただ、ね。 優待券があるんだよ。 300円券×10枚のヤツが。 ひょっとして これ、牛丼だけでなく、うな重にも使えるんじゃない?って 賢明なあたしは、今朝になって、初めて気が付いた。 さっそく 吉野家さんに優待券を2枚出して、あと、150円支払って 見事、鰻重をゲットしました。 サッカリンでも入っているの? みたいな感じの不自然な甘みが、すこおし鼻腔(びこう)を突いて。 でも ちゃあんとウナギの味がする。 いやいや 何年も食べとらんから、あんま自信はないのだけれど たぶん、こういう味だったんじゃないかな?くらいに美味しかった。 どうだい 羨ましいでしょう? 羨ましい?ってのは。 吉野家さんのウナギを食べられて、最高に幸せ!って、あたしの「境遇」を意味するのか 100株125,000円で買った、あたしの「株主さま」っぷりを意味するのか。 まあ どっちだっていいですけど。 株主優待券は、ときに、どビンボ生活を救ってくれたりする。 いまは、いくらか?知らんけど 吉野家さんに125,000円支払って、3000円分の金券を送ってくれる。 つまりは 牛丼だけ食べていれば、10日は生き延びられる、わけ。 大塚さんは、ちょっと高いけど 年に一遍、カロリーメイトやソイジョイの詰め合わせを送ってくれる。 何も食べるものが無くなったとき カロリーメイトって貴重だよ。 ほんと、涙が出てきちゃいそうになる。 どうしてこんなに、どビンボ…失礼、カロリーメイトは美味しいね、って。 当然 お金に余裕があるワケじゃないから。 首を吊りそうなら、株券を売って 10万円くらい何とかなりそうなら、ごにょごにょと買って。 なんだかんだで いま持っているのは、吉野家さんくらい? ちょっと前 東芝さんの不正経理発覚のとき 大急ぎに有り金を集めて、死んじゃってた株式口座に突っ込んだ。 で 大損、いや、それなりの結果だったワケですが…。 そんなの ちっとも、悔しくなんかないもの。 あのとき、勝っていれば 吉野家さんでなく、店屋物屋(てんやもの・や)さんで ウナギの二枚重ね「特上」を、10杯くらい食べられた? そもそも こんなに、ひもじい生活を強いられることもない? なんて どうだっていいこと。 あたし、お腹が弱いので そんなの食べたら、速攻で、お手洗いに直行です。 だから 東芝なんて、東芝なんて、ほんと、東芝なんて…やっぱ、あたしは、吉野家さんが好き。 人生って むっちゃイヤなことがあれば、どこか救われることもある。 大概は。 もう、どうしようもなく底辺だ!って、喚(わめ)いていたら すこんと落ちて、呻(うめ)き声すら上げられない、二番底、三番底が待っている? だから どうして私は、こんなに不幸のドン底なの!って嘆いてみても仕方ない。 喚けるだけ、嘆(なげ)けるだけ、まだ、ましなんだよ。 ドン底ってヤツは 言葉すら見失って、ただただ掌(てのひら)を見詰める他ない? 思考も停止しちゃって さらに落ちようと、どうだろうと もう、どうだってよくなって、それ以上、落ちようがない。 というか たとえ、それ以上に落ちたところで、もう、何も感じやしない。 つまりは、それがドン底ってこと。 なので。 ほんの、ちっぽけな幸せでも、喜べるだけ喜べばいいと思うのです。 何か、やろうとすれば 大抵、どうしようもなくなって。 ほとんど、深海魚さながら海底に沈んで、息を殺して生きている。 そんなとき 何かの拍子(ひょうし)に、ふっと海面に浮かび上がるのが、ちっぽけな幸せ、とすれば。 それを、大はしゃぎしないで 何を、喜べばいい? そもそも 深海魚さんは、海面まで浮かんじゃうと浮袋がパンパンに膨れ上がって 死んじゃうしか…失礼、何があっても、二度と海底・ドン底に沈むことはない。 なら もう、喜ばなきゃ仕方ないでしょう? あたしたちは 鳥さんじゃないんだよ。 どんなに舞い上がったところで、お空を飛べるハズがない。 トビウオさんだって 海面を滑走するのが、精一杯じゃない? それこそ あたしやあなたの分際(ぶんざい)に違いなく。 つまりは ウナギの二枚重ね「特上」でなく、吉野家さんで、喜んどきなさいな、と。 夢を見るのは、大切なこと。 ただ 現実に蝕(むしば)まれ すぐ、ボロボロになっちゃうような、儚(はかな)い夢に。 いつまでも 淡い恋心を託していたって、どうしようもない。 それは。 現実を見失って 東芝さんに、有り金を全部、ぶっ込んじゃうようなもの。 それで、どうしようもなくなって 優待券を握りしめつつ、食べる吉野家さんの、うな重の旨さ。 あたしたちの幸せってヤツは 遠く儚いウナギの二枚重ね「特上」でなく、ご近所の吉野家さんにある。 ちょっと涙の塩味がする 牛丼チェーンさんのうな丼にこそ、あたしたちの幸せがある。 それに気が付いたとき あたしたちは もっと、もっと、もっと、幸せになれるのかも知れません。 思考を放棄して、倹約ばかりに励むのもいい。 どビンボは、どビンボなりの分際を持って、株式投資をするのもいい。 それで 大損、いや、それなりの結果としても 廻り回って、優待券にウナギが付いてくることもある。 たとえ、深海魚だとして。 それでも あたしたちなりの分際の、その思惑の先に、ちっぽけな幸せがあるのなら それは、それで、とっても素敵なこと。 それを 無邪気に喜べる感性こそ、幸せの源泉だったりする。 まあ。 どうだっていいですけど。 なんだかんだで 数年ぶりにウナギが食べられたのだから あたしは、とっても満足です。 ただ、ね。 東芝さんが…東芝さんが…東芝さんが…。