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人生において大事なことは、みんな無償のこと。
『モモと時間泥棒』のミヒャエル・エンデの言葉です。エンデの人生は、物語を求めてのクエスト(探求、探索)の連続でした。書くということは冒険であり、どの本を書いた後も自分は違う人間になるとも言っています。
「わからない」ことが大事なのであり、エンデは書きながら答を与えられるのです。『モモ』の場合、ストーリーも登場人物も輪郭は出来ていて、「時間泥棒がなぜモモからだけは時間を盗めないのか」の答が見つかっていませんでした。答がひらめいたのは5年経ってからだったそうです。そこから物語が書き上げられたのです。
モモは初め、静にいるだけの不思議な少女でした。それが、後半時間泥棒から時間を取り戻すため、決然として立ち上がります。モモの友だちが時間を奪われ次々に去って行ったためです。
時間泥棒はモモを懐柔するため、完全無欠のおしゃべりする人形を与えます。それはきれいで「物」としては優秀ですが、友だちにはなり得ませんでした。
近代から現代にかけて私たちは物質的にぐんと豊かになりました。しかし、その裏で精神的な大切な物を失ってきました。エンデは、「モモ」を通して物質に依存する社会に警鐘を鳴らします。
余白とされるものが実は最も重要なのです。
引用および参照元:ミヒャエル・エンデ 田村都志夫・聞き手、編訳
『ものがたりの余白―エンデが最後に話したこと』岩波現代文庫