44歳で複写機メーカー、富士ゼロックスの社長に就任して以来、平成21年3月末に相談役最高顧問を退任するまで、31年間にわたって同社を率いてきた小林陽太郎氏。経済同友会の代表幹事や日米財界人会議の議長を務めるなど、財界のスーパースターでもあった。
その間,富士ゼロックスの売上は1000億円から1兆円、社員数は7000名から4万名と成長を遂げた。
小林氏が評価されるのは、その経営理念であり、時代の変化を先取りする感性にあった。それは信頼を基本とし,性善説による経営を貫いたことである。そして高度経済成長時代のモーレツからビューティフルへの転換というタイミングを捉えたことに表われている。
小林氏へのインタビューや関係者への取材を踏まえた本書は、TQC(全社的品質管理)導入の苦労や他社を圧倒する「ダントツ商品」へのこだわり、成長へ向けた絶え間ない変革などについて、苦悩や葛藤(かっとう)などの言葉とともに生々しく描かれている。