ヤフーニュースと本屋大賞が連携して選ぶ「2019年ノンフィクション本大賞」に,英国在住のライター、ブレイディみかこさんの『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮社)が選ばれた。
大人の凝り固まった常識を、子どもたちは軽々と飛び越えていく。優等生の「ぼく」が通う元・底辺中学は、毎日が事件の連続。人種差別丸出しの美少年、ジェンダーに悩むサッカー小僧。時には貧富の差でギスギスしたり、アイデンティティに悩んだり。世界の縮図のような日常を、思春期真っ只中の息子とパンクな母ちゃんの著者は、ともに考え悩み乗り越えていく。落涙必至の等身大ノンフィクション。
▼
ブレイディさんは福岡県出身で、アイルランド人の男性と結婚。英国で保育士として働き、同国で起きている社会の分断を浮き彫りにしたノンフィクション『子どもたちの階級闘争 ブロークン・ブリテンの無料託児所から』で新潮ドキュメント賞を受賞している。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』 ブレイディみかこ著 p25~26
これがその宿題だったのか、と思いながら見ていると、ふと、右上の隅に、息子が落書きしているのが目に入った。青い色のペンで、ノートの端に小さく体をすぼめて息を潜めているような筆跡だった。
ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー。
胸の奥で何かがことりと音をたてて倒れたような気がした。
何かこんなことを書きたくなるような経験をしたのだろうか。
わたしはノートを閉じ、散らばっていた鉛筆や消しゴムをペンケースの中にいれてその上に置いた。
ふと、この落書きを書いたとき、彼はブルーの正しい意味を知っていたのだろうか、それとも知る前だったのだろうか、と思った。そう思うとそれが無性に気になった。
だけどそのことをわたしはまだ息子に聞き出せずにいる。