渓流釣りの話~その2~
初めて渓流釣りに行ったのは、掛川に居たときのことです。私の記憶では一番初めに行った渓流は、親友Mに連れて行って貰った太田川水系の原野谷川の源流でした。親友Mが後になって教えてくれたことですが、まず、初心者用の険しくない渓流で私の適正をみるためにそこに連れて行ったと言うことでした。早朝5時に掛川を出て、6時過ぎには源流にかかる橋の横に着きました。道具はすべて友人Mに用意して貰い、仕掛けまでも親友M愛用のものを分けて貰い使用しました。鮎たびに防水加工した雨具ズボンを履き、雨具の上から膝下用のネオプレーン製渓流スパッツを付けて沢歩きに出かけました。ネオプレーン製渓流スパッツは、優れもので、すね部分の保護をする役割と、その下に履いている防水加工した雨具ズボンとの組み合わせで渓流の冷水が皮膚に直接触れないようにして体温の低下を防ぐ役目の二つをしていました。源流は広葉樹が生い茂り、川に覆い被さっていました。従って、仕掛けは竿の長さの半分以下で「提灯釣り」と呼ばれる釣り方をしました。提灯のように1.5-2mの仕掛けを垂らしてから短くした8-10本継ぎ竿(全長5.4m)を伸ばすことにより、覆い被さっている樹木に仕掛けが引っかかることを防いで釣りをしました。それだけ短い仕掛けにも関わらす、初心者の私には釣っている時間より仕掛けを樹木から取り除き仕掛けを付け直す時間の方が多い程でした。それでも、私にとっては渓流の景色(渓相)は素晴らしく、沢歩きも慣れてくると楽しいものでした。一つ間違えば、大けがをするかも知れないという危険と裏腹に、探検心を持つ私にはたまらない楽しい行程でした。源流は滝つぼが段々に連なっており、初心者である私にも身を隠し易いため釣りやすく20cm前後の美しいパールマークのアマゴが数匹釣れました。渓相の美しさもさることながら、魚の美しさに魅せられました。親友Mが夢中になって釣りをする私に昼休みの合図を送ってくれたのは、昼が過ぎて日がやや傾きかけた頃でした。広葉樹に囲まれた河原の大きな岩に座って食べた昼食は、コンビニで買ったおにぎりとパンであったにも関わらず、とても美味しかったことを覚えています。この時点で、私はもう渓流釣りの虜になっていました。そんな中、親友Mから素晴らしい本を紹介してもらいました。その本というのは、北海道の日高で渓流釣りを生業としていたマタギの家族の生活を描いた「秘境釣行記 (今野 保著)」という本でした。著者は、父がマタギをしていたため、夏の間、数ヶ月間山小屋で狩猟や渓流釣りをして生活をしていました。その中で出てくる渓流釣りの場面は、渓流釣りに魅せられていた私にはたまらない内容でした。表現力豊かな描写は、まるで自分がその場で渓流釣りをしているような錯覚に陥るほどでした。もし、時間があったら一度お読み下さい。