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analog純文

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2011.08.03
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  『アメリカン・スクール』小島信夫(新潮文庫)

 以前本ブログで少し触れたような記憶があるんですが、若かりし頃私は、多分高校時代だったと思うんですが、芥川賞受賞小説をざっと追いかけたことがありました。(こんなことって、なんか、みんなしそうですよね。)

 今なら『芥川賞全集』(確かこんな名前の全集だったと思うんですが)という本があるということを知っているので、もっと簡単にかつ網羅的に読むことができるでしょうが、その頃の私はそんな全集があるなんてちっとも知らなかったもので(あるいは、ひょっとしたらあの頃はそんな全集はなかったんでしょうか)、高校の文学史の本なんかを見ながら、一作一作ぽつぽつと文庫本を買ったり図書館で借りたりしました。

 昭和二十年代の後半から昭和三十年代の前半、いわゆる「第三の新人」と呼ばれる作家を読んだのは、私にとってそれが最初でした。
 今私の手元にある冒頭の新潮文庫も、そんな一環で買った文庫本です。

 ところが、先日、例の大型古書販売チェーン店に行くと、同じ本が新しく改装されて(解説者が一人増えて二人になって)新たに販売されていると言うことを知り、加えてその文庫本が105円だったこともあって(本当はもう一つ加えますに、活字のポイントが大きくなって、読みやすくなっていました)、つい買ってしまいました。

 だから、我が家には今、版の異なる2冊の『アメリカン・スクール』文庫本があります。
 わたくし、高校時代に買った版は、収録されている総ての小説を読んでいなかったんですね。(だけど、だからこそ今日までこの文庫本は我が家にあったともいえます。その頃に読んだ吉行淳之介の芥川賞受賞作『驟雨』を含んだ文庫本や、安岡章太郎の『悪い仲間』を収録した文庫本は、収録作品をみんな読んで、既に我が家にありませんもの。)

 この度、冒頭の文庫本の収録作品を総て読み、実はかなり感心しました。
 そもそも小島信夫の小説を今までほとんど読んだことがないのが、今考えれば、致命的ではありませんか。

 かつて『抱擁家族』だけは読みました。本ブログでも報告しています。しかし、その記事を読み直してみたんですが(書いてある内容に少し驚いたんですが、高校時代の私が『芥川賞全集』を読んだと書いてあります。エエ加減なこと書いてますねー。えー、すみません)、小島信夫のすごさが十分読みとれていないのが残念というか、不思議というか、愚か者ですね、私って。

 いえ、今回の読書についても、始めの方の作品『燕京大学舞台』『小銃』『星』など、軍隊経験が描かれている短編小説を読んでいる時は、作品内に溢れている「不機嫌感覚」「ふてぶてしさ」に(これらの感覚は、プロットにも文体からも感じるものでした)、新しい価値観のもとの一種の「バイタリティ」といったものを感じはしました。

 でもその理解について、私は、描かれている対象が「軍隊」「国家」といったものである故に、この「嫌がらせ」のような内容・文体は大いに効果を表していると読んでいたんですね。

 軍隊(日本軍)が持っていた様々の非近代性が(特にそれは中国戦線でとても特徴的だったようですが)、結果として人間の品性を下劣にし、精神活動を崩壊させるような腐敗をもたらす状況を前提としての描写である、と。
 そしてそんな書きぶりに、私は今となってはなぜか少々違和感を感じつつも、大いに評価して読んでいました。

 ところが、次の『微笑』『アメリカン・スクール』と読み進めた時、私の理解が違っていることに気が付いたんですね。
 前回『アメリカン・スクール』だけを取り出して読んでいた時には気づき損ねたものに(たぶん、一作だけしか読んでいなかったからですよね、きっと。違うかな。)、私は今回、読書時にずっとつきまとうように感じられていた薄気味悪い感覚と共に、気づきました。

 特に『微笑』ですが、この小説は実に薄気味の悪い小説でありました。
 私は夜中に部屋で一人でこの小説を読んでいたのですが、振り返ると、ぼうっと大きな黒い塊のような何かが、背中のそばまで迫って来るような、何とも気味の悪い感覚を覚えました。

 この気味の悪さは何なのでしょうか。
 そもそもストーリーが、そんな「禁断」の話です。
 それは、「僕」という一人称の父親が、あたかも上記に書きました「軍隊」や「国家」に対する時の「不機嫌さ」「ふてぶてしさ」でもって、障害を持つ幼い我が子に関わるという、とんでもないものであります。

 しかし、ここに描かれるのはたぶん「幼児虐待」などではありません。
 それは、もっと根元的な、存在論的な、世界の不条理な佇まいに対する恐怖感覚であります。
 そう、それはあたかも、カフカの小説から我々が感じるような。

 ……しかし、まだまだ日本文学史の中には、このように凄い作家や作品が、いっぱいあるんでしょうね。
 それを考えるとわくわくしますが、ともあれ、もう少し小島信夫の作品を追いかけてみることですかね。


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Last updated  2011.08.03 07:04:23
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