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analog純文

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2011.09.03
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  『松蘿玉液』正岡子規(岩波文庫)

 例えば本書の中のこんな文章を読んでみます。

 春雨は昨日もふりぬ。また今日もふりぬ。枕辺の俳書小説画帖など彼を見、此をひろげなどするに果ては何にも飽きてそれもいや、これもいやなり。筆取りては筆をおき墨すりては墨を投げただ惘然として天井をながむることもうら淋しく春雨の句ども思ひつづけける。
   春の雨松三寸の小苗かな
   春雨になるや広野の南風


 えー、実は私、世間様に述べるも恥ずかしい、といいつつ毎回の拙ブログの最後に「お暇ならこちらも見に来てください」というリンクを貼っておりますが、「腰折れ」を作るのを趣味の一つと致しております。
 腰折れ、俳句ですね。
 そんなことを趣味としていますと、上記の引用文など、誠に雰囲気の良い文章と、少々うっとりしながら読んでしまいます。

 またこれも今は昔、たぶん私が大学生だった頃と覚えているんですが、作家の大江健三郎の講演会に行ったことがありました。そこで大江氏はもちろんいろんな話をなさったのですが、その話の一つとして、正岡子規のことを、今思い出せばかなり熱く語っていらっしゃいました。
 もちろん、正岡子規は大江健三郎の同郷人・先輩であるということが、その熱弁の原因の一つであったろうとは思うのですが。

 日本文学史関係の本をいろいろ読んでいると、時たま、ある文学者の業績に対する評価の高低について、筆者のものとズレていることに気が付くことがあります。
 「あれっ、この文学者の評価って、そんなに高いんだ。」
と、ちょっと吃驚することがあるのですが、そういうことってないでしょうかね。

 たいていの場合は、私の認識不足とか偏りに原因があることが、詳しく読んでいくとわかり、自分自身の中に何となくあるその文学者の「評価レベル」を訂正するんですが、私がそんな経験をした文学者とは、こんな方達であります。

   石川啄木・宮沢賢治・正岡子規

 そうそうたる名前が挙がっていますので、私の評価レベルの誤解は、全く私の無知のもたらした結果であると、誰もが納得しその上失笑なさると思うのですが、そんな風に、私は長く正岡子規の文学上の評価の高さがよく分かりませんでした。

 いえ、実はしつこいようですが、それは過去の話ではなく、ほとんど今に至るもよく分かっていなかったんですね。
 で、この度本書を読んでみました。

 随想ですから、いろんな事が書かれてあります。有名な正岡子規の野球の話なんかも書かれていたりして微笑ましかったりするのですが、私としてはやはり、一応文学話題に注目して読んでみました。

 樋口一葉の『たけくらべ』を褒めていたり、森鴎外が文壇内で攻撃されていることについて批判していたり、なるほど、時流には全く乗らず、批判眼は曇っていないことが読みとれます。

 西鶴・近松・芭蕉の業績を比較しつつ論じた文章があって、これもなかなか良かったです。何より、これらの大文学者に対して辛辣な辛口批評であるのがとても感心できました。(有名な「紀貫之は下手な歌詠みに候」なんて一文を思い出しました。)

 と、挙げていけば切りがないのですが、読み進めていって、はっと気が付いたことがありました。それは、この文章の書かれたのが明治28年であり、子規28歳の時のものであるということでした。

 例えば冒頭に私が抜き出した文章の中にも、「小説」「飽きた」という表現がありますし、他の部分にも同様に小説が面白くないと言うことが書いてあるのですが、私はそんな部分を読みながら、なぜそんなことを言うのかなと思っていました。
 「漱石を読めばいいじゃないか。あなたの親友の作品じゃないですか」と、本当にぼんやりと思っていたりして、そしてはっとその迂闊に気が付くんですね。
 本作は、漱石が活躍する10年ほども前の文章なのだ、と。

 と気が付くと、俄然この文章が、時代の中に輝いて実に縦横無尽・天衣無縫に書かれていることに、驚かざるを得ません。

 もちろん明治28年という年代より先んじて、逍遙あり、二葉亭あり、鴎外もいましたが、この子規の散文はそれらの文学者のものと比較しても、近代的リアリズム精神を描いた文章として全く引けを取っていません。
 まして、冒頭に引用したごとく、この透明感あふれる文体をや。

 「近代的リアリズム精神とそれを支えきる簡素明晰な文体」

 私はこの度やっと、納得できる形で「我が内なる正岡子規評価」を定着させることができました。
 さあ、次は、石川啄木あたりでしょうか。


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Last updated  2011.09.03 07:29:51
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