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カテゴリ: 読書・薬丸岳
少女を犠牲者とした痛ましい性犯罪事件が起きるたびに、かつて同様の罪を犯した前歴者が首なし死体となって発見される。身勝手な欲望が産む犯行を殺人で抑止しようとする予告殺人。狂気の劇場型犯罪が日本中を巻き込んだ―。絶対に捕まらない―。運命が導いた、哀しすぎる「完全犯罪」。欲望の闇の果て。 お薦め度 ★★★★ デビュー作『天使のナイフ』は少年犯罪という難しい問題がテーマでした。 今回も非常に重たいテーマでした。 幼児性愛という異常な性癖により過去に犯罪を犯した者達。 彼らは法に裁かれた後も、性癖が直る事無く再び罪を犯す。 遺族にしてみれば。 愛する幼い命を奪った犯人は許しがたい相手。 そんな憎むべき相手が「サンソン」という殺人鬼に殺されてゆく…。 この殺されてゆく者達は「生きてる価値の無いクズ」と化した 者たちなので、読者である私としても「殺されて当たり前」。 同情する気にもなれませんでした。 警察だって。サンソンによる、次の被害者を出さない為とは言え、 過去に非道な罪を犯した者たちの「警護」なんかしたくは無いでしょうね。 (被害者遺族でも有る長瀬刑事は「(妹殺しの加害者の警護が) 上司の命令であれば、警察を辞めます」と言って拒否してますもんね) 世相と法律。どちらが「正しい」か、解らなくなってきます。 長瀬刑事の葛藤か、この物語の「見せ所」ですね。 法を守るべきの警察の人間が、自らの怨念を晴らす為法を犯してしまうのか!? 「闇の底」…本当に深くて、深くて、中は見えそうにありませんでした。 *以下、ネタバレ反転* 小説の中では。 サンソンの名前は一切、明かされないまま話が進みます。 明かされてるのは。彼には愛する5歳の娘がいる事。 愛し方が「尋常じゃないなぁ」とは言葉の端端で感じられましたし、 「マーガレット」というキーワードがありましたので、サンソンの 正体を突き止めるのは読者にはそんなに難しい作業では無かったです。 彼が「時間が無い」と急いていたのも、自分の犯行を完全犯罪 (=自らを葬る)にするべく「協力者」を捜し求めていた事。 そして『協力者=長瀬刑事』という図案は… あぁ、やっぱりそうきたかぁという感想を持ちました。 このあたりの伏線はちゃんと読めますよね。(^_^;) 最後のサンソンと長瀬刑事の対面。 このシーン、ずっと待ち焦がれました。 この小説でのクライマックスです!! サンソンの思い描いた「完全犯罪」は果たして成立するのか!? ・・・終幕については賛否両論でしょうが。 これでいいかな・・・落ち着くところに落ち着いた感じがします。 (主な登場人物) 長瀬一樹 34歳。日高署勤務。妹の殺人事件後、両親が離婚。孤独な身の上。 長瀬春香 一樹の妻。一樹は妹の事件を思い、彼女との子供は作ろうとしない。 清水 日高署・交通安全化主任。一樹が慕う先輩。 長瀬恵美 一樹の妹。小四の時、陵辱の上殺害された。 長瀬政樹 一樹の父。弁護士。現在は再婚し別の家庭を持つ。 一樹の母 恵美殺害後、精神の病み実家に戻る。現在も療養中。 小坂浩美 恵美を殺害した犯人。当時32歳。 村上康平 52歳。坂戸署捜査一課。「サンソン事件」で長瀬とペアを組む事に。 村上久美子 康平の妻。 比奈子 康平の娘。 藤川 徹 52歳。村上と同期。「サンソン事件」の指揮官。 「長瀬恵美殺人事件」捜査に関わり、それ以降、一樹を見守るが。 サンソン 正体不明の殺人鬼。現在、妻・娘と幸せな生活を送るが。 沙耶 5歳。サンソンの最愛の娘。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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