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テーマ:ミステリはお好き?(1451)
カテゴリ:Mystery
改築間近の歌舞伎座の顔見世興行で起きた二つの死。追善公演仮名手本忠臣蔵上演のさなか、舞台上で芳岡仁右衛門が毒殺され、客席でも毒物死した男の遺体が発見された
しかし事件は客席への出入りがいっさい禁止された「通さん場」のさなか起きている。 犯人は劇場内に潜んでいたのだろうか。 毒物が楽屋から発見されたたこともあり、芳岡家の芸養子の役者に疑惑の目が向けられる。 そして客席で死んだ男のそばに落ちていた3枚の歌留多は何を語るのか。 殺害現場である本公演の客席に居合わせた文楽三味線方の冨澤弦二郎は、知人の演劇評論家海神惣右介とともに調査に乗り出す。 -------------------- ネタバレあり、何よりも以下は個人の偏った嗜好と視点からのチラ裏書きに過ぎない。 : : 歌舞伎座の殺人、玉三郎、菊五郎、勘三郎の名前が出てきたり、被害者一族の芳岡家の面々のモデルは?と憶測したり、まさに虚実綯い交ぜの面白さ。 本格ものミステリーとしての意外性はそれほどではなかった。 犯人は誰かは 毒を仕込むチャンスのあった人物 犯行動機は 梨園独特の因襲から あれとこれ と推測されたので。 それでも事件の発端、舞台の上演と同時進行してるが如く描かれるストーリーの展開、事件の捜査の過程と大詰めの伏線回収と推理は十分に楽しめる。 インターバルで作中作が挿入されたり、八重垣姫の台詞が謎のモチーフとして引用されたりする構成も私の嗜好にぴったりくる。 何よりも歌舞伎座の客席表が載っていたり、観劇しているような錯覚から浮かぶイメージが妄想へまでつながる臨場感の演出は筆者の書き手としての技量の高さを思わせる。 探偵役御両人と脇役刑事のキャラ設定も突出しすぎて嫌味という昨今の弊害がなく、程良く役回りに抑制の効いた筆致で描かれているのも好感が持てた。 だから今後のシリーズものに期待。 という具合に、感激しなくても感心できる仕上がりに満足して幕を閉じた、いや本を閉じた。 ただしこれも私が観劇ヲタで歌舞伎好きだからかもしれない。 だから巻頭贅言でお断りしてるでしょ。 個人の独断と偏愛えお井戸の壁に落書きしてるだけだって。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2021.05.20 20:28:15
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