「おお! そこに人殺しが居る!」探偵・榎木津礼二郎は、その場に歩み入るなりそう叫んだ――。嫁いだ花嫁の命を次々と奪っていく、白樺湖畔に聳える洋館「鳥の城」。その主「伯爵」こと、由良昂允(こういん)とはいかなる人物か? 一方、京極堂も、呪われた由良家のことを、元刑事・伊庭から耳にする。シリーズ第8弾。
京極夏彦さんの「陰摩羅鬼の瑕」を読み終わりました。
「京極堂」シリーズも7作目ですが、前作の「塗仏の宴」が一種の集大成的な位置付けだっただけに今作はシリーズとして再出発する為に原点回帰を目指した作品なのではと思います。
季節も1作目「姑獲鳥の夏」の翌年の夏でメインの語り手が関君というだけでなく、事件自体も非常にシンプルですし、前作まで大挙して出ていた脇役達もお休みで主要キャラ4人組が活躍するのも意味深な気がします。
相変わらず章が少ないので非常に読み易くてスラスラと読み進められましたが、事件発生の遅さにはビックリでしたw過去の事件の話は早い段階で登場するものの現在の事件は進行の度合いがゆっくり過ぎで、途中から逆に楽しくなって来て「最後まで何も起こらない」のを期待した所で事件発生でしたww
それでも優に長編作品2作分の分量を読ませてしまう力量は流石なのでしょうが、語り手である関君、由良伯爵、伊庭刑事で重複部分が多々あったのは少しテンポが悪い気がしますね。
事件自体も推理し易く、普段はあまり当たらない動機や背景となる部分も早い段階に想像が付きましたが、そこに結論として無理なく落とせるのですから凄い方です。
ただ、やはりラストで驚きが欲しいというのが人情なので、そういう意味では残念でした。
キャラとしては関君が目立っていました。あの御大に出会ったかと思えば、雑誌に掲載された作品が読めるだけでなく、見せ場も多く特に事件発生時は非常に良かったです。
お楽しみの榎木津は少し大人しくて残念でしたが、この事件で活躍は能力的に難しいでしょうね。
京極堂はページ数の割に語りのシーンが少なかったお陰で早く読み終われたので感謝していますww
木場修も出番が少ないもののインパクトありますし、印象的なラストも演出していました。
全体的に濃い作品の多い京極作品の中では珍しく薄味な印象を受けた作品でしたが、シリーズの今後が期待できる作品なのではと思います。
という訳で早く「邪魅の雫」を入手して続きが読みたいですww