紹介文
紋章上絵師の章次のもとに、かつて心を寄せあっていた女性から、二十年前と同じ蔭桔梗の紋入れの依頼があった。その時は事情があって下職に回してしまったのだが、それは彼女が密かな願いをかけて託した紋入れだった…。微妙な愛のすれ違いを描き直木賞受賞作となった表題作「蔭桔梗」。下町の職人世界と大人の男女の機微をしっとりと描いた11編の作品を収録した珠玉の短編集。
蔭桔梗(新潮文庫)【電子書籍】[ 泡坂妻夫 ]
まったく期待せずに読んだらこれがかなり好きなタイプの本だったんです。
こういうことがあるからランダムに読書するのって楽しいんですよねぇ。
と嬉しくなっちゃいました。
この作者の作品は初めて読んだと思うのですが調べてみたら推理小説書いてる方だったんですね。
”東京・神田で「松葉屋」の屋号を持つ紋章上絵師(もんしょううわえし・和服に家紋を描き入れる専門の絵師)の家に生まれる。定時制で高校に通いながら約5年の会社勤めを経て、家業を継いで上絵師として働く” by wiki
この作品は推理小説ではないのですが、さすが本物の上絵師が書いただけあってきっと業界の方が読んだら
業界あるあるな話が満載なのではないかと。
まったくその世界を知らないワタシが読んでもものすごくリアリティを感じたもの。
最近着物に目覚めてコロナでどこにも行けないので自宅で着付けの自主練したり楽天でリサイクル着物買ったりしてたんで、このざ・着物職人の世界を舞台にした人情ドラマはどんぴしゃでした。
アンティーク着物ってこんな風に作られて手をかけられたものなんだなぁと思うとより好きになりますが、残念ながら大体短いんですよね、アンティーク着物…。
ちなみにどうやら猫の家紋はないようです。
虎はあるのに。
残念。
お話の内容もザ・山本周五郎賞 的な。
上質の小説ってこういった作品のことを言うんでしょうねぇ。
着物好きさんには特にお勧めの短編集でした。