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カテゴリ:文芸評論
無人島に渦巻く自己中心性
女性一人だけを含む、大勢の無人島への漂流者達の生活。 この島は、当初は、世間とは、完全に隔絶されているのかと思えば、そうでは無い。 一人、また一人と、裏切り者が出る毎に、島の状況が一変二変するが、その経緯が、大変面白い。 島の人間の行動に、時に、何とも投げ遣りで、かつ、自己中心性が、良く表れている。 清子然り、ワタナベ然り、ユタカ然りで、利己的目的のために、皆がのたうちまわっている。 そして、島の未来は、どんな風に変化してゆくのか? こんな興味を抱きながら読み進むと、意外な側面が多く、引き込まれる。 著者は、作品を書くにあたって、綿密なプロットは行わず、自由に書き進むタイプだと聞いている。 それなのに、これだけのまとまりを見せる、著者の作品を、下支えするのは、紛れもなく、著者独特の世界観だ。 その世界観は、どちらかと言えば、あまり爽快なものではない。 しかし、逆説的ながら、そこが著者の持ち味であり、読者にとって、楽しみでもある。 結末には、少々肩すかしを食らった感もある。 しかし、この物語は、結末よりも、プロセスが秀逸だ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008年06月29日 13時58分20秒
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