犯罪は二人で、天藤真著
夫婦で盗みを著者の作品全集の最終巻で、十二篇の短編集。ユーモアがあって、比較的軽妙ではあるが、緻密で唸らされる作品が多い。中には「のりうつる」の様な、空想的な作品もあるが、多くは、着想が現実性を帯びている。ウマの合わない友人を描いた「運食い野郎」や、当初から話が胡散臭い「純情な蠍」などは、現実に、我々の周囲でも繰り広げられているかも知れない様な、犯罪的および非犯罪的悪である。夫婦で盗みを働く「犯罪は二人で」よりの三連作は、その、経緯(いきさつ)自体から面白い。そして、実際に犯行を行う場面は、、、思わぬ事態が生じるあたりが、傑作だ。その他の、殺人を扱った作品も、どこか間が抜けている。非常に親しみを持てる作品ばかりで、とにかく楽しい。著者は既に故人であるので、新作の登場は無く、これまでの作品を、噛みしめて読みたい。