鉄道古写真帖、三宅俊彦著
読むよりは見ろ本書は東海道本線とか、関西本線とか、山陽本線といった具合に路線別に、しかもマイナーな路線も含めて列車、駅、周辺の風景の明治大正時代中心の数多くの写真が掲載されている。写真に対する解説はごく短く、歴史や理屈は云々せず、とにかく多くの写真を見せてくれる。そういう点では割り切った写真集でもある。たとえ鉄道の歴史に詳しくなくても、写真が多くの歴史を語ってくれる。東京駅の駅前の風景は、広々としていて、人影すらまばらだが、ほとんどの人はマントを着て帽子をかぶっている。この時代の雰囲気がひしひしと伝わってくる。京都駅構内の写真は、現在の姿からは全く想像のつかない牧歌的な雰囲気だ。静岡駅前では歴史を感じさせるスタイルの車に混じって、人力の大八車が往来している。紀勢線周辺では人力車が活躍している。もちろん多くの古いSL写真も収録されていて、ファンにはたまらない。本書は収録写真数の非常に多い鉄道古写真帖であり、読むよりは見ろと言われている様な編集となっている。世界文化社の「古写真で見る明治の鉄道」とはかなり異なるコンセプトだ。その点での好みは別として、本書はいくらながめていても飽きない。