椅子がこわい、夏樹静子著
無名の勤務医の立場から私は民間病院に勤務する、無名の勤務医です。多方面の検査では異常は見あたらないのに、腰痛や背部痛を訴える方に、頻回に遭遇します。その痛みは激烈であり、時には痛みの部位が移動したりするのが特徴です。老若男女を問わず、患者さんの数は非常に多いです。非常に多い、という事を、特に強調したいです。私は、本書を読んで、少々もどかしく感じました。著者は、ご自分に合った治療法に巡り会うまで、随分遠回りをされました。各界で名医と称される多くの医師や治療者の診療をはじめ、話が「霊」にまで到達しているのには、少々驚きました。私なら、こういう場合は、心理的側面を重視し、懇意の臨床心理士の先生に、まず相談します。経験から言って、時間は少しかかりますが、その方向の適した治療法の紹介で、たいていは劇的に症状が改善します。問題は、この、心理的側面の可能性の問題を、患者さんに説明しても、なかなか信じてくれない事です。そういう意味で、本書が世間に与えた啓蒙は大きいです。本書では触れられていませんが、最近は、激烈な腰痛を訴えるニートの若者も激増しているとも感じます。本書の登場以来「信じてくれる」患者さんが増えました。信じてくれない方には、本書の一読をお勧めしているのですが、目から鱗だという反応が得られる事も多いです。こういうケースでは、私の様な、無名の勤務医の言葉は重くはないです。「劇場のイドラ」かも知れませんが、著者のネームバリューの持つ力は大きいです。本書は殊の外壮絶です。