さよなら、そしてこんにちは、その2、萩原浩著
どこかコミカル短編集。それぞれの作品は、喜怒哀楽であふれています。例えば、表題作の「さよなら、そしてこんにちは」は、葬儀社の社員が主人公です。葬儀なので、他人事とは言え、遺族が悲しんでいる姿を見るのは、大変辛いです。しかも、臨終間もない霊安室で、早くも営業を行うのです。これらの大変辛い場面が、どこかコミカルに描かれています。そして、物語の締めくくりは、タイトルそのものです。「長福寺のメリークリスマス」では、仏の使者がクリスマスに手を染めます。かように、本書に収録されている作品は、少し、にやけてしまうものが多いです。著者には、非常に重いテーマを扱った、いくつかの心をえぐる様な長編作品もあります。しかし、本書収録作品の様な、鋭い着眼点に重点が置かれた作品は、これくらいの短編が丁度良いです。あまり構えないで、気楽に対峙出来ます。