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2023.02.12
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カテゴリ:文芸
​ ストーカーに狙われていた婚約者・坂庭真実が、突然姿を消してしまった。
 西澤架(かける)は、その行方を追い、彼女に関わった人々を次々に訪ね歩く。
 ミステリータッチな展開の中、人間の奥底に潜む業が抉り出されていく様は圧巻。
 架と真実が、それぞれに成長していく様も、しっかりと伝わって来ます。

  「値段、という言い方が悪ければ、点数と言い換えてもいいかもしれません。
   その人が無意識に自分はいくら、何点とつけた点数に見合う相手が来なければ、
   人は、”ピンとこない”と言います。
   - 私の価値はこんなに低くない。
     もっと高い相手でなければ、私の値段とは釣り合わない」(中略)

  「ささやかな幸せを望むだけ、と言いながら、
   皆さん、ご自分につけていらっしゃる値段は相当お高いですよ。
   ピンとくる、こないの感覚は、相手を鏡のようにして見る、
   皆さんご自身の自己評価額なんです」(p.137)

これは、真実が利用していた結婚相談所の代表・小野里が、架に言った言葉。
こういうぐうの音も出ないような言葉や描写が、作品のあちこちに出てきます。
そして、それらについて、自分自身を振り返ってみると……
その時々の行動の背景にあった本音に気付かされるのです。

   ***

久しぶりに食い入るように読み耽りました。
でも、読後感はスッキリしたものにはなりませんでした。
西澤架も坂庭真実も、どちらも好きにはなり切れませんでした。
最近、のほほんとした作品ばかりを好んで読んでいるせいでしょうか。

もちろん、作品としては濃密で、色々と考えさせられることも大変多く、
辻村さんの筆力の凄さを、改めて強く感じることが出来るものでした。
浅井リョウさんによる巻末の「解説」も良かったです。
こういう作品が、読後長い時間を経ても、記憶に残り続けるんでしょうね。





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Last updated  2023.02.12 14:05:56
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