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カテゴリ:社会・政治・時事
![]() 内田也哉子さんとの対談集である『なんで家族を続けるの?』や 三浦瑠璃さんとの対談集である『不倫と正義』と同様、 中野信子さんが脳科学の視点から言葉を発していきます。 しかし、本著ではヤマザキマリさんの存在感が圧倒的。 原田マハさんとの対談集『妄想美術館』同様、 イタリアを中心に現在のヨーロッパ事情だけでなく、 古代ローマの歴史にも精通していることが伝わって来る一冊でした。 *** 不安が溜まったり経済的に不安定になればなるほど、生贄を欲する。 生贄という概念自体は本能ではないけれど、 人間の文明は生贄とともにありきですよね。(p.128) これは二人の話が、危機の時に共同体を保つため、 「目立つ人」「得をしていそうに見える人」「外見の異なる人」などが、 標的として生贄に選ばれがちだという流れになった際に、ヤマザキさんが発した言葉。 これを受けて、中野さんはこう述べます。 自分こそ正義、自分こそ知性、と思っている人ほど、ブレーキがオフになりやすく、 正義の快さにあっという間に人格を乗っ取られてしまう。 本当の知性は、自分の正義や知性が独り善がりのものになっていないかどうかを、 まず疑うところにこそ、あると思うのですが。(p.129) コロナ禍の真只中、「正義中毒」が全国に蔓延している時期に行われた対談だけに、 二人の間に流れる危機感が、ひしひしと伝わってきます。 しかし、コロナ禍がある程度落ち着きを取り戻した現在でも、 「正義中毒」の方は、全く衰え知らずのように感じられるのは、私だけでしょうか。 そして、本著の中で私が最も感銘を受けたのが、 ヤマザキさんによる「第5章 想像してみてほしい」における 186頁から191頁までの「自他ともに許せない時代」の部分。 ここで取り上げられている内容は、既にとても深刻な問題を引き起こしつつあると感じます。 しかし、この”メンタル無菌室”で育てられた子どもたちは、 大人になってから必ずどこかで遭遇する社会の荒波や不条理を 乗り越えていくことができるのでしょうか。(中略) 講演会などでこういう話をすると、 子どものいる親御さんたちは「そのとおり」としきりに頷かれるのですが、 かといって世間での教育の全体的な風潮に逆らえる勇気まではなかなか出ない。 ”世間体”によるジャッジと孤立化が怖くて、 全体傾向の同調圧力に背くことができない、というのが現実のようです。 こんな教育への姿勢が変わらない限り、 失敗や辛酸をなめても海外に行ってみようなどと思い立つ子どもも、 そして親も現れないのは当然だと言えるでしょう。(p.189) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2023.12.02 11:46:04
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