死刑囚人は眠っている間だけが極楽だ。
日暮るれば先ず今日一日も無事であったと安心して短い夢を結ぶ。
夜の明けるのが苦悩の開幕、眼のあいた時が地獄の門だ。
おびえと、恐怖と、のろいと、自責と、徒らに焦燥苦熱の時を刻む。
死を願うて死を恐れ、生を呪うて生を貪(むさぼ)る。
ただ瞬間だけでも無疑無慮の世界をと憧れる。
死一日早ければすなわち一日の楽長し。
死、死、死、願うて来らず求めずして近づく。
ある意味においては地上における人はことごとく死刑囚だ。
お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2022年02月15日 18時33分19秒
[人 生 日 録・明治・大 正・昭 和 ② ( 古 本 の 写 し 掲載 )] カテゴリの最新記事
もっと見る