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分太郎の映画日記

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2007.05.19
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カテゴリ:韓国映画
 韓国の異才キム・ギドク監督の第1作。
 東京・渋谷のユーロスペースにて開催された「スーパー・ギドク・マンダラ アンコール」にて鑑賞。

 『鰐~ワニ~』 評価:☆☆☆

 途中で製作会社が三度も変わり、公開劇場が無くて監督自ら頭を下げて回ってようやく1館だけで上映、論評は全て酷評ばかりという、さんざんであったキム・ギドク監督のデビュー作であるが、たしかに荒削りというか撮り方がぶっきらぼうな感じはあるが、かなり良い出来なのではないかと、というのが第一印象。

 「処女作にはすべてが詰まっている」とはよく言われるセリフであり、その妥当性がどの程度のものなのかは一概に判断はできないが、たしかに本作を見ると、キム・ギドク監督のその後の作品を特徴づける萌芽が見て取れる。

 ある種の剥き出しの「残酷さ」、漢江が舞台という「水」、「強姦・レイプ」、登場人物がほとんど話さない「無言」、主人公たちが住んでいるのは「自殺」の名所の脇(さらに重要なポイントになるの)、亀を青ペンキで「塗る」、などなど、キーワードは満載だ。(『魚と寝る女』『リアル・フィクション』『絶対の愛』などの感想参照)。

 そもそも話の筋自体が、男の暴力から愛が始まって、徐々に本人も成長?し、やがてそれが昇華する、という『悪い男』などで見られる典型的なパターンである(もっともその昇華は、マイナスの方向へと向かうのだが)。
 しかし、チョ・ジェヒョンは上手いなぁ。

 ウ・ユンギョンはちょっと好みな感じの女優散田が、他の出演作は日本で紹介されているのだろうか?

 ただストーリー的には、老人が殺されるのは、何となく“お約束な”感じはしたが、全体の流れの中で、今ひとつ浮き上がってしまっている印象はぬぐえないかな。
 また、ちょっとネタバレになるが、少年は明日からどうやって生きていくのであろうか。うーん、気になる。

 あと、昨年の『グエルム』をめぐる騒動について、この処女作を見ると、監督が噛みつきたくなる気持ちもよく分かった。
 同じ漢江を舞台にした“家族もの”でありながら(擬似と本当の違いはあるが。主人公は“鰐”(^^;)だし)、こちらは前述のように本当にさんざんな評価で(出来もそれほど悪いとは思えない)、かたや韓国史上最高のヒット作なのだから、やっかみの一つや二つ、言いたくなるのが人情というものだろう。

 同じ日にギドク監督の第2作『ワイルド・アニマル』を鑑賞したので、とりあえずこれで(現在韓国で公開中の最新作を除いて)ギドク監督の作品はコンプリートしたことになる。


【あらすじ】(パンフレットより転載)
 「鰐」と呼ばれる浮浪者ヨンペは、漢江に架かる橋の下に住み、川に投身自殺した人間が息絶えてから死体を引き上げて、金品をかすめ取る卑劣で粗暴な男だ。
 ある日、川に身を投げたヒョンジョンを助けたヨンペは、彼女をレイプし、自分の慰みものにする。同じ橋の下で暮らす老人と孤児の少年は、そんなヨンペからヒョンジョンを守ろうとし、ヨンペもいつしかヒョンジョンに人間的な愛情を感じはじめる。
 4人はしばしば、ひとつの「家族」のように穏やかな日々も過ごすが、ヨンペが、ヒョンジョンを裏切った元婚約者の影の顔を知り、その男に復讐劇を仕掛けたことから、大きな悲劇が訪れる。


『鰐~ワニ~』

【製作年】1996年、韓国
【製作】チョヨン・フィルム
【配給】ハピネット
【監督・脚本】キム・ギドク
【撮影】イ・ドンサム
【音楽】イ・ムニ
【出演】チョ・ジェヒョン(ヨンペ)、ウ・ユンギョン(ヒョンジョン)、チョン・ムソン(老人)、アン・ジェフン(少年) ほか


書籍
『キム・ギドクの世界
野生もしくは贖罪の山羊』

DVD
『魚と寝る女』

DVD
『悪い男』





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最終更新日  2007.05.21 17:39:36
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