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テーマ:最近観た映画。(40123)
カテゴリ:日本映画(2007)
長澤まさみの10代最後の主演作ということで気になっていた作品。共演は山田孝之、塚本高史、国仲涼子ほか。原作は『いま、会いにゆきます』の市川拓司による同名の小説。
東京・池袋のテアトルダイヤのレイトショーにて鑑賞。 『そのときは彼によろしく』 評価:☆☆☆ 評価はものすごーく甘目。 話的にはすかすかな内容だが、主要な舞台となるアクアプランツショップ(水槽用の水草を扱う店)に並んだネイチャーアクアリウム(水槽の中に水草によって、草原や森林などの自然景観を表現したもの)がたいへんに圧倒的だったこと(これは一見の価値あり)、子供時代を演じた3人の子役が良かったこと、何だかんだ言って中心となる3人(長澤、山田、塚本)の演技――とくに表情の微妙な変化など――が上手かったこと、などで☆三つ。 特定の役者のファン以外にはお薦めする映画ではないと思うが、上記の点については機会があれば、DVDなりテレビ放映などで見ても損はないと思う。 繰り返しになるが、少なくとも、ネイチャーアクアリウムの映像はとても綺麗で癒される。必見。 (以下ネタバレあり) しかし、この作品、ファンタジーだとは思いもしなかった。 ファンタジーにはファンタジーのフォーマットがあるので、“病気”の部分だけ幻想的にすればよいというものではないのだが、演技がリアリズム指向な分、何を描きたいのか不明なまま、全体としてちぐはぐ、中途半端な作りになってしまった感は否めない。 (以下、本当にネタバレ) 子供のころから、眠りにつくとそのまま昏睡状態に陥り死んでしまう病気に罹っていて、という設定だが、花梨の病気は話の設定の肝心要。ここが幻想的なものだと、登場人物の想い・哀しみや行動に観客が感情移入できず、浮わついた軽いものになりすぎて、感動が生じない(生じにくい)。 これがマンガや小説だとさほど違和感は生じないのだが、映画だと映像がもろにリアルである分、相当の仕掛けがないと説得力に乏しくなる。 とくにラストはハッピーエンドで、そんな簡単に治ってしまう病気だったのかと興醒めしてしまった(再び眠りにつく=死ぬ可能性も高いのでは?)。 また、たぶん3人がそれぞれ互いを必要とする関係性を描く、というのが話の中心だと思うが、どうもそうはなっていない感じ。 塚本高史演じた画家(の卵)は、極端には(大人になってからは)いてもいなくても、長澤・山田二人の関係性に変化は生じない(そういう風にしかストーリーが作られていない)。逆に、塚本自信に必要だったのは、思い出以外には、ちょい役で北川景子が演じた恋人・妻だけだろう(自分を捨てて、さらに金銭詐欺まで働いた母も重要だが)。 子供時代の智史と祐司、花梨と祐司、それぞれの関係をもう一歩エピソードとして描いてあればとは思う。 互いに音信がとれなくなったというのも、結局、それぞれが互いに思いあってなかったことの表れな気がしてしまう。 孤児院出身ならば、(連絡を取りたい友人がいるならば)自分の所在くらい施設に連絡するだろう。そこが互いの連絡拠点になるはずだ。仮に施設が潰れたのだとしても、智史が引越してすぐならば花梨や祐司から智史への連絡が途絶えるのがよくわからないし、高校くらいの時だとしても、映画の現時点からたかだか数年前のことだ。連絡を取り合いたいと思う者どうしが音信不通になる理由がわからない。 この点、原作は花梨を地球の裏側に移住させて当地の郵便事情としているし(私の経験上、ラテン人はアバウトだ、そもそも15年という時間が経過していたりと(その時代ネットもないし)、割りとうまく処理している。 とはいえ、女の子1人に男の子2人の幼なじみをめぐる難病もの(長い眠りにつく物語)という設定は、今年の始めに公開された『天国は待ってくれる』が思い浮かばせるが(『天国…』は女性ではなく、男性の一人が眠りにつく)、それに比べれば『そのときは…』の方が、子供時代を一応きちんと描いている分、メインの話に真実味が生じて悪くはない。 人に薦めるならば、こちらの『そのときは…』だろう(岡本綾は好きなんだけどね)。 ところで、映画と原作で設定がかなり違うという話を聞いたので、鑑賞後に原作を読んでみた。 ……って全然違う話じゃん。 一番の違いは、年齢。原作では30歳前後、3人が絆を結ぶのも14歳の中学生のとき。 映画では、主人公を長澤まさみにキャスティングした段階で20歳代前半に変更したのかもしれないが、そのために様々な歪みが映画に生じている(智史が店を持つには若すぎるとか)。 それと、花梨と祐司の家族設定。花梨には両親と姉!(原作ではこれが重要な役柄)がいるし、祐司には父親がいる(母親の設定は同じ)。映画的によりドラマチックという意味で変更も分からなくはないが、互いに音信が取れなくなる理由とか、粗誤が出る原因でもあろう。 細かい点では、智史の父親は不通のサラリーマンで、智史はかなり歳をとってからの子供だったり、花梨が智史のアクアショップで勤めることができたのもネット関係の整備をするためだったり(ラスト近くで、これが良いエピソードを生み出している)、美咲はベーカリーの店員ではなく結婚紹介所で知り合って交際を始めたばかりの女性だったり、まぁあれやこれやが変えられている。 どちらが良いと感じるかは人それぞれかもしれないが、私的には原作の設定を活かした映像化の方が、良かったのではないかと思う。 その場合は、主要キャストは総入れ替えになってしまうが。長澤まさみにこだわるのであれば、彼女が20歳代後半になってから作るとか。 先にも書いたように、主要キャストの演技自体は良かった。あくまでも脚本に難ありということだ。 いずれにしろ、映画で描かれた水槽の中の“別世界”は、体験して損はないと思う。 『そのときは彼によろしく』 【製作年】2007年、日本 【配給】東宝 【監督】平川雄一郎 【原作】市川拓司 【脚本】いずみ吉紘、石井薫 【撮影】斑目重友 【音楽】松谷卓 【出演】長澤まさみ(滝川花梨=モデルの森川鈴音)、山田孝之(遠山智史)、塚本高史(五十嵐佑司)、国仲涼子(ベーカリーの店員:柴田美咲)、和久井映見(智史の母:律子)、小日向文世(智史の父:悟朗)、黄川田将也(アクアプランツショップの店員:夏目)、北川景子(佑司の妻:桃香)、黒田凛(子供時代の花梨)、深澤嵐(子供時代の智史)、桑代貴明(子供時代の佑司) ほか 公式サイト http://www.sonokare.com/
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最終更新日
2007.06.18 13:46:44
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