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2005.11.04
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仮に僕達が終戦直後の政治や社会の制度改革を全面的に任されたとしよう。つまり、アメリカその他の連合国の意向に耳を傾ける法的義務が全くないと仮定しよう。

靖国神社の処遇をどうすればよいだろう。

これは天皇制をどうするか、という問題と深く関わっている。なぜならば、10月15日の日記で説明したように、靖国神社の前身である招魂場あるいは招魂社は、明治新政権の樹立のために犠牲になった者を天皇の忠臣として祀ったものだからだ。

これは、日本に古くからある御霊信仰とはまったく逆の考え方である。御霊信仰は、権力によって抹殺された者の怨念を鎮めることが目的であった(菅原道真を祀った北野天満宮や大宰府天満宮がよく知られている)。つまり、招魂は明治になって作られた新しい伝統で、権力側の死者を祀るというものだった。反権力側の死者については、怨霊になろうがどうなろうがうっちゃって置く、という考え方だ。(幕末の勤皇の志士達の同士追悼が原型になったようだが。)

日中戦争から太平洋戦争に至る惨めな敗戦の歴史の責任の主体は陸軍・海軍の暴走だ。決して陸軍だけの暴走ではないことは、例えば保坂正康の「あの戦争はなんだったのか」を読むとわかる。(p.87 「実は、本当に太平洋戦争開戦に熱心だったのは、海軍だったということである。」)

しかし、この暴走を可能にしたのは、神格化された天皇を楯にして、天皇の為なら個人の命を落とすことは全く惜しむに足らない、いやむしろその人そしてその遺族にとって名誉である、という考え方・心情・イデオロギーだ。天皇に忠を尽くす「大善」の為には、反対するものは暴力で制圧してもいい、という自分勝手な理屈が横行したからだ。五・一五や二・二六がこの理不尽な考え方の噴出だった。

天皇個人が、こういった動きに反対だったかどうかは関係がない。天皇の真意に関わらず、天皇神格化のイデオロギーは推し進められ、天皇は「君臨すれども統治せず」と口を噤み、そうしているうちに津波のような暴走が国を巻き込んでいったのだ。

天皇神格化のイデオロギーは、統帥権の独立、教育勅語、八紘一宇、軍人勅諭などの制度やスローガンを通じて国の隅々まで浸透させられた。そして、靖国神社を中心とする国家神道もこのイデオロギー政策の核だったことは間違いない。

話を元に戻して、敗戦直後、こういう歴史を理解したとしたら、僕たちは靖国をどうすべきだろう。

僕が責任者だとしたら、天皇神格化に一役買った教育勅語その他の装置は、すべて反故にする。天皇への忠誠を煽るための靖国というカラクリも、もちろん廃止する。何しろ、靖国神社も伊勢神宮も、いわば天皇の私的な神社なのだ。

例えば、ある会社が倒産したとする。社長は責任を取って退任し、何百人何千という従業員が路頭に迷うことになったとする。その社長が社内に祀っていた個人の氏神を、会社更生法を受ける会社が、祀り続けるだろうか。絶対にありえない。

天皇は戦争責任を問われなかった。それは、アメリカの思惑がしたことだ。しかし、神格を奪われ象徴となったことは、実質的な社長退任だ。この時点で、天皇の氏神や天皇の忠臣を祀る神社は、国民の神社とは断じて呼べない。天皇の為の神社が国家意識のよりどころだったのは、天皇=国体であった時期だから可能だったことだ。

こうして考えてみると、結論はやはり一つしかないと思う。靖国神社は日本国民(あるいはそれに順ずる人達)から出た戦没者を祀る施設としては、絶対にふさわしくない。すべの戦没者を国民慰霊施設に移すべきである。

前回図式化した国家意識派と他者志向派の対立とどう関係するのか?僕の結論は、僕達が終戦直後の制度改革を任されたと仮定して引き出した。つまり、結論はアメリカや東アジアの思惑とほぼ関係なく出された。だから、国家意識派の反論は見当はずれである。と同時に、東アジアに対する謝罪とも関係なく靖国廃止を提案しているのだから、他者志向派にも組しない。

国家意識を確立することが必要なら別のシンボルを使えばいいし、他者に謝罪したいならば謝罪した上で国民慰霊施設で戦没者の慰霊を行えばよい。





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最終更新日  2005.11.25 18:06:45
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こんばんは。   きざし昇 さん
 私自身の素朴な疑問ですので、よろしければお教え頂ければありがたいです。

 私の神社、仏閣に対する参拝は、本人の自由意志によるものだと考えています。故に、誰からも規制されたり強制されるのは、私にとって誠に迷惑以外何ものでもありません。これが私のスタンスです。

 この日記を読んでいて、国家の戦没者追悼施設として靖国神社がふさわしくないということを言われているんでしょうか。
 多くの宗教法人の内の靖国神社が、書かれているような主旨で建立されたとしても、現在の靖国神社は、国家の招魂社として何かで位置つけされて、何かの特別予算などを受けている施設なんでしょうか?
 早い話靖国神社が、「我が神社は招魂社ダ」といっているのだと思っていましたが、違っていたんでしょうか?  あまりにも基本的なことで、私の解釈が間違っていたら恥ずかしいことですので、教えていただければ幸いです。

(2005.11.07 01:54:21)

こちらこそ   cozycoach さん
きざしさんとどこが噛みあわないのか、教えていただきたいと思います。

きざしさんの言う「神社、仏閣に対する参拝は、本人の自由意志」というのは当然賛成です。

靖国については、僕は一種の思考実験をして、終戦直後に自分達を置いてみて、当然公的な側面は完全に廃止されるべきものだった、と結論しました。GHQと日本政府の交渉の中で、残念なことに私的には残ってしまいましたが、本来であれば、私的な宗教法人としても取り潰されるべきものだったと思っています。

という立場ですから、公的な首相の参拝というのは問題外です。しかし、戦没者への敬意は表するべきなので、それは別の公的施設を作ってやればよい、という考えです。

きざしさんのおっしゃるように、靖国は別に国家の保護を受けているわけではありません。問題は、私的な靖国というのが一時的な仮の姿で、やがて公的な招魂の場にしよう、という動きが確実にあることです。そうした動きに迎合するような首相の公式参拝は、公私の境目を紛らわしくするだけだから、やめたほうがいいと思うのです。政治・社会では、象徴的な行動の意味するものは大きいと思います。公式参拝は、そういった象徴的な行動の一つではないでしょうか。そして、僕はその象徴の意味するものに反対、というわけです。
(2005.11.07 10:09:23)

Re:こちらこそ(11/04)   きざし昇 さん
cozycoachさん
ありがとうございました。
>きざしさんとどこが噛みあわないのか、教えていただきたいと思います。

 別に他意はないんですが、宗教法人が病院の診療科目みたいに、看板を掲げているもんだと思っていますから、どうして皆さんがワーワー言っているのか今ひとつ解からなかったんです。

>本来であれば、私的な宗教法人としても取り潰されるべきものだったと思っています。
 という立場ですから、公的な首相の参拝というのは問題外です。しかし、戦没者への敬意は表するべきなので、それは別の公的施設を作ってやればよい、という考えです。

 そこなんです。。。たぶんここが単に感覚のズレなのかもしれませんが、他の神社でも、靖国神社同様のスタイルで戦没者を祭っていても同じような考えになるんでしょうか。靖国神社以外の神社ならOKなんでしょうか。
 そこのところなんです。 
 
>きざしさんのおっしゃるように、靖国は別に国家の保護を受けているわけではありません。

 やっぱりそうですよね。今は官営社ではないということですね。第一段階の問題は、そこにあると思っていたんです。

次に。。。

  (2005.11.08 00:28:51)

Re[1]:こちらこそ 2(11/04)   きざし昇 さん
cozycoachさん

 >問題は、私的な靖国というのが一時的な仮の姿で、やがて公的な招魂の場にしよう、という動きが確実にあることです。

 それは問題かもしれません。。。
 靖国神社自体の宗教活動は、他の宗教団体に比べて特別に社会的な問題はないと考えますから、靖国神社のもっている物語を自分に都合良く利用する輩がいるのは事実ですね。特に街宣車で訳のわからないことをがなっている連中。。。品性の問題です。神域周辺でのマナー違反です。

>そうした動きに迎合するような首相の公式参拝は、公私の境目を紛らわしくするだけだから、やめたほうがいいと思うのです。政治・社会では、象徴的な行動の意味するものは大きいと思います。公式参拝は、そういった象徴的な行動の一つではないでしょうか。

>公式参拝なんでしょうか。公費から何がしの支出があったんでしょうか? 公用車を利用したとか言われていますが、本筋の問題ではないと思いますから、説得力が弱いと思っています。でも、原則1円でも使ってはならないものなのでしょうか?
 そういう話なら、私は黙ってしまいます。

>そして、僕はその象徴の意味するものに反対、というわけです。

 だから、旗印である靖国神社は廃止すべきという結論を持つ意見なのですね。 お話の内容が整理できました。これからもよろしくお願いいたします。


(2005.11.08 00:33:04)

きざし昇さん   cozycoach さん
> そこなんです。。。たぶんここが単に感覚のズレなのかもしれませんが、他の神社でも、靖国神社同様のスタイルで戦没者を祭っていても同じような考えになるんでしょうか。靖国神社以外の神社ならOKなんでしょうか。

僕の考えはあくまでも終戦直後の時点に立ってのことで、そのときに私的法人として生き残ってしまったのだから、それをつぶせとは言いません。ただ、公的になると困るな、その可能性を残すようなことはいやだな、と言うことです。それと、僕の知ってる限りは各地の護国神社もこの系統に属すると思うので、それが公的な役目をするのは反対です。ただ、象徴の意味が小さいので、一応議論のうえでは無視しています。
(2005.11.08 10:42:01)

きざし昇さん(続き)   cozycoach さん
>公式参拝なんでしょうか。公費から何がしの支出があったんでしょうか? 公用車を利用したとか言われていますが、本筋の問題ではないと思いますから、説得力が弱いと思っています。でも、原則1円でも使ってはならないものなのでしょうか?
> そういう話なら、私は黙ってしまいます。

前回の参拝は私的なもので、公的な費用は使っていないはずですよね。私的だと主張して、憲法的にもそれが通るんならいいんじゃないんですか。唯一の問題は一国の首相の行動は象徴的な面があると言うことで、どこまでが私的かというのは難しいですよね。

ちょっと話は飛びますが、スポーツ選手はアメリカではRole Modelと呼ばれて、少年少女が彼らの行動を手本にします。だから、いくら私的行動だと言ってもこういったスポーツ選手は自分の行動を気につけないといけません。影響力が大きいからです。首相の影響力は国内的にも国際的にも甚大なのではないでしょうか。

> だから、旗印である靖国神社は廃止すべきという結論を持つ意見なのですね。 お話の内容が整理できました。これからもよろしくお願いいたします。
-----

決して廃止すべきだとは主張してないつもりですが。あの時廃止すべきだったと主張しています。廃止する機会はとっくに失われてしまったと思っています。ただ、公的な場所は別個に作るべきです。

どうもお付き合いくださり、ありがとうございました。いろいろ考え方に違いはあるでしょうが、今後とも意見交換をよろしくお願いします。
(2005.11.08 10:53:30)

あえて   tomoo954 さん
あえて議論を膨らまします。すみません。でも靖国が装置であるずっと以前に天皇という機関そのものが装置なんだとおもうのです。役職や地位なら責任とってさようなら、といくのですが、一応日本の政治史を見れば一貫して幕府も朝廷からマツリゴトをお預かりしていたわけで、その流れで国内的にも対外的にも落としドコロは「戦争責任は内閣以下の機関にあった」ということになります。ここで一つ、身内を戦地で無くした戦没者遺族の視点を入れると「お母さん、僕は死んだら靖国に行きますから、そこで会えます。後の日本を再建してください」となくなった人の家族にしてみれば、どんなものであろうと靖国は靖国なんではないでしょうか?この辺りはどうなりますか? (2005.11.12 04:18:51)

tomoo954さん    cozycoach さん
マツリゴトを預かっていた、という感覚の重さ、というのは「一貫して」と言っても時代によってかなり変わってくるんじゃないんですか?それと民衆レベルではどうなんでしょうか。僕の直感では、この感覚が重くなったのは幕末になってからで、それも民衆レベルでは全然浸透してなかった。

遺族会の感情の問題を取り上げれば、東アジアの感情の問題はどうなるんでしょうか?彼らにとっては靖国はどうしても許せない、となるんではないんでしょうか。国立の戦没者慰霊所でちゃんとやればすむのでは?

柄谷行人の「倫理21」というのに入ってる「戦争における天皇の刑事責任」というのを読んでみてください。tomooさんの反応を聞きたいものです。 (2005.11.12 07:27:07)

Re:tomoo954さん(11/04)   読みます さん
さっそく倫理21取り寄せ発注しました。面白そうですね読んでみます。ただ、倫理の問題と政治的正しさ、あるいは外交戦略の問題は次元が違うと思うのです。アジア諸国民は個人として怒ってるというよりは諸国のプロパガンダに乗っているところも大きいはずです。遺族会が靖国になくなった家族の霊魂を参拝する事自体は中国も韓国も誰一人「いかん」と言っていません。つまり、あくまでポイントはA級戦犯合祀のまずさ、ではないかと思います。国際関係上の「政治的正しさ」の問題だと思います。国際刑事法的な視点に立って本質的な有責性を求めてもそれは学問上、と、いいますか、それをいったらアメリカ政府などは近年国際刑事裁判所で何度有罪判決を受けていることか・・・。だからといって、「悪うございました」なんてことは言うどころか世界の盟主ですから。本質的有責性に立って謝罪する、あるいは断罪処理していく事の有効性に関しては面白い議論ではありますが、私はあまり認めていない立場です。ただし、今のところ・・・。 (2005.11.13 20:21:06)

tomooさん   cozycoach さん
その通りだと思います。以前に書いた、勝海舟に対する福澤の倫理的視点からの批判もあまり有効でなかったですよね。今回の靖国に関しては、僕は歴史的な視点から現状の分析をしたのですが、戦略的な分析もあることでしょう。中国は多分戦略的にA級分祀の問題に焦点を絞ってか日本が解決しやすいようにしているのでは? (2005.11.14 03:07:59)

Re:戦後処理を任されたとしたら(11/04)   JAWS49 さん
 ようやく普通の健康状態に近づいてきました。。

 靖国問題もそうですが、時事問題に関しては各事象についての基本的定義や事実が自分の中で余りに欠落している事が普通です。なので議論するにも立ち位置があやふやなため、こういう場では沈黙してしまいがちになります。とはいえ知識の多寡は相対的なものに過ぎないのでどこかで踏み切り地点を設定せざるを得ませんが。

 というExcuseはありますが、個人的にはcozycoachさんと同様、現実的な解決策として靖国を代替する仕掛けが必要だと感じます(但し、靖国代替の仕掛けにおけるA級戦犯の扱い方が課題になると予想します。)

 UKなんかだとこの手の隘路に立たされればあっさり+ちゃっかり代替品を登場させるでしょうね。それは政治に限りませんが。 (2005.11.25 12:24:54)

Jawsさん   cozycoach さん
ずーっと調子が悪いんですか?異国で大変ですね。仕事をしながらなんでしょうが、お大事に。

靖国は多分このままうやむやになってしまうんでしょうね。 (2005.11.25 13:25:02)

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