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2022.04.22
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実は、讃美歌「O Sacred Head・・・」は、「American Tune」以前に別のポピュラー曲で使われていた。1947年、アメリカのフォーク・シンガー、トム・グレイザー(Tom Glazer)がこのメロディに乗せて「Because All Men Are Brothers」という曲を発表していた。みんな兄弟・姉妹なんだから一つになろうよ、という社会的な抗議の歌としてだった。このバージョンは、アメリカのフォーク・グループ、ピーター・ポール&マリー(いわゆるPPM)も1965年に取り上げている。

西欧では、讃美歌がポピュラー音楽化されてヒットすることはそう珍しいことではないようだ。よく知られたものを二つ挙げると、「Amazing Grace」、僕のよく聴いたバージョンはAretha FranklinやRod Stewartのもの。もうひとつ、「Morning Has Broken」、これはCat Stevensがヒットさせた。これらのヒット曲は讃美歌の歌詞をそのまま使っている。Tom Glazerの「Because All Men Are Brothers」は歌詞を変えた作品で、その点で珍しい部類に入るのではないだろうか。

ユーチューブでピーター・ポール&マリーの「Because All Men Are Brothers」を聴く

「O Sacred Head・・・」の楽譜(4声の上2つのみ表示)を参照してほしい。主旋律(一番上)ではほとんど4分音符、たまに8分音符、が連続し、それぞれの音符に歌詞の1つの音節(シラブル)が充てられている。1947年のTom Glazerバージョンの歌詞も、多かれ少なかれ同じである。音階的にはほぼ全て高低2度づつしか動かない。曲の構成は<A・A・B・C>の4つのセクションが4小節ずつ、合計16小節という型に嵌ったものである。近代のポピュラー音楽としては刺激が少ない。



ポール・サイモンはこの曲を見事に加工した。僕のような素人にもわかる点をいくつリストする。

▶ 符割の堅苦しさを崩すためにシンコペーションを幾つか入れて裏ビートにアクセントが来るようにしている。「American Tune」の最初の1小節「Many is the time I've been mistaken」の部分で見ると、2拍目と4拍目のアクセントを裏ビートに移している。つまりアクセント・強拍の位置は2.5拍目の「been」と4.5拍目の「(mis)taken」に動いている。結果的に2小節目の第1拍はアクセントを失っている。




▶ 原曲の構成では上に示した最初の<A>セクションと二度目の<A>セクションは全く同じメロディだが、サイモンの場合、二度目の<A>セクションではメロディを若干変えて、<A・A>ではなく<A・A'> としてバリエーションを付けてある。具体的には、後半の旋律を3度上げて盛り上がりを持たせている。「American Tune」の一連目の歌詞でいうと、「certainly misused」の部分が該当する。
▶ <A・A'・B・C>の<B>セクションの部分の歌詞に「oh, but I'm alright, I'm alright」という慣用表現を挿入して、歌が語るように自由に流れるようにしてある。
▶ <B>セクションの部分の終結は、原曲ではキーCでいうとAの和音を使っているが、これだと(宗教的な)高揚感が出過ぎて曲がここで立ち止まってしまう。そこで、サイモンはごく普通のAm/A7からD7で<C>セクションに流れていくコード進行を使っている。
▶ <C>セクションの3小節目、第1連の歌詞でいうと「・・・bright and bon vivant」という小節は通常の4拍ではなく6拍になっている。楽譜上は、6/4を1小節入れてあると考えても4/4に2/4を1小節足してあると考えてもどっちでもいいと思う。歌詞の都合上か旋律の必然からか、サイモンはどうしてもここで2拍足して、次に来る「so far away from home, so far away from」という部分を4小節にして締めくくりたかったようだ。結果的には、これが新たなセクションDになり、全体が<A・A'・B・C・D>という元の讃美歌よりやや複雑な構成になっている。小節の数でいうと<4, 4, 4, 6, 4>となっている。
 これらの工夫に加えて、サイモンはサビ部分を足している。メロディも歌詞もドラマチックなこの部分は、6拍子や3拍子の変則小節を交えながら、<A・A'・B・C・D>へと立ち戻っていく。

というわけで、ポール・サイモンが讃美歌を大改造して作り上げた「American Tune」は、彼の巧みなテクニックで独自の楽曲になっている。しかし、サイモンの独創性が本当に輝いているのは、この曲の歌詞だと僕は思っている。

ユーチューブでMeg & Lucaの「American Tune」を聴く。Megのハスキーボイスによる独特なAmerican Tune。(注)ユーチューブは広告が多いので、僕の場合、広告が順次消えるまで30秒ほど再生ボタンを押さずに待ってから、始めるようにしている。自動再生のオプションをオフにしておかないといけない。「広告をスキップ」というボタンを押すのもありかも知れないが、どんな悪影響があるのかもわからないので、押さない。





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最終更新日  2022.04.23 04:15:22
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Re:音物語 American Tune 2.(04/22)   ranran50 さん
cozycoachさん、音楽にも造詣が深くていらっしゃるのですねぇ。

Amazing Graceは、軍人さんや警官、消防士の方々のお葬式では必ず流れますよね。

わたしもAmazing Graceは大好きで、いろんな人のバージョンを聴きましたが、わたしが一番好きなのは、Il Divoのものです。

携帯電話に入れてあって、運転中によく聴いています。

メンバーの一人がコロナで最近亡くなってしまって、もう4人で歌うのを見ることは出来ないのだな~と思うと、聴くたびに涙が出そうになります。

https://www.youtube.com/watch?v=GYMLMj-SibU&ab_channel=IlDivoVEVO

実は、わたし、小中学生の時Rod Stewartが大好きで、生まれて初めて一人で言ったコンサートも彼のコンサートだったのです。

Amazing Graceを歌ってるのを知らなくて、聴いてみましたが、あまり悲しい感じではなくて、良いですね~。教えてくださってありがとうございます。

(2022.04.25 15:16:32)

Re[1]:音物語 American Tune 2.(04/22)   cozycoach さん
ranran50さんへ

>音楽にも造詣が深く

音楽好きなだけで素人です。音楽に詳しい人が読んだら、何を馬鹿なことを書いてるんだ、こいつは、と思うでしょうね。でもね、最近は居直りまして、自分の思ったことを書くことにしてます。

Il Divoというグループはイタリア人のグループかと思ってたら、なんだ、フランス、スイス、スペイン、アメリカですね。コロナで亡くなったのはスペイン人のバリトン、カルロスですか。残念なことです。リンクのAmazing Graceは途中でオペラ風になりますね。驚き!

Il DivoはCarusoという曲で聴いたことあります。なかなかのできでした。この曲はイタリア人の書いたとても感傷的な曲のようですが、一時とても嵌りました。
https://www.youtube.com/watch?v=bOKi0inHsiI

Rod Stewartのバージョン、聴いてくださり、ありがとう。

しかし、小学生の時にRod Stewartが好きとは、かなりませてたんですね。一人でコンサートに行くというのも大胆ですね。そんな小学生がなんでIl Divoに変心しちゃったんでしょうね。ジャンルとしては全く違いますね。Rod StewartのバージョンもArethaのバージョンもIl Divoとはまったく違う泥臭い音楽です。まあその日の気分でどちらもいいかな、と思います。 (2022.04.25 18:37:15)

Re[2]:音物語 American Tune 2.(04/22)   ranran50 さん
cozycoachさんへ

わたしは3姉妹で、一番上の姉とは8歳、下の姉とも6歳離れているので小学生の時には、姉の影響でおませな音楽を聴いていました~。

ロッド・スチュワートは、何かのTV番組んでみて、ハスキーボイスにやられました~。コンサートに初めて一人で行ったのは、小学生の時ではなくて、中学生になってからですよ~。

一緒に行ってくれる人が誰もいなくて一人で行きました~。

私は、日本も、アメリカも、イギリスも、イタリアも、韓国も、いろんな国の音楽が好きです。

Il DivoのCarusoは素敵ですよね~。Il Divoは、歌を聴いていると、シアターに行っているような気分になれて好きです。

嵌ったのは、年上のお友達がプレゼントしてくれたCDを聴いてたら好きになりましたよ~。イタリア語、まったくわかんないのですが、アンドレア・ボチェッリも大好きですよ~。 (2022.04.26 15:32:44)

Re:音物語 American Tune 2.(04/22)   cozycoach さん
ranran50さんへ

なるほど、三姉妹で相当歳の離れたお姉さんの影響を受けたわけですね。僕の子供の頃は、中学生で一人でコンサートに行くのはかなり勇気のいることでしたよ。ちなみに、僕が保護者なしでコンサートに行ったのは多分大学に入ってからです。森山良子。ざわわざわわ~。

Caruso、知ってたんですね。Il Divoのファンだから当然なのかもね。Carusoはイタリアのシンガーソングライター、Lucio Dallaの名作で、大オペラ歌手のEnrico Carusoに捧げたものだそうです。DallaがSorrentoのあるホテルに泊まった時、偶然にもCarusoがかって滞在したのと同じ部屋に泊まったとかで、オーナーからいろいろ話を聞いて、それをもとに書いたとか。Dallaは2012年に69歳で心臓発作で死んじゃいました。いろんな名曲の背景にストーリーがあるのは、面白いです。

ボチェッリのCDは僕も昔買いました。日常会話のイタリア語の抑揚は大好きです。ああいうメロディックな会話をしているからイタリア人は恋に落ちやすいんでしょうか、なんて馬鹿なことを考えます。 (2022.04.26 17:25:27)

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