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カテゴリ:思うこと
■エピソード5 壮絶!「サバ煮帝国の逆襲」編
その日の弁当もサバ煮であった。計算によると、ほぼ2.5日に一度、サバ煮の日がくるようだ。当時サバは安かったし、美味しいからね。 だがそれをあまり快く思っていない男が一人いた。いや、大変に不快なのであった。 T本は弁当の蓋を開けると、「ばばぁ、殺すぞ!」とはっきり声に出した。 「ま あ、まあ、オカズを分けるからさ。こらえてくんさい」とK山と私がなだめたが、怒り心頭に達しているT本にはその声が耳に入らない。そして弁当に蓋をする と、いきなり勢いよく振り始めたのである。まるで、いい女にカクテルを頼まれて、いいところを見せようと力の入ったバーテンダーのように。(シェイク、シェイク、シェイク、ベイベー♪ アライちゃーん。)(←※この名前が気になる人はず~っと以前の「笑談・隠し蓑事件」の記事参照)
「今日はいらん。食わん。このままぐちゃぐちゃにして返してやる~!」 T本が涙目になっているのを見て、われわれはそれ以上なにも言えなかった。
翌日は、サバ煮ではなかった。サバの塩焼きであった。 なるほど、おばちゃんは趣向を変えてみたのね。味噌煮がお嫌いな方がいるようだから、今日は塩焼きにしてみました。ルンルン! ・・・って、素材同じじゃん(笑)。でも、その努力は大いに認めてあげたい。 だがしかし、それはT本の怒りを増幅させただけであった。 「なめとんのか、わりゃ~!」と、とても下品な言葉にそれはみごとに表現されている。 再び、弁当箱シェイクを始めたT本の後ろ姿が、ふと哀れで、根気よく続けるさまがふと狂気じみていた。(T本の好きな作家・織田作之助の表現を拝借) はっきり言えばいいのである。「おばちゃん、おれサバは苦手だから、他のおかずにしてください」と。 だが、ブスのババアにお願いをするなんて、T本の美意識(?)が許さない。あくまでも徹底抗戦である。食い物の恨みは恐ろしいのである。 (しかし、この犯人が誰なのか、おばちゃんにはわからないのだから、職場の雰囲気上あまりよろしくないなと、私とK山は思っていた。) 翌日、今度はサバのフライである^^; (2.5日に一度のサバの日の統計がなんだか狂ってきているようである。) おばさんも徹底抗戦のつもりらしい。 「おい、やっぱり少し食べておかないと、体がもたないぞ」 K山が忠告した。T本は振りかけた手を止め、しばらく考えた。 「どうする?」と私が訊いた。 「う~ん。サバだけ残すよ」 T本は箸を取って、ぼそぼそと食べ始めるのであった。 それはついに敗戦を認めた男の姿であり、ふと哀れで、老人じみて悲しかった。 ------------------- う~ん。まだエピソードが残っているので、今回では終われないのである。しかもそれはテーマに最も密接な話なので(ホントかよ)、もう一回続けますね。
次回・最終話「相互監視の恐怖政治体制かよ!」編に続く。
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最終更新日
2010年04月18日 19時22分24秒
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