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2019.08.17
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カテゴリ:ばぶさん童話

王様の新しい服 2019 The Emperoe`s New Suit  第2回 (/3)

 

 

原作 ハンス・クリスチャン・アンデルセン  

朗読台本  脚色 曵田原 宏 

 

 

 

大臣は盛んに眼鏡を動かして、

何もないはた織り機を隅から隅までじっくり見ました。

デブとノッポの詐欺師は思わずニンマリ。 口を揃えて言いました。

「そのことばをうかがえて」

「ありがたき幸せです」

「それでは、王様にもっとお解りいただく為に、

布について、さらに細かくご説明申し上げます。」

デブの詐欺師はからっぽのはた織り機の前で

滔々としゃべり始めました。

このあたりが特に色が濃いだとか薄いだとか、あのあたりは、

リズミカルな模様が二つの曲線になって愛を語り合っていますだとか。 

実に事細やかに説明するのです。

大臣は吹き出てくる額の脂汗を拭いもせず

その説明を一言も漏らさず聴き取りました。

なぜなら、お城に戻ってもう一度

全く同じことを王様に報告しなければならないからです。

もしここで一言でも聞き漏らしたり聞き違えたりしたら

《…さては大臣には布が見えなかったな…》

と王様に気づかれてしまいます。

そうなっては大変だと大臣は聴き取った説明を

最初っから最後まで丸ごと王様に報告しました。

 

その次の日、詐欺師たちは「材料がもっと必要です」と申し出ました。

けれど今度もやっぱり、絹糸も金の糸も一本も使わないで

みんな自分たちのカバンの中にしまい込みました。

そしてからっぽのはた織り機の前で

カラッカラ ポシャー トントンクリック

と布を織るふりをし続けました。

それから間もなく王様は念の為もう一人使いを出しました。

こんどは若さバリバリの役人頭を使いに選びました。

この人も年寄りの大臣と同じくらい「正直で真面目」です。

若い役人頭に下された命令は、

『布の仕上がり具合』と『完成する日にち』を調べてくることでした。

しかし役人頭が目にしたものは、

やはり からっぽのはた織り機だけでした。

背伸びをしたり腰をかがめたり頭を左右に傾けたりして

何度も見ようとしましたが・・・、

ダメです。

どうしても空っぽにしか見えません。

 

デブの詐欺師は何もない布を両てのひらで掬い上げ

愛おしそうに目を潤ませうっとりと布に語り掛けます。 

「ほぉら、こちらの王様の偉さにぴったりの布でございます。

この色艶は王様の健康と長寿の証。

くっきりとした模様は王様の聡明さと潔癖さの象徴。

そよ風のようなふんわりとした肌ざわりは王様のお人柄そのもの。

・・・おや?どうなされたのです?もしかしておきに召さないとか?・・・」

《うぅ~。私は馬鹿ではない。本当は見えているはずなのだ。

これはきっと、自分にふさわしくないちっぽけな仕事ばかりを

朝から晩まで、うんざりする程させられているからこうなるのだ》

役人頭はあたかも布が見えているように胸を張って言いました。

「大変見事な布だ!

色合いも美しいし…模様も素晴らしい。

私はこれほどの布を見ることができてとても嬉しいよ!」

役人頭はお城に戻ると王様にこう報告しました。

「たいへんけっこうな 申し分のない 布 でした。」

街の人々は口を開けばその珍しい布の噂ばかりです。

話はどんどん盛り上がっていきます。

こうなっては王様も自分の目で確かめずにはいられません。

日に日にその思いは強くなる一方です。

けれども肝心の布はいつまでたっても織り上がってきません。

これ以上は一日たりとも待っていられないとばかりに王様は

65人の家来を引き連れ、

二人のずるがしこい詐欺師の仕事場に出向きました。

カラッカラ ポシャー トントンクリック 

カラッカラ ポシャー トントンクリック

お供に連れて行った家来たちの中には、一足先に布を見に行かされた

年寄りの大臣と役人頭も含まれていました。

年寄りの大臣ははた織り機を指さすと

眼鏡をずり上げ顔を真っ赤にして声を張り上げ言いました。

「さぁ皆さん、どうです、よくご覧ください。

我らが王様にぴったりの、たいそう立派な布でございます。」

役人頭も胸を張り反身になって真顔で言いました。

「王様、いかがなものでしょう。

この布の色合いや模様をお気に召しましたでしょうか?」

二人ともほかの家来たちには「当然布が見えている」と

思い込んでいましたので真剣に言いました。

ところが王様は心の中で叫びました。

《なんだぁこれは?何もないじゃないか!》

ああ——、これこそが王様の一番恐れていたことでした。 

自分は王様にふさわしくないのだ。

明らかに自分は馬鹿なのだ。もう絶対間違いない。

王様が王様でいられなくなるなんてとても耐えられません。

激しく思い込むと途端に膝がガクガク震えそうになりました。

「ふむ、まさしくそうであるな。

この布が素晴らしいのは予も認めるところであるぞ。うふ~む」

布が見えていないということを知られたくなかったので、

眩しそうに目を細め、いかにも満足そうに何度も頷いて

からっぽのはた織り機を眺めました。

家来たちは王様が見ているよりももっと熱心に見ました。

けれどもどう頑張っても何も見えてはきません。

しばらく続いた沈黙にたまりかねた家来の一人が

「やんや やんや、おみごとです」 

と叫びました。

その声をきっかけに他の家来たちも口々に

「素晴らしい」 「これは美しい」 「鮮やかなものです」

「王様この布で作った立派な服を、近々行われる

パレードの時にお召しになっては如何でしょう。」

「これこそは王様にふさわしい品格です!」

 

王様は、二人の詐欺師に『王国特別機織り士』の称号を与え、

沢山の褒美を与えることを約束し、お城に還っていきました。

 

いよいよパレードの行われる前の晩、

詐欺師たちはさも熱心に働き続けているように見せようと、

ロウソクを二十八本も灯しました。

街の人々は詐欺師の仕事場を窓越しに覗いて、

王様の新しい服を仕上げる為に彼らはあんなにも忙しいのだ、

と思わずにはいられませんでした。

                        (つづく)






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最終更新日  2019.08.17 00:41:55
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