花屋な日々

今日はドタバタの日曜日。

なーぜー お客さんて集中するの～

急ぎの高額花束が２件入って焦っているときに、「今すぐ！」系の花束が入って、時間をくれといったら 待てないと言うので、仕方なく断った。
貴重な三千円が～

お互いのために予約しようよー

私だって断りたくないけど
お客さんだって断られて困るでしょうに

そしたら「じゃあ自分で作るから花とラッピング用品を売ってくれ」と言うので売ったけれども、
いやいやいや、自分で作る時間あるなら、待ってたほうがよかったかもよと内心思った。

花をやってた人ならともかく、
「花束なんて私だってすぐ作れるわ！」なんてナメたら後悔するぜ、
ホント、素人さんが思うより、花を組んだりラッピングしたりするのって、慣れない人には簡単じゃないと思うよ、

すぐできないなんておかしいわ！くらいの勢いだったけど、

自分でやってみてまぁ納得してくれたらいいけど。

誰でもできるけど、
きれいに仕上げるにはやはりコツがいるぜ。

そんなに急いでいるなら、事前に電話一本くれたらよかったのに、と、
お客さんが自身でやるという不安にさいなまれる。

まぁでも仕方ない。
みんな急いでいるなら、早いもの順なのは当たり前で。
割り込みはできんのよ、たとえ車を待たしていようが、どんなに急いでいようが。



怒濤のラッシュが過ぎて、あひーっ、て休憩してたら

暇人N氏がやってきた。
基本毎日来る。日に２度や３度は当たり前。


シルバー人材センターに登録していて、週に３日働いていたN氏。
今回の脳梗塞で片目を失明したことで、実質仕事を辞めざるおえなくなったらしい。

本人はやる気まんまんだったのに、なんとも慰めづらい。

「仕事がなくなって俺もいよいよ暇人だな」

「あらよかったじゃん、これからがホントの悠々自適ってやつじゃないの？」

「やることがねーべや」

「やったぁ、じゃあこれから毎日私にお弁当屋さんでお昼ご飯を買ってくるという任務を与えよう。あぁあとそれからさ、ほら、裏に売れ残ってるコスモスあるじゃん、あれもって帰って植えてよ。来年は種がこぼれてたくさん増えるぜ」

「コスモスか」

「毎週日曜日はキーパーの水かえをやるから手伝いにきてちょ、閉店時間には花を全部店内にしまうの大変だから一緒にやってよ、もうNさんはさー、年金たんまりもらってるんだからお小遣い稼ぐ必要もなかろうて。今もらってる年金、私の給料よりはるかにいいからね」

「小遣いも必要だけどなー」

「何いっちゃってんの、よしわかった、現物支給だ」

「人使い荒いな」

「いーじゃん、暇潰しにはなるべ」



そんな会話をして。


N氏は、片目を失明した以外どこも悪くなく、薬を飲んで普通に生活している。
ただ、シルバー人材センターの雇うほうにしてみれば、
何かあっては大変という責任と、
人材センターに登録して仕事にあぶれている人はたくさんいるわけなので
人の入れ替えには抵抗ないんだろう。

でも 知ってる。
老人は
特に男は

仕事を失うだけで 生きる気力を失うものだ。

実際N氏は、それから少し痩せた。


「ねー、今うちのベランダにさ、ミラクルフルーツの枯れた木と、シクラメンの枯れた鉢が結構あるんだけど、今度持ってくるから処分してくれる？うち、庭がないから土が捨てられないじゃん？Nさんちの畑に 土 捨ててくれないかなー」

「おぅ、いいよ、いつ？」

N氏の目が輝く。

何が用事を頼まれる、頼りにされるということによってやる気を出す。




亡くなった父が、以前仕事を辞めたとき
毎日くさくさネガティブに過ごす父に
私は何度も叱咤激励をしたのだけど

あれは逆効果だったと今でも後悔している。

もっと色々用事を頼んだり、頼りにしたり、悩みを相談したりすればよかった、と今となっては思う。


人は誰だって、必要とされたいから。


そんなことを、父が亡くなってだいぶ経ってから気づいた。



だからN氏には あれこれ用事を頼んだりしてる。

N氏はまんざらでもなさそうにホイホイやってくれる。


男が仕事を失うのは、きっと私なんかが考えるより ずっとずっと 心に穴があくんだろう。



枯れた植物の処分は今までもお願いしていたけど、
今度からもう少しハードルあげて、
水かえの手伝いや おつかいも頼んでしまおう。

「なんて人使いが荒いんだ！」って思われるくらいがきっとちょうどいい。

断られたら嘘でもごねる。
えー！Nさんがやってくれないんじゃ困るー！
と
大袈裟に嘘でもごねる。



私は私で
父に出来なかった罪滅ぼし みたいな部分もあり。







人は 必要とされている という気持ちだけで
前向きに生きていけるものだと なんとなく 思うんだ。。。