就農してからの必須アイテムのひとつに「刈払機」がある。
地元の皆さんが、バリバリとエンジン音をあげ、シャリシャリと草を倒していく姿は、いかにも職人芸、かっこいいの一言に尽きる。
( 持つ所にもいくつかの種類がある)
農業とは科学であって、決して文学ではない。
機械、化学、物理、生物、技術・・・、文系人間ファーマータナカにとっては、実は一番苦手な分野であるのに、そのことを全く無視して農業界に飛び込む所作自体が正しく無知蒙昧な文系的行動、まさにおバカキャラであった。
ファーマータナカは機械というものは、人間を見ると確信している。
(この表現自体がいかにも文学的だ)
相手を見て、なめてかかったり、意地悪をするのである。
刈払機には、「チョーク」なるものがある。
刈払機のエンジンを始動させる時に、「チョークを引く」のであるが、その瞬間、既に機械に負けているのである。
何故なら「うまく始動してくれるかな。かからなかったらイヤだな。」といやな予感と不安と焦りと絶望感が頭をよぎり、恐る恐るリコイルスターターを引くのであるが、やはりなのである。
そもそも理屈が全くわかっていない。
「チョークを引く」と言うが、引いてないぞ。「閉」の方にレバーを移動するのだから「チョークを閉じる」ことなのか。
チョーク弁(Choke valve)とは、
・・・内燃機関(エンジン)において燃焼させる燃料の混合比を一時的に高めるように調節する装置のことである。単に「チョーク」とも呼ばれる。燃料の混合比率を高めることで、エンジンの始動、特に冷間始動を容易にする。
広義でのチョークの目的はいずれの方式でも燃料の混合比率を高めることであり、具体的には燃料の供給量を増やすという方法で目的を果たしている。狭義のチョーク弁の場合には目的を果たす為にエンジンが吸入する空気量を絞って少なくし、それが結果的に燃料の供給量を増大させるという方法を採っており、その様子から「息苦しくさせる」あるいは「(通路などを)ふさぐ」といった意味を持つ「チョーク(choke)」と呼ばれるようになっただと。
そうだったのか。刈払機の場合は、空気の量を少なくする事で、燃料の混合比を高めてエンジンが冷え切っている時(冷間時)や外気温が低い時など、エンジンを始動しやすくするという理屈らしい。
しかし、その手加減というものが、さっぱりわからない。
プライマリーポンプを押す回数、アクセルの微妙な加減、チョークの戻し加減、リコイルスターターを引くタイミングと強弱と回数、これらの変数の組み合わせは天文学に無数にあり、正解を見つけるのは初めから至難の業、そう思うと気が動転して、ドツボにはまるパターンに陥ってしまうのだ。
大体2サイクルエンジンと4サイクルエンジンとはどういうことなのか?
・・・2サイクルエンジンとは、ピストンが2ストローク(周期)の運動、すなわち、クランクシャフトが一回転する間に掃気・圧縮・燃焼・排気の1サイクル(行程)を完了するもので、4サイクルエンジンとはピストンの4ストロークの運動、すなわち、クランクシャフトが2回転する間に1サイクル(周期)の作用、すなわち吸入・圧縮・燃焼・排気が行なわれるだと。
(なんで掃気と吸入なのかと次から次へと疑問が出てきて限が無い事この上ない)
又、何故2サイクルエンジンにはオイルがなく、混合油といってガソリンに2サイクルエンジンオイルを25;1とかで混ぜて使うのか?
・・・2サイクルエンジンは、吸気と圧縮を同時に行う構造で、気化したガソリン(とオイル)をピストンの下に導入される構造になっていて、ピストンの上も下も気化燃料が通る為、クランクケース内は4ストロークでいう所のエンジンオイルで満たす事が出来ず、気化燃料に潤滑用のオイルを混合する必要があるのだと。
理屈がかろうじて判る事と、刈払機が一発で始動する事に明確な因果関係は存在しない。
やはりあとは祈るしかない。
機械がせせら笑っているのが見える気がする。
「お願いだから今日は一発でかかってくれ!!」