214684 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

佐遊李葉  -さゆりば-

佐遊李葉 -さゆりば-

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

キーワードサーチ

▼キーワード検索

プロフィール

vyゆりyv

vyゆりyv

カレンダー

カテゴリ

カテゴリ未分類

(0)

露野

(129)

心あひの風

(63)

孤舟

(59)

かるかや

(68)

蒼鬼

(253)

光明遍照

(53)

山吹の井戸

(52)

きりぎりす

(217)

遠き波音

(50)

羅刹

(193)

コメント新着

vyゆりyv@ Re[1]:羅刹 -193-(10/05) 千菊丸2151さん いつもお読みいただいて…
千菊丸2151@ Re:羅刹 -193-(10/05) 是非このブログを残してください。 ゆり様…
vyゆりyv@ Re[1]:羅刹 -192-(09/14) 千菊丸2151さん だらだら更新に最後まで…
千菊丸2151@ Re:羅刹 -192-(09/14) 漸く完結しましたね。 ちょっと後味が悪い…
vyゆりyv@ Re[1]:羅刹 -190-(09/08) 千菊丸2151さん 花山院皇女は惚れた弱み(…

サイド自由欄

QLOOKアクセス解析
2008年07月29日
XML
カテゴリ:蒼鬼
 そう言うと、日蔵は手に持っていた数珠を揉みしだきながら、低く響く声で真言を唱え始めた。

 鬼はしばらく身をすくめながらもなお日蔵の足元に蹲っていたが、やがて真言の威力に耐えかねたのか、よろよろと立ち上がった。そして、日蔵の方へゆっくりと頭を下げると、そのまま日蔵の脇を通り過ぎる。日蔵が後ろを向き直ると、鬼は巨大な身体を折るように肩を落とし、痩せた足を引きずって、暗い山道を降りて行くようだった。

 その後ろ姿を見つめながら、日蔵は回向を続けていた。地獄へ落ちたという女の苦しみを少しでも和らげるために。

 でも、日蔵にはわかっていた。女が、決して救われはしないことを。自らその心を魔物に奉げたという女の罪は重い。その魔物との愛欲に穢れ果てた魂を、地獄の炎で清めるには、一体どれほどの月日がかかることか。それは、永遠にも等しい時間であろう。

 そして、日蔵は去っていく鬼の蒼い後姿を見ながら思った。

 人間への愛憎の想いに狂わされた者は、やがて蒼い鬼……紺青鬼になるという。その蒼さは、女への執着と満たされぬ愛欲の想いの化身。あの鬼は、これからもずっとその蒼い炎に焦がされながら、苦しみ狂わされ続けていくのであろう。おそらく、永遠に……。

 日蔵の目の前で、木立の暗がりを照らしていた蒼い光は、次第に小さくなっていった。光の中心にあった暗い影も、やがて薄れて見えなくなった。

 そして、小さな鬼火に姿を変えた蒼い鬼は、吉野山の漆黒の闇の中へと消えて行った。

                      (了)


にほんブログ村 小説ブログ 歴史・時代小説へ
↑よろしかったら、ぽちっとお願いしますm(__)m





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2008年07月29日 13時55分51秒
コメント(6) | コメントを書く
[蒼鬼] カテゴリの最新記事



© Rakuten Group, Inc.