羅刹 -43-
数多い子供たちの中でも、父は能季のことを特別に可愛がってくれているようだった。 晩年に生まれた末っ子だからだろうか。それとも、亡くなった時には大そう嘆き悲しんだという能季の母への愛情からだろうか。 年の離れた兄たちは妻の元に通ったり母方から受け継がれた別邸で暮らしていたりするから、今この堀河殿に住んでいるのは父と能季だけだった。 父亡き後は、この屋敷は能季に受け継がれることになっている。父の持つ荘園や所領も、すでに幾つかは能季の名義にされていた。 母方の後ろ盾の弱い能季のことを気遣い、将来も十分裕福に暮らしていけるよう心配りしてくれているのだ。 朝廷での官位だって、権門出身の母を持つ兄たちに劣らないように、様々に働きかけてくれている。 おかげで、能季は父が昔味わったほど、兄弟の間の葛藤を味わわずに済んでいるのかもしれなかった。↑よろしかったら、ぽちっとお願いしますm(__)m