『アメリカ人の見たゴジラ、日本人の見たゴジラ』2
図書館で『アメリカ人の見たゴジラ、日本人の見たゴジラ』という本を、手にしたのです。横書きで論文調の構成ではあるが・・・何やらマニアックであり、面白そうである。【アメリカ人の見たゴジラ、日本人の見たゴジラ】 池田 淑子編著、大阪大学出版会、2019年刊<「BOOK」データベース>よりゴジラはついに星になった(ゴジラ座、2018)。なぜ半世紀以上も日米で愛されているのか。ゴジラを愛してやまない日米の6人の研究者がその問いに挑む。<読む前の大使寸評>横書きで論文調の構成ではあるが・・・何やらマニアックであり、面白そうである。rakutenアメリカ人の見たゴジラ、日本人の見たゴジラ「第3章」でアメリカでリメイクされたゴジラ映画を、見てみましょう。p52~55<第1節 序論> 2014年7月、初代『ゴジラ』(1954)のリブート版『GODZILLAゴジラ』(2014)が公開されてからアメリカでは再びゴジラブームが巻き起こった。 当時、「手がつけられないほど勢いに乗った」(unstoppable)次期大統領候補であったトランプ氏をGodzillaのようだと語ったメディアは、その年の冬に北米を襲った記録的な大寒波を“Snowzilla”、過去最大のエルニーニョ現象を“Godzilla EL Nino”と呼んだ。ゴジラという名前のレストランや伐採サービスを行う会社が現れたかと思うと、最近新しく発見された天体はNASAとその研究チームに「ゴジラ座」と名付けられた。 このようにGodzillaという語は、アメリカ文化の一つの基準となっている。なぜアメリカ人はGodzillaにこれほど愛着を示すのだろうか。本章は、この問を初代のゴジラ映画の需要にさかのぼり、考察を試みるものである。 特に、初代『ゴジラ』(1954)のゴジラ表象は、象徴として多義的ではあるものの、当時の日本人にとっては、明らかにアメリカの代理表象でもあり、反戦・反核・反米の色彩が強いものである。にもかかわらず、当時、大部分の国民が原爆投下の正当性を信じていたアメリカで、なぜゴジラは広く受け入れられたのだろうか。第1章と第2章で論じられた当時のGodzillaのニューヨークへの軟着陸に関する解説を基盤に、本章ではさらにこの問いの探求を進めたい。 初代『ゴジラ』(1954)は、アメリカでどのようにアメリカ版Godzilla, King of the Monsters!(『怪獣王ゴジラ』)(1956)となったのだろうか。どのように新しい映像が付加され、編集され、修正され、吹き替えられ、変容され、そしてそれが宣伝され、受容されたのか。 また、第二作『ゴジラの逆襲』(1955)、第三作『キングコング対ゴジラ』(1962)および第四作『モスラ対ゴジラ』(1964)もアメリカ版においてどのような修正・編集が加えられ、受容されたのか。本章は、初代作品をはじめとする昭和シリーズ前半4作品の受容について相対的に検討したい。また、それらの作品群を同時代の核や怪獣を描きヒットしたアメリカのサイエンス・フィクション映画の作品群と比較・対照する。 そうして縦横的に、「怪獣王」について歴史的・政治的・社会的・文化的な考察を深め、当時のアメリカ社会におけるゴジラ表象が担う文化的な役割を探求し、その後のゴジラ映画の受容を分析する手がかりとしたい。<第2節 Godzilla, King of the Monsters!『怪獣王ゴジラ』(1956)、『ゴジラ』(1954)>■2.1 辛辣な批評と記録的なヒット アメリカ版ゴジラの制作・配給の鍵を握るのは、ボストンを拠点にした配給会社のジョセフ・レヴィーンである。東宝から映画『ゴジラ』(1954)の版権を購入したジュエル・エンタープライズのリチャード・ケイとハロルド・ロスがレヴィーンのもとに映画を持ち込んだのである。彼は、映画業界では、マーケティング戦略においてパイオニア的存在であった。映画市場をテレビ番組に普及させたのも彼である。 アメリカ版のタイトルはGodzilla, King of the Monsters!であり、日本では文字通り『怪獣王ゴジラ』と訳されている。この『怪獣王』の監督にアメリカ人のテリー・モースが採用されたのである。 第4章で、デイビッド・カラハン氏が詳細に説明するように、『怪獣王』は、アメリカでは、まず大都市の主要な市場で上映され、それから次第に小さな市場で、別のホラー映画と同時上映された。その後、全国放送もしくはローカルなテレビ局で放送されたのだが、1950年代、1960年代、1970年代、1990年代に繰り返し放送されている。また、1980年代以降、VHSやDVD版が利用できるようにもなった。 後に、特殊効果や音楽についてポジティブに評価する記事が多数みられたが、当時の映画批評は、大部分が辛辣な批判だった。『アメリカ人の見たゴジラ、日本人の見たゴジラ』1:はじめに