対中最新情報(2022,9,06)
尖閣諸島事件とそれに連動するようなレアアース禁輸があって以降、以下に示す情報収集を思いつき次第に試みてきたが・・・・重複、欠落などあったりするので、この際、最新情報を一括して並べてみました。それだけ、尖閣諸島事件が衝撃的であったわけであるが・・・この事件は日本政府が対応を間違ったというよりも、むしろ中国政府のオウンゴールであったのかもしれません。少なくとも、それまでは比較的冷静だった大使を嫌中に変えてしまったことは確かです。<対中最新情報(2022,9,06)>・孔子批判10(含:少数民族ニュース、経済摩擦)・中国のレアアース統制9(含:レアアース関連ニュース)・資源保護関連ニュース・テクノナショナリズムに目覚めた9(含:空洞化/海外進出情報)・様変わりの人民解放軍9(含:中国包囲網ニュース)・「悪の枢軸」関連ニュース・吉岡桂子記者の渾身記事15・中国、韓国の原発事情*********************************************************************ロシアの極東での軍事演習に合流した中国は、日本にとって要注意であるが・・・中国の内政は綱紀粛正で揺れているようです。中国高官、謎の急死相次ぐ 党大会前に「反腐敗」強化で重圧かより中国でこのところ、原因のはっきりしない高官の急死が相次いでいる。秋の第20回共産党大会を前に綱紀粛正のため「反腐敗闘争」が強化され、汚職の嫌疑をかけられた党・政府幹部が心理的重圧から自殺に追い込まれた可能性がある。(時事通信解説委員・西村哲也)■党規律検査委の恐怖 7月上旬から、河北省の副省長(副知事に相当)と公安庁長(警察本部長に相当)を兼ねていた劉文璽氏、甘粛省党委員会の周偉秘書長、遼寧省大連市副市長の曽兵氏が突然亡くなった。劉氏と周氏は次官級の高官だった。 また、党中央規律検査委は同月28日、肖亜慶工業・情報化相を規律・法律違反の疑いで取り調べていると発表。翌29日付の香港各紙によると、肖氏は連行される際に自殺を図ったが、未遂だったという。 天津市では4月に廖国勲市長(閣僚級)が急死。そのほか、上記の劉氏の上司に当たる河北省党政法委の趙革書記についても、5月以降、死亡説が流れている。 廖、劉、周の3氏はいずれも公式メディアで「病気のため、不幸にも他界した」とされている。過去の例から見て、「不幸な他界」は自殺のケースが多い。 社会主義体制の中国では、共産党の規律検査委が官僚の不正摘発で警察や検察より大きな超法規的権限を持ち、しかも、政治的思惑で動くことが多いため、非常に恐れられている。その調査対象になった高官が絶望して自ら死を選ぶことはたまにあるが、これほど立て続けに死者が出るのは珍しい。■非主流派に打撃 河北省の警察トップだった劉氏は今春、中央規律検査委の公安省担当幹部から河北省に転任したばかり。習近平国家主席(党総書記)は自らの権力基盤を強めるため反腐敗闘争で警察の粛清に特に力を入れているが、劉氏の異動は形式上、栄転・昇進だった。 劉氏が死亡したのは7月3日で、習派の王小洪公安次官が公安相に昇格した9日後。公安相を退任した非習派の趙克志氏は元河北省トップ(党委書記)で、同省に一定の影響力を持つとみられる。習氏最側近の一人といわれる王氏の権力強化が反腐敗の対象拡大につながったとも考えられる。 甘粛省指導部の幹事長に当たる要職にあった周氏も6月に就任したばかりだった。市レベルの幹部からの抜てきで、省党委書記の尹弘氏から高く評価されていたようだ。5月には同省の党大会代表(代議員に相当)に選ばれていた。 尹氏は長年、上海市政府で勤務。現最高指導部の一員である韓正筆頭副首相(党政治局常務委員)が同市長だった頃に市政府副秘書長、市党委書記だった頃に市党委秘書長を務めた。江沢民元国家主席派の中核を成す「上海閥」出身と思われる。 59歳という年齢と閣僚級ポスト2回のキャリアから言って、尹氏は党大会を機に閣僚級より上の「党・国家指導者」に昇進する資格があるが、自分が番頭役として重用した人物の「不幸な他界」は、尹氏にとって大きな打撃となった。*********************************************************************図書館で『エラい人にはウソがある』という本を、手にしたのです。パオロ・マッツァリーノという人・・・イタリア人のようでも、日本人のようでもあり胡散臭いのだが、孔子を茶化すところがええでぇ♪【エラい人にはウソがある 論語好きの孔子知らず】パオロ・マッツァリーノ著、さくら舎、2015年刊<「BOOK」データベース>より人間くさいダメおじさん孔子に共感をおぼえるか、軽蔑するか!?『論語』を素直に読めば、ヘリクツと強がりと負け惜しみばかり並べる孔子のポンコツぶりはだれにでも読み取れるはずなのに、孔子は偉人と刷り込まれている人たちには、孔子の真の姿が見えなくなってしまってるらしい。長年にわたって染みこんだ政治思想や道徳観、歴史ファンタジーによって『論語』の解釈は歪められてきました。そのため多くの日本人が『論語』を誤読し、孔子の思想の本当の価値をも見失っています。残念でなりません。本書は“ありのままの孔子”の姿をお届けします。<読む前の大使寸評>パオロ・マッツァリーノという人・・・イタリア人のようでも、日本人のようでもあり胡散臭いのだが、孔子を茶化すところがええでぇ♪rakutenエラい人にはウソがある 論語好きの孔子知らず第一章の基礎知識から・・・見てみましょう。p33~36<第一章 歴史的に正しい孔子と論語の基礎知識>■『論語』はありがたい!? 孔子はエラい!?『論語』をこどもの道徳教育に!『論語』で社員の仕事意識が変わった! こんなフレーズをしばしば目にしたり、耳にしたりします。書店でも、この手のキャッチフレーズが表紙に描かれた本が何冊も並んでいるのを確認しました。 なにやら一部の日本人は、『論語』には現代科学では解明できない、未知なる効能があると誤解しているようです。『論語』を水に読み聞かせながら凍らせたら、きれいなカタチの結晶ができるの? 『論語』牛に読んでやると乳の出がよくなる? すり傷・切り傷・やけどにおできがピタリと治る・・・ わけがない。 そこまでオカルト趣味でないにしても、『論語』にはありがたい教えの言葉が詰まっていて、『論語』の主役である孔子をエラい人だと信じている人は、学者や経営者のなかににもけっこういます。 だけど、『論語』を読んだからといって、道徳心や人間力が向上することを期待してもムダ。もしも『論語』にそんな効能があるのなら、中国はとっくのむかしに世界一の道徳国家になっていたはずです。 ところが現実はどうですか。現代中国社会は、道徳よりカネがものをいう格差社会の様相をますます濃くしていく感があります。孔子が目指した理想社会は、2500年たってもいっこうに実現のめどが立っていません。 2500年も同じクスリを服用しつづけても症状に変化が見られないなら、それは『論語』というクスリに効き目がないからだと、そろそろ気づいてくれないと困りますね。*********************************************************************2022.08.02ペロシ下院議長の行動はバイデン政権の政策に合致、その中心にはサリバン補佐官よりナンシー・ペロシ米下院議長が台湾を訪問、蔡英文総督と会談することで「ひとつの中国」政策に挑戦しようとしている。リチャード・ニクソン大統領が1972年2月に中国を訪問、国交を回復させる際に中国を承認、台湾は中国の一部だと認めたが、これを否定することを意味する。台湾の問題を内政と理解している中国政府は容認しない。 そこでアメリカと中国との間で緊張が高まり、アメリカ海軍は2隻の空母、「ロナルド・レーガン」と「トリポリ」を台湾の周辺へ派遣したが、それに対して中国はやはり2隻の空母「遼寧」と「山東」を台湾海峡へ派遣、その一方で中国軍は地上軍を沿岸へ移動させ、軍事演習も始めている。 ジョー・バイデン政権はペロシ米下院議長に対して台湾訪問のリスクを説明したが、ペロシは説得に応じなかったとされている。そのバイデン政権には極めて好戦的な人物がいる。国家安全保障補佐官を務めているジェイク・サリバンだ。 サリバンは2016年の大統領選挙でヒラリー・クリントン陣営の上級政策顧問を務め、ヒラリーが当選すれば国家安全保障補佐官に就任する予定だったとされている。ドナルド・トランプが大統領にならなければ、4年前に現在のような状態になっていた可能性がある。 トランプはアメリカ軍の情報機関DIAの局長を務め、バラク・オバマ政権がアル・カイダ系武装集団やダーイッシュ(IS、ISIS、ISILなどとも表記)を支援していたことを熟知しているマイケル・フリンを国家安全保障補佐官に据える。有力メディアがフリンを激しく攻撃した一因だ。NSC(国家安全保障会議)のCIA人脈からも妨害工作を受けたとされている。 サリバンは2019年10月、インタビューの中で中国を世界の脅威だと信じさせる「パール・ハーバー」的な出来事が必要だと語っている。これはネオコンが2000年の段階で主張していたことだ。 これはアメリカの情報機関が得意とする手口。例えば、1960年代前半にアメリカがキューバへの軍事侵攻を正当化するために計画した偽旗作戦「ノースウッズ」、あるいはイタリアで配下のグラディオを使い、1960年代から80年代にかけて実行された極左を装った爆弾テロを行なった作戦だ。 昨年3月15日にアントニー・ブリンケン国務長官とロイド・オースチン国防長官は日本を訪問、茂木敏充外相や岸信夫防衛相と会談した。その際にブリンケン国務長官は中国の「威圧的で攻撃的な姿勢」を批判し、オースチン国防長官は3月18日に朝鮮を威嚇している。アメリカ軍は朝鮮を「今夜にでも攻撃する準備ができている」と口にしたのだ。 3月18日と19日にはアメリカと中国の外交責任者がアンカレッジで会談している。アメリカ側の要請だったという。アメリカからブリンケン国務長官と国家安全保障補佐官のサリバンが、また中国からは中央外事活動委員会弁公室の楊潔篪主任と王毅外交部長がそれぞれ出席。その場でアメリカは中国を威圧しようとしたのだが通用せず、逆効果だった。この時、バイデン政権はロシアも恫喝しているが、これも通用せず逆効果だった。 アンカレッジ会談の4日後にロシアのセルゲイ・ラブロフ外相が中国を訪問、桂林で王毅外交部長と会談し、両国の同盟関係を世界に対してアピールした。その翌日に中国とロシアは貿易決済で自国通貨を使うようにすることで合意、つまりドル離れを確認している。 ペロシの行動はバイデン政権が進めてきた政策の延長線上にある。その中心にいるのはおそらくサリバンだ。*********************************************************************2021.10.28中国の台湾への軍事侵攻時期で指標となる2025年より台湾の邱国正・国防部長(国防大臣)は、立法委員会(議会)での答弁で、中国軍の能力について、「2025年には本格的な台湾への軍事的侵攻が可能になる」との認識を示した。そのうえで、目下、中国と台湾の軍事的緊張が過去40年間で最も高まっている、との強い危機感を示した。 中国による武力侵攻の可能性については、「中国が現時点で侵攻することは可能であるが、そうすれば、大きな代償を支払うことになる。しかし、2025年からであれば、代償が小さくなり、全面的侵攻が可能になる」と発言した。この邱の発言の背後には、米国軍指導部の最近の見方が大きく影響したのではないかと見られる節がある。米国軍指導部の内部では、近い将来において中国の台湾軍事侵攻の可能性はそれほど高くはない、との見方がある一方、米インド太平洋軍司令官デビッドソン(当時)が3月に示したように「今から6年以内に中国の台湾侵攻がありうる」との見方もある。最近の中国の台湾周辺海域での軍事活動を見ると、台湾防衛識別圏に侵入した中国軍機の数は昨年には380機だったのが、今年はすでに600機を超えている。 習近平主席は、10月9日の辛亥革命110周年記念式典において、共産党政権の悲願である「中台統一」については「必ず実現しなければならないし、必ず実現できる」と述べた。台湾独立を目指す動きを「祖国統一の最大の障害」として、独立志向の強い民進党政権を念頭に「台湾問題は純粋なる内政問題で、如何なる外部からの干渉も容認しない」と発言した。 これに対し、蔡英文総統は台北における国慶節の式典において、中国による軍事的脅威の増大を踏まえて「台湾人民が圧力に屈するとは決して思ってはならない」と述べたうえ、防衛力を強化し、主権を持つ台湾2300万人の自由と民主主義を守るとの決意を改めて表明した。そして、中国との間では「現状維持」のために対等な対話を行うべし、との従来の主張を強調した。*********************************************************************『アメリカは中国を破産させる』より「第2章 中国を破産させる」で、ファーウェイ戦争を、見てみましょう。p50~53<第1部 アメリカはファーウェイ戦争で勝利した> 2019年7月のワシントンはとくに暑かった。早朝から気温が上がり、午前10時前には30度を超していたが、その暑さのなかホワイトハウスに、アメリカのインターネット企業の首脳たちが呼び集められた。 ホワイトハウスの正門にあたるノースウェストゲートで検問を受け、徒歩でホワイトハウス構内に入ったインターネット企業の社長たちは、そのまま木立のあいだを歩いてホワイトハウス正門に立つ海兵ガードの出迎えを受けて、次々に中に入った。 午前10時、インターネット企業の社長や最高技術者たちは、ウェストウィングのほぼ中央部にある大統領の執務室、オーバルオフィスから廊下ひとつ隔てたフィッシュルームと呼ばれる会議室の大きなテーブルの席に、それぞれ腰を下ろした。 十分後、トランプ大統領が安全保障担当のボルトン補佐官、ポンペオ国務長官、それにCIAのハスペル長官を引き連れて入室し、短い挨拶のあと会議が始まった。 この会議の数日前、インターネット企業大手のグーグルが、中国政府のために情報システム開発に協力したことが明らかになり、アメリカ保守勢力から激しい批判を受けていた。インターネット企業の代表たちは、そういった問題をトランプ大統領が真正面からぶつけてくるのではないかと身構えていた。 トランプ大統領とボルトン補佐官、ポンペオ国務長官、ハスペルCIA長官などが説明し始めたのは、大きく言えばその問題に関りがあったが、直接的には違う問題だった。中国の通信先端企業ファーウェイが、中国解放軍の諜報機関の一部で、アメリカの安全保障に著しく害を及ぼしているという問題であった。 ワシントンではすでにファーウェイが、中国公安機関の一部として、アメリカに敵対する諜報活動をしていることは明らかになっていた。カナダが身柄を押さえたファーウェイの副社長の供述などからも、ファーウェイがアメリカにとって危険な存在であることは知られていた。この日の説明で明らかにされたのは、ファーウェイがアメリカ国内で行っている情報収集活動の実態と研究結果の盗用についてだった。 アメリカCIAやFBIの情報によれば、このところアメリカ国内で研究文書が盗まれる事件が頻繁に起きているが、ファーウェイの関係者が背後で糸を引いている。会議に出席した関係者の一人はこう言っている。「アメリカの有力な大学の研究所から、中国人や中国系の学者が最高機密の研究文書を手にしたまま消えてしまった、という話や、ファーウェイから研究費を受け取ってアメリカの研究所で最先端技術の研究をしていた、という事実が暴露されている。ファーウェイは中国の諜報機関の一部で、アメリカにとってきわめて危険な存在といえる」*********************************************************************2021.10.31最盛期の中国、衰退期を迎える前の10年が国際秩序にとって最も危険より ジョンズホプキンス大学の国際政治学者、ハル・ブランズ特別教授(Distinguished Professor、DP)とタフツ大学政治学科のマイケル・ベックリー教授は最近、外交専門誌「フォーリン・ポリシー」に、「衰退する(a declining power)中国が問題」というタイトルの記事を寄稿し「『トゥキディデスのわな』理論は実際のペロポネソス戦争の原因も正確に説明しておらず、発展軌道において既に頂点を極めており(peaking)やがて弱体化の危機に直面する中国の、現在の事情についても診断を誤った」と主張した。 両教授は「諸大国間の戦争は、それ以上の発展・拡大を期待できない新興国が、『挑戦の窓』を閉ざされる前に覇権国へ挑むことで起きる」とし「1914年に第1次大戦を起こしたドイツ、1941年に無謀と知りつつ太平洋戦争を起こした日本、今の中国は、どれも同じ状況にある」という見解を示した。 ジョンズホプキンス大学の国際政治学者、ハル・ブランズ特別教授(Distinguished Professor、DP)とタフツ大学政治学科のマイケル・ベックリー教授は最近、外交専門誌「フォーリン・ポリシー」に、「衰退する(a declining power)中国が問題」というタイトルの記事を寄稿し「『トゥキディデスのわな』理論は実際のペロポネソス戦争の原因も正確に説明しておらず、発展軌道において既に頂点を極めており(peaking)やがて弱体化の危機に直面する中国の、現在の事情についても診断を誤った」と主張した。 両教授は「諸大国間の戦争は、それ以上の発展・拡大を期待できない新興国が、『挑戦の窓』を閉ざされる前に覇権国へ挑むことで起きる」とし「1914年に第1次大戦を起こしたドイツ、1941年に無謀と知りつつ太平洋戦争を起こした日本、今の中国は、どれも同じ状況にある」という見解を示した。 すなわち、新興大国は、パワーが拡張し続ける時点では、中国のトウ小平が唱えた韜光養晦(とうこうようかい。目立たず、時を待ちながら力を養う)のように覇権国に対抗できる時まで「対決」を遅らせる。しかし成長が限界に突き当たり、覇権国と同盟勢力に包囲されて衰退期が目前の時期に至ると、新興大国は手遅れになる前に現在手に入れられるものを確保しようとして「戦争のわな」に陥りやすい。 ペロポネソス戦争史研究の大家だった故ドナルド・ケーガン氏(元イェール大学教授。2021年8月死去)が示したように、ペロポネソス戦争でも、新興アテネはスパルタとの海軍力競争で押されることを恐れ、戦争が始まる数年前から(覇権国)スパルタに対し攻撃的な行動を繰り返した。*********************************************************************2021.9.19塾の撤退次々、中国で異変 「格差是正」狙い、政府が受験産業にメスより 中国の共産党政権が過熱していた受験産業にメスを入れ、学習塾が相次ぎ教室を閉めるなど苦境にあえいでいる。背景には子供の負担軽減や、習近平指導部が目指す格差の是正といった狙いがあるが、教育は人々の人生設計にかかわるだけに波紋は大きい。(北京=林望)■教育費増、少子化に直結 焦り 北京大学など名門大学の附属中学が集まる北京市海淀区黄荘は、半径500メートルの範囲に100を超える学習塾がひしめく業界の最激戦区だった。塾がこんなに集まる場所はほかにないという意味で「宇宙の学習塾センター」との呼び名が生れたほどだ。 しかし、この夏、異変が起きた。軒を並べていた塾が相次いで撤退したのだ。 8月、大手学習塾が集まることで知られた高層ビルを訪ねると、カギがかかったガラスのドア越しに、壁や床が取り払われたがらんどうの教室が見えた。 ビル1階の案内所にいた係員は「このビルが受験産業のシンボルみたいになっていたから、オーナー側が退去するよう頼んだと聞いている」と話した。 異変を生んだのは、過熱する受験勉強に待ったをかけようとする政府の動きだ。中国共産党と中国政府は7月、「宿題と学習塾が義務教育段階の児童・生徒にもたらす負担のさらなる軽減について」と題する通達を出した。 学校の宿題以上に波紋を呼んだのは、学習塾への締め付けだ。通達は小中学生対象の塾の新規開設を認めないとし、既存の塾はすべて非営利団体として改めて登記させ、授業料も政府が監督するなどとした。(中略) 政権が介入に乗り出した理由の一つは、教育をめぐる問題が国家の未来を左右する「少子高齢化」の行方に直結するという焦りだ。 政権は15年に「一人っ子政策」の廃止を決めたが、その後も新生児は減少傾向が続く。若い世代の子を持つことをためらう大きな理由とされるのが、高額のマイホームと教育費だ。(中略) ■「効果一時的」親ら様子見も 一連の動きは、単に受験産業への「手入れ」にとどまらないとの見方も広がっている。 習指導部は8月17日の重要会議で「共同富裕」の実現を目指す姿勢を打ち出し、改革開放政策による発展の陰で広がった格差を埋めるため、富の再配分に注力するとした。(中略) ただ、大学入試のあり方や学歴偏重の就職事情などが変わらない限り、受験をめぐる構図は変わらないとの見方も強い。メディアやネットでは「料金が下がるのは結構なことだが効果は一時的」「家庭教師に人気が集まるだけ」といった声が広がり、保護者らは今後、改革がどこまで深まるのか様子見している感が強い。2021年9月2日中国のテク企業攻撃という習近平のギャンブルより 中国はこのところ、アリババ、テンセント、ディディといったテク企業への攻撃を強めている。多くの企業に対し、独占禁止法違反やデータの取り扱い規則違反などの理由で、50以上の規制措置が取られたという。中国が過去20年にわたり育成してきたテク産業は、本来、中国の繁栄を実現するとともに、米国の優越性に挑戦する基盤でもありうるはずである。 エコノミスト誌の8月14日付け社説‘Xi Jinping’s assault on tech will change China’s trajectory’は、中国による自国テク企業への攻撃の背景や目的につき、以下の諸点を指摘する。・ビジネスの大物を謙虚にさせ、規制当局に秩序のないデジタル市場に対するより多くの権限を与える。・共産党の青写真に沿って産業を再設計する。共産党は、これが中国の技術的優位を強め、競争を強化し、消費者の利益になることを希望している。・地政学的理由。米国の技術で作られた部品へのアクセス制限は、中国に半導体のような重要な「ハードテク」分野でもっと自立することが必要であると考えさせた。ソーシャル・メディア、ゲーム企業などの弾圧が、才能ある技術者やプログラマーを「ハードテク」のほうに振り向けることが期待できる。・デジタル市場は独占になりやすく、テク企業はデータを囲い込み、供給者を酷く扱い、労働者を搾取し、公衆道徳を堀り崩すという懸念。・中国のテクへの弾圧は党の無制限な権力の誇示でもある。 中国のハイテク産業の統制強化は、今後の中国の経済を占う上で極めて重要なポイントである。この統制強化は、一時的なものではないと考えられる。共産党の指導的地位を確実にするための政策の一環であって、中国のテク企業が自由に発展していった時代は過去のものになったのかもしれない。特に習近平が共産党の指導者である限り、彼のイデオロギー重視、政治重視の傾向からして、例えばジャック・マーのような人が、共産党にとり無視できないような大きな力を持つことは容認しないということではないかと考えられる。 習が採るイデオロギーは、共産党がすべてに対して圧倒的な優位に立ち指導していくということである。そのことが今後の中国経済に持つ意味は大変に大きく、かつ経済の成長にとってはマイナスの方向に働くだろう。テク企業は自由な発想ができる環境の中で成長してきたし、シリコンヴァレーでも中国でもそうであった。強い統制下では発展しづらいのではないかと思われる。*********************************************************************Wedge7月号から「共産党100年」論を見てみましょう。p65~67<1000年経ても変わらない「盗賊王朝」中国共産党の本質:岡本隆司> 先般、中国文学者の高島俊男氏が亡くなった。享年84。平易軽妙な文章で、複雑難解な漢語漢文と中国事情を、世に広めてくれた文筆家である。 数ある代表作のうち、歴史屋のイチオシといえば、『中国の大盗賊』(講談社現代新書)。版を重ねて、ベストセラーにもなった。 「盗賊」といっても、ドロボーの話ではない。そもそも中国と日本では、スケールも中身もちがう。日本の「盗賊」はやはりドロボー、いかめしい漢語でいうくらいだから、大がかりな窃盗団・強盗団をイメージするのがおそらく正しい。 それに対し中国で「盗賊」というと、規模の大小にかかわらず、もっとありふれた、永続的な組織を指す。広域暴力団や武装マフィアを想起したほうが、むしろ実態に近い。 もちろん暴力団ともマフィアとも異質、高島氏も日本にはないもおのなので、原語で「盗賊」と呼ぶしかないという。というのも「盗賊」でありながら、それが拡大成長をとげれば、天下をとって君臨することもあるからで、中国史とは「盗賊」の興亡がつくってきた歴史でもあった。 そんな歴史を描く『中国の大盗賊』の白眉は、毛沢東の中国共産党・中華人民共和国を歴代「盗賊王朝」の悼尾に配したくだりにある。それなら「盗賊王朝」とは何か、毛沢東政権がなぜそうなのか、について説明がなくてはならない。■「一統」を尊ぶ中国、西側諸国の常識と前提が異なる 中国は厖大な大陸であり、そこには多種多様な言語・習俗の人々が混交し、せめぎあって暮らしてきた。そうした世界を治めるため、発明されたのが中国の王朝体制である。独尊独裁の天子を戴くエリート官僚制が、各地の多種多様な社会をとりまとめるというシステムであり、少なく数えても1000年以上にわたり続いてきた。社会が多元的なために、政体はかえって、何よりも一統を尊ぶ、というありようなのである。 こうしたシステムでは、政府上層がたとえ一元性を保っても多元的な基層社会の隅々にまで、その権力・統制は浸透しないし、逆に基層社会の実情も、政府権力に伝わりにくい。上層のエリートと下層の庶民に大きな隔絶が生じる。為政者は民衆を信じず、民衆はそれ以上に政府を信じない。 中国では以上のようなありようが、時代によって程度の差こそあれ政治社会の史的構造をなし、その特質となってきた。そうした意味で中国は、人権・政体・法制など多くの位相で、西側諸国の常識とする前提と異なった世界なのである。 そうした中国世界の所産が「盗賊」だった。あるいは「秘密結社」と呼んだりもする。体制と隔離した民間社会を構成する独自の自活組織が反体制化したもので、しばしば大がかりな武装をしていた。 「盗賊」とは社会不安から生じ。治安の悪化・政情の不穏をひきおこし、助長し拡大し、やがて各地に割拠し、ついには政権まで奪取してしまい、王朝に転化しかねないというような存在である。実際にそうやって天下をとろうとした成功と失敗が、中国史を彩ってきた。 紀元前3世紀、漢の高祖・劉邦は、司馬遼太郎の小説もあって、日本人にもおなじみだろうか。「盗賊」皇帝の「元祖」・典型である。下って14世紀、明の太祖・朱元璋(洪武帝)も、著しい成功例だった。 『中国の大盗賊』の語るところでは、明の李自成・清の洪秀全が著名な失敗例である。失敗例はほかにもおびただしくあり、大小とりまぜて枚挙に暇が無い。 成功例は上にあげたくらいで、もとより希少である。そして現在のところ、最後の成功例こそ、毛沢東の中国共産党にほかならない。以降、長くなるので対中最新情報(2021.11.04)を参照ください。昔からチャイナフリーだった。