飲み物を注文してすぐに、ディランは黒衣のダニエル・ラノワと対話を始めます。
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He got right down to business, asked what kind of songs I had, what kind of record I had in mind. It wasn't a real question -- just a way to start the conversation.
彼はすぐに仕事にとりかかり、僕にどんな歌があるか、どんなレコードを考えているのか尋ねた。それは本当の質問ではなかった。単に会話を始めるとっかりだった。
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もちろんお互いの過去の仕事はわかっているのですが、本当に自分と組んで仕事ができるのか、相手を探るといった意味もあったのでしょう。
緊張する時ですね。
ラノワの服装も、そのための鎧のようなものだったのでしょうか。
いつもそんな恰好をしていたのかもしれませんが、それはわかりません。
一時間かそこら話をして、ディランはこいつならできるという確信を持ちます。
でも、どんなレコードになるのかなどはまだまったくわかっていません。
手持ちの歌もまだほとんどが歌詞だけなので、どうなるのかわかりません。
ボノが見たのは、歌詞だけだったんですね。
ボノがその歌詞を本当に良いと思ったのかどうかも疑問ですが、"Oh Mercy"を生み出すのに決定的な役割を演じてくれたことは確かです。
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Danny says to me, "You can make a great record, you know, if you really want to." I flatly said, "Of course I'll need your help," and he nodded.
ダニーは僕に言った。「素晴らしいレコードができるよ。本当に望むのなら。」僕が単調に「もちろん君の助けが必要だ」と言うと、ダニーは頷いた。
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うわっ。
かっこいい。
小説みたい。
既に何かを成し遂げている男たちのクールな会話ですな。
具体的にミュージシャンの話に入ります。
ディランは、その時一緒にやっていたバンドを録音に使うつもりがないようです。
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He told me that hit records don't matter to him, "Miles Davis never made any." That was fine with me.
ダニーは、ヒットレコードなんてどうでもいいことだと言った。「マイルス・デイビスだって一枚もヒットを出していない。」それは僕にも好都合だった。
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さらにかっこいいですな。
日本のメジャーレーベルがヒットしか考えていないのと大違いです。
計算しつくして作られ、テレビドラマやCMでがんがん流して売りまくる。
薄っぺらなものばかりで、もう十年後には枯れてしまう曲が多いことでしょう。
表現欲求に突き動かされて演奏をしていたマイルスやコルトレーンの輸入レコードを、私は70年代に何度も繰り返して聴いていました。
もちろん生演奏で聴くジャズが一番なんですが、でもけっして色褪せることのないレコード群でした。
→SonyMusic: Miles Davis
→The Official Miles Davis Web Site
p.177が終わったところです。
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