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株式会社SEES.ii

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2017.10.11
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ss一覧   短編01   短編02   ​短編03
―――――

 10月9日。午前10時00分――。
 愛知県名古屋市中区にある愛知県警本部では、イオン今池での爆発事件の調査を進めて
いた。県警は事件を爆発物による爆破事件と断定し、被害の規模や状況から、爆発物の
特定を始めていた。それは――C4と呼ばれるプラスティック爆薬の爆発に酷似していた。
 コンポジションC4――。その物質は引火した瞬間に熱とガスに化学変化をし、凄まじい
爆風と衝撃波を生み出す――イギリスやアメリカ、ロシアやドイツの特殊部隊が敵性組織の
施設や工場、飛行場や船舶、鉄道や発電所……大量破壊兵器発射設備などを破壊するために
開発した――非常に高性能な、爆薬兵器であった。
 おそらくは――犯人は持ち運びに便利なカバン・リュック・アタッシュケース型のケースに
爆薬と信管、雷管と時限装置を組み込み、イオン今池で爆発させたと思われた。

 それは、商業施設の一区画を壊滅させるほどの威力を持っていた。だが、北朝鮮やシリア
が惜しげもなくミサイルや化学兵器を使用する現代――その程度の爆発物なら世界中で手に
入れることが可能である。日本への持ち込みでさえ、条件が揃えば方法は無数にあるものと
思われた。

 爆弾本体の製造過程・入手経路の特定は依然として不明であり、県警は情報収集のために
奔走した。今池駅、名駅を中心とした不審者情報の整理・都市部における監視カメラの
映像鑑定・イオン今池の全従業員からの聞き取り調査・高速道路の検問・自衛隊、警視庁、
他県警、セントレア空港、名古屋港、大企業への協力要請・爆破予告の有無などのネット
巡回・警察所属の全車両によるパトロールの強化……。
 警察は捜査を続けた。行うべきこと、調べることは山積みだった。

 県警に設置された捜査本部にはイオン今池の爆発現場からの中継映像が映し出されていた。
昨日の爆発から既に20時間が経過したその時――不眠不休で情報の選別を担当していた、
県警捜査官の男が、ポツリと、呟いた。
「……バカは自爆してりゃあいいんだよ……めんどくせえな、ゴキブリ野郎が……」
 そう。
 ただ――
 ただひとつ――
 あえて言うことはしなかったことがひとつだけ―― 
 犯人像の可能性についてだけは――皆、察しがついていた。

 そいつは、愛する家族もおらず、愛される家族もおらず、友達も恋人もおらず、ひとり
きりで孤独に生きていた。社会の不条理に弄ばれ、絶望と闇に心を犯され続けて生きていた。
 そいつは、自分は不幸だと思い込み、自分だけが不幸だと信じ、自分だけが他人の幸せを
奪う権利を持つと願い――幸福に生きる人々を羨み、妬み、恨み続けて生きていた……。

 誰にも聞こえないくらいの小さな声で、捜査官の男は呟いた。
「……死刑になる前に、撃ち殺してやる……ゴキブリ野郎が……」
 そう。
 そんな人間はありふれていたし、それだけでは何の手掛かりにもならなかった。
 警察は捜査を続けている……。

―――――

 ……良かった。
 ライトアップされたショーケースの指輪やネックレスやブレスレットをぐるりと見まわ
して丸山佳奈は思った。
 テレビで見たイオン今池の爆発事件は身の毛がよだつほど恐ろしかった。けれど、今、
不謹慎なことに彼女はそれを『不幸な事故』程度と感じていた。

 佳奈は3週間前、女性査定士として働く《D》の社長から、とある大抜擢を命じられた。
『11日オープンの《D》新店、グローバルゲート支店の支店長をやれ』
 それは、これまでの佳奈の人生を大きく変えるであろう人事異動であった。喜んで承諾し、
銀行からの融資を豪勢に使い、与えられた店舗を自分好みにレイアウトした。社長は眉間に
シワを寄せ、『ファンシー過ぎないか?』と渋ったが、口調は笑っていてくれた。嬉しかった。
そして……イオン今池の事件でオープンの時期を遅らせようという意見が出た時も、社長は
真っ先に反対してくれた。『……予定していた新聞広告とプレオープンは自粛する。だが、
オープンそのものは延期しない……それでも、クソ高い損失だがな』
 ……とりあえずは、本当に、良かったと思う。
 ……本当に、嬉しかった。

 佳奈は思い切り息を吸った。そして、誓った。社長の期待に応えること。任を解かれる
まで1度の赤字も出さぬこと。店舗を守り抜くこと。
 ……拾ってくれた恩は、忘れません。そんな思いを心を決めて、息を吐いた。


「……しばらくは俺も在籍するから、遠慮なく命令してくれ」
 岩渕という32歳の上司は、23歳の1年生支店長の顔を無遠慮に眺めて微笑んだ。この
男が、自分と同じ岡崎の児童養護施設出身というのは知っている。伏見の姫様と知り合い、
助け合い、《D》に莫大な利益とコネをもたらした、というのも知っている。……私の知る
かつての岩渕は……カネに汚く、腹黒く、ズル賢く、社長や同僚やお客様に対して何を考えて
いるのかわからない、そんなヤツだったのに……。

「……まぁ、気楽にいこうや」
 岩渕がまた、ぎこちなく微笑む。……人が違うみたい。姫様と出会い、変わったんだな……。

 クセのある男や女たちと一緒に仕事をするのは確かに楽ではなかった。辞めたいと思った
こともないわけではないし、泣きたくなったことも何度もあった。けれど、査定士という
仕事が嫌いになったわけではなかった。それどころか、世界中の金銀財宝を手に取り扱える
高揚感や達成感は、他では味わえない深い魅力があると感じていた。
 それだけじゃない。高校の卒業式の日の夕方――生まれて初めて、佳奈は他人に必要だと
言われた。
『……お前にはモノの価値を見極める才能がある。……性格が優しすぎる欠点も
あるが、それも……まぁ、いい。《D》に来い。時間はかかるかもしれンが、期待はする……』
 
 必要とされた。
 必要とされるために努力した――。必要とされるだけの努力はした――。
 今、また、佳奈は必要とされていた――。
 なら、佳奈がするべきことは決まっている――。
 
 ……あれ? 
 今も昔も、自分だけは何も変わっていないことに、《D》社員の丸山佳奈は、少しだけ……
ほんの少しだけ……驚いた。
 
―――――

 午後12時30分――。
 岩渕はセントラルタワーズの地下から7番出入口を昇り、名駅通りへと出て、オフィス街に
あるミッドランド・スクエアへと歩き出した。まだ時間には早いため、点在する高級ブランド
ショップを挨拶がてらに見学する。ヴィトン・ロエベ・ディオール・ショーメ……各店舗の
支配人たちと新しい名刺の交換をし、約束していた場所へ向かうために東急ハンズの方向へと
脚を向ける。
 ……正直、少し困惑する。待ち合わせの相手が急に「今日、どうしても会いたい」と連絡して
きたのは、たぶん、これが初めてだからだ。

 いつもなら前もって予定を組み、互いに一緒に過ごす時間を工面するハズなんだが……。
 そう。伏見宮京子が『すぐに会いたい』と岩渕に頼むのは初めてのことだった。
 ……まぁ、どういう理由かは、何となく察しはついているが。


「……ねえ、岩渕さん」
 名鉄百貨店1階のスターバックスの窓際の席で、京子が呼んだ。狭い2人席だと、声がよく通る。
「どうした?」
 アイスコーヒーにガムシロップを入れて混ぜながら岩渕は答えた。
「……グローバルゲートの出店計画だけど、遅らせることはできない?」
「……爆弾野郎か? ……まだ捕まってないらしいな。……自爆したワケじゃないらしいし」
「うん……ごめんなさい。部外者が、こんなことお願いして……」
「いや、わかってる。……正直、社長の決断は早計すぎる。せめて、犯人が捕まるまではな」
「何か……社長さんには、オープンを急ぐ理由でも?」
「もしかしたら……」
 社長は丸山佳奈を溺愛し、彼女の意志と努力を尊重したいから……そう言いそうになって、
岩渕は口をつぐんだ。
「もしかしたら、何?」
「いや、何でもない。とにかく、もう一度、社長には進言しておく」
「ありがとう。あのね……あの事件があって……私、すごく心配したんですよ? ……でも、
岩渕さんや《D》が無事で……本当に……良かった……」
「……すまない。俺も……キミが無事で良かった」
 頬を紅潮させ、少しだけ涙ぐむ京子にハンカチを渡す。そして、その時――岩渕は改めて、
自分が伏見宮京子に抱く特別な好意を意識した。
 そんな風に思える異性など、これまでひとりとしていなかった気すらした。

 
 ……場所を変えて、今からふたりでどこかに行くか?
 そんなことを考えながら、唇にストローを差してアイスコーヒーを飲み込む―― 
   ――その時だった。

 ――その時、店内でざわつく客同士の会話や、静かに流れる有線の音楽が――まるで火山が
噴火したかのような、あるいは強烈な雷が大木をなぎ倒すかのような、狂暴で破壊的な――
――うなるような轟音が鳴り響いたっ!

 僅かに体が揺れ、全身の毛が逆立つ。体の中で冷たい戦慄がいっぱいに膨らんでいくのが
わかった。
 岩渕は、
 京子は、
 ふたりは、その戦慄の、その恐怖の正体を思い浮かべ、身を震わせた。それは、昨日から
ずっとテレビで中継しているイオン今池の惨劇に。それをいとも簡単に引き起こしたであろう
――おぞましく汚らしい、悪魔の所業に。
「い……行くぞっ! ミッドランド・スクエアだっ! すぐ目の前だっ!」
 叫ぶように言った次の瞬間、岩渕は京子の手を握り締め、スターバックスの入口へと
走り抜けた。

「ああ……いや……いやーーーっ!」
 京子は凄まじい悲鳴を上げると、握り締めた手を組み直し、岩渕の首にすがりついて泣き
叫んだ。首の下を温かな液体が流れるのを感じた。
 そう。岩渕と京子は見た……見てしまったのだ。ついさっき歩いていた、ついさっきも
2人で歩いていた――ミッドランド・スクエアの出入口から放たれる猛烈な炎の渦と、噴き
上がる黒煙を……――
 ――……そして、手や足や頭や血の塊だけになった、無数の人間の血肉が、サンロードに
降り注ぐかのようにバラ撒かれた光景を――……。

 強い恐怖に全身をわななかせ、奥歯をガチガチと震えさせ、すがりつく京子の肩を強く
抱き締めて――岩渕は呟いた。

「……意味がわからねえ。……こんな殺戮に、意味なんてない。あるとすれば、悪意、だけ?
悪意、だけかよ……畜生。完全にイカれてやがる……」

―――――

 『激昂するD!』 dに続きます。

 








   
本日のオススメコーナー!!!
 カンザキイオリ /命に嫌われている。↑↓
  
      他2曲  カンザキイオリ /アダルトチルドレン feat.鏡音リン
           ​​カンザキイオリ /君の神様になりたい。feat.初音ミク
     ↑カンザキイオリさん。ボカロPではあるものの未だ楽曲は少なく、ダウンロード版の
      ミニアルバム1枚……動画の再生数も少ない。しかし……seesが涙する、切ない歌詞と
      儚いメロディーは必聴かと……。(思えばseesのブログに動画を埋め込むのは初めてかも。
      しかし、まぁ……カンザキ氏に関しては本気で聞いて欲しいと思うし……まぁいっか😊          
      評判良ければ今後も動画の埋め込みしようかな……)。
      ……最新曲、「君の神様~」は本当、神様が歌っているよう…ある種の陶酔感、禅味すら
      感じます……。しかし……相変わらず、再生数、全然のびないな……😞
 


 お疲れサマです。seesです♪ 
 bパートでは急展開という声が多数ありまして……失礼しました。……前半と後半では
まるっと話の内容違いましてね……焦る気持ちが文に出てしまいましたね……反省。
 あー…早く後半のクライマックス……作りたいな……。
 てことで、今話は特筆すべきことのない普通回ですね……。しいて述べると、今回の
短編の主要キャラ3名の紹介が終わったところかな……。
 相変わらずの誤字と、文節の乱れ……平にご容赦とご理解を賜りたく……m(_ _"m)
 次回少し遅れるカモ……次の休日、少し遊び??に行きます(某企業主催のメシ……安い
酒飲まされるだけの合同会食に行かされるハメに(# ゚Д゚))。憂鬱……。

 でわでわ、ご意見ご感想、コメント、待ってま~す。ブログでのコメントは必ず返信いたし
ます。何かご質問があれば、ぜひぜひ。ご拝読、ありがとうございました。
 seesより、愛を込めて🎵
   



 本来ならば、ここにカンザキイオリさんの商品紹介したいケド……無理ぽいからな……。
 ので、最近買ったseesのオススメ雑誌・文化系・小説・ラノベを軽く……。
      
↑カープより中日派だが。↑タダ者ではない。↑もらいもの。無双。↑ダークなラノベ。最強モノ?
 
こちらは今話がオモロければ…ぽちっと、気軽に、頼みますっ!!……できれば感想も……。

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 好評?のオマケショート 『……悪夢のデジャヴ??』

次長   「sees君、コレあげるから、行っといで……今日早アガりやろ?』
      それは……そう、アレですね。
次長   「また中日さんにチケットもろたんや……ワシは仕事やし、やるワ( `ー´)ノ」
sees   「えーーー…マジすか~(^▽^)/……やったーっ、ありがとーございます。
      行ってきま~す。😊ウレピー」
      (ア゛ッ💢……何をくれるかと思ったら……5位確定のドラ×ハマのド消化
       試合やんけ……しかもパノラマ席かよ、何も見えん最奥の席で何を楽しめと??)
      ……
      ……
      ……
      来ました(笑)
      さてと……弁当よし(全力投牛弁当、要はすきやき弁当)
      そして……銀色のヤツよし(説明不要のスーパードリンク)
      とりあえず、試合開始前にグビり……。
sees   「……ぶはぁ~、さーて、今日はどうなるのかな~……」
      (中略)
      1回(!!)表裏終了時スコア   中日0-8横浜
sees   「……まぁまぁまぁ。奇跡を待ちましょう……😞」
      (中略)
      5回表裏終了時スコア ドアラとゆかいな草野球チーム0-12ハマ・デビルズ
                   (ちなみに本塁打0、一方的拷問)
sees   「……次回の構成はどうしようかな……やっぱり宮間総務課長メイン回作ろう
      かなぁ? ((+_+))ブツブツ……グビグビ……ブツブツ……グビグビ……」
      seesは考えた……。
      ……帰りたい。恥ずかしい。死にたい。生きたい。歌いたいw 
      ……そんなことを考えながら、生きている意味を考えながら――
      そして、死にたいと思っても死ねないので、そのうちseesは――
      ――……考えるのをやめた……。
    
                         了「投手たちは風になった――」





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Last updated  2020.05.02 10:59:43
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