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株式会社SEES.ii

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2017.10.24
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ss一覧   短編01   短編02   ​短編03
―――――

 10月9日。午後17時00分――。
 岩渕は《ユウリクリニック》の待合室でテレビを見ていた。
 テレビではミッドランド・スクエアの爆発事件の中継映像が流れていた。つい先程まで、
京子と一緒にコーヒーを飲んでいた場所とは思えなかった。もはやどれほどの時間が経とう
とも、あの景色が戻ることはないのだろう。
「……どこぞの国のテロリスト、とは思えないが、な……」
 犯人の目的、場所との関係、動機そのものの意味……わからないことばかりだ、心の中で
岩渕は言う。


「岩渕様、院長先生がお呼びです」
 事務の女性が事務的な口調で言う。「伏見宮様……かなり落ち着かれたとのことです」
「……今はこっちが落ち着かないよ」
 岩渕は事務の女性に苦笑いして見せる。「……チャンネル変えたほうがイイかもな」と
言いながら待合室を出る。

「岩渕だ……入るぞ」
 そう言って病室のドアを開ける。
 チリひとつない清廉な病室では、伏見宮京子と永里ユウリが話をしている。永里が岩渕を
見て微笑み、軽く頭を下げる。岩渕も同じように微笑み返す。
「……テレビの解説の方がおっしゃってたんですが、犯人っていうのは、若い日本人風の
男性、らしいですね」
 ユウリが丁寧な口調で言う。
「ああ……もしかしたら、どこかの国に依頼されてヤッているのかもな」
 そう答えながら、ベッドに横たわる京子の様子を見る。
 京子は未だショックから立ち直れないようだ。無言で岩渕を見つめ、唇を震わせている。
ファンデーションの上からでも、顔色がひどく悪いのがわかる。目が真っ赤に充血している
ところを見ると、ついさっきまで泣いていたのかもしれない。
「……だとしたら、今後も事件は続く可能性が高いわけですね……。岩渕さんも充分に注意
してくださいね。……名駅前やグローバルゲートなんかは、テロリストにとっては格好の
ターゲットなんですよ」
 ユウリが言い、京子が「……決して、許されることではありません」と言いながら、目に
ハンカチを押し当てる。

 ユウリが出て行ってから、病室のベッドでしばらく京子と抱き合っている。京子は、
「……ごめんなさい、岩渕さん」「あんなに取り乱して……ごめんなさい」と繰り返し、
また大粒の涙を流している。たぶん、パニックに陥った自分を運ばせた俺と、病室を貸し
てくれたユウリに自責の念があるのだろう。
「……俺なら大丈夫だ。気にすることはない」
 そう言って、ほつれた彼女の髪を撫でてやる。

 ……強がりだ。岩渕は思った。
 本当は動揺しているし、怯えてもいるし、不安も残っている。とてもじゃないが、社に
戻り業務を続けられる自信はない。案の定――社長から『皇女殿下は伏見宮家に連絡して
車を手配してある。お前は帰って寝ろ』と言ってくれたので、その言葉に甘えることにする。
 京子の涙と鼻水をティッシュで拭いてやり、もう一度彼女の髪の毛先に触れ――……?
 ……何だ?
 ……何かが、心に引っかかっていた。
 その何かを思い出すことが叶わぬまま――岩渕は病室を出た。

―――――

「……はい。準備は順調です。当日は精一杯がんばります。何かあればすぐに報告を……
はい……はい。では明日も朝、お待ちしております……」
 まるで戦いに赴く兵士のように社長にそう言うと、丸山佳奈は電話を切った。接客用語の
発声練習をするアルバイトたちの活気ある声がし、それに続いてレジ精算の練習らしい電子音
が聞こえた。
 佳奈はレイアウトの終わった《D》グローバルゲート店の中を見まわした。美しかった。
ショーケースには煌びやかな宝飾品がライトアップされて陳列していた。

 テレビを見る気にはなれなかった。きっとどのチャンネルもイオン今池と、ミッドランド
スクエアの爆発事件の話題で持ち切りに違いない。
 ……ここに来たら、ブン殴ってやる。
 汚らわしい闇の手がこの場所に来る可能性を考えると……息が詰まって苦しい。
 佳奈はにじり寄るようにして、店内奥に飾られた《D》のエンブレムが刻まれた看板の
前まで行った。軽く一礼し、エンブレム横にある額縁に目をやる。
『店舗責任者 FGA(宝石鑑定士) 当社規定査定士 丸山佳奈』
 ……ありがとうございます。……社長。
 緊張しているのか、高鳴る心臓の音を聞きながら、佳奈は考えていた。

 ついさっきテレビのニュースが、ミッドランドスクエアでも爆発が起きたと伝えていた。
それにはやはり、イオン今池での爆発物と同様の爆弾が使用されたらしかった。インタビュー
を受けていたミッドランドスクエアの関係者は、自分たちには思い当たるフシが全くないと
言い、悲痛な現状を吐露していた。そのニュースを聞いた瞬間、佳奈は、被害者を憐れむ
気持ちがあまり湧いてこないことに気がついた。
 ……犯人は、たぶん、私と似たようなヤツかもしれないな。
 佳奈は自問した。
 
 ――それは、なぜか?
 佳奈は《D》のエンブレムを見つめ続けた。
 ずっと昔、まだ10歳か11歳だった頃のことを思い出した。あの頃、佳奈はいつも、
他人が憎くて悔しくて、羨ましくて仕方がなかった。親に捨てられた自分の将来が、美しく
輝くバラ色になるとは思えなかった。なぜそうなふうに考えたのかはわからないが、父や
母のいる家庭の子を見るたびに、自分と彼らの人生には越えられない壁があると恐怖した。
そんな時、幼い佳奈はいつも、『大丈夫、この壁は、これ以上大きくはならないから』
と自分に言い聞かせた。『大人になれば、きっとこの壁も壊れて消える』と。
 
 ……きっと犯人は、壁を壊すことができなかったんだ。そうなんだ。壊れてくれない
壁は、削れてもくれない壁は、やがて大きな闇を生む。光を遮る壁は、闇を生み、悲しみ
を膨らませ……怒りと憎しみだけが残る……。
「……同情ぐらいはするよ。被害者にも……犯人にも……でも、私は違う」
 声に出して自分に言い聞かせた。「私は明後日、一人前になる。懸命に働き、国に奉仕し、
《D》のために、ガンバリますっ!」

 佳奈はこれから、改めて、自分の人生のコンプレックス――劣等感とでも言うべき壁を
乗り超えようと決意した。そう決めてしまうと、緊張は徐々に収まっていった。

―――――

 世の中には幸運な人がいて、不幸な人もいる。
 佐々木亮介はもちろん後者であったが、昼間――ミッドランドスクエアで死んでしまった
買い物客たちは、果たしてどちら側の人間だったのだろうか? 
 夜、途切れることのないテレビのニュース映像を見ながら、亮介は考えた。ゆっくりと
深呼吸を繰り返し、また考えた。あらゆることを思い出し、考え、考え続けた……。


 ……記憶もおぼろげな幼い頃から――亮介は、父や母から虐待を受けていた。毎日の
ように殴られ、蹴飛ばされ、つねられ、髪の毛が抜けるほど引っ張られた。母はタバコの
火を亮介の腕や背中や足に押し当てては笑っていた。雪の降る日に一晩中、ベランダに
放置され……食事だと言って雑草を食べさせ、『お前に食わせるメシはない』と罵った。
あげくの果てに――児童養護施設に亮介を預けたまま、どこかへ消えた……。

「もう、いいや……許します。俺は、アンタたち2人を許します」
 亮介はテレビを見つめて微笑んだ。映像では、高級ブランドらしきハンドバックを抱えた
中年の男が、娘らしき女の名を懸命に叫んでいた。

 ……高校生の時――亮介にも好きな女の子がいた。その子はとても明るくて活発で、
バスケットボール部でキャプテンをしていた。亮介は何とか彼女と親しくなろうと懸命に
努力した。身なりを整え、髪型を変え、口調も変えた。共通の友人を介して、どうにか
接点を作ろうとした――けれど、ある日、名駅前の交差点で、彼女と彼女を紹介してくれ
と頼んだ友人が手を繋いで歩いていたのを目撃した。バツが悪そうな友人は亮介に告げた。
『……わかってたろ? ……ごめんな』

「あの時の怒りと屈辱も……許しますよ……ええ、許します」
 亮介はテレビを見つめて微笑んだ。映像では、婚約者を亡くしたと喚く派手な化粧をした
若い女が映っていた。

 ……勤務する清掃会社から突然――『8月いっぱいで辞めてもらうから』と言い渡された。
カッとなった亮介は上司である男に詰め寄った。『どうして外国人より先に、この俺がクビに
されるんですか? 俺はマジメにやってるじゃないスか? みんなに負けないほど一生懸命に
働いているじゃないですか?』けれど、上司の男は面倒くさそうに、『会社の判断だ。俺には
関係ない』と言うだけで、キチンとした対応は何もしてくれなかった……。

「……許します。……俺は、あなたも、会社も、何もかもを許します……」
 亮介はテレビを見つめて微笑んだ。映像では、泣き叫ぶ若い女を胸に抱く恋人らしき男が、
『……信じられません』と顔をしかめた。


 亮介は考え、考えぬいて――呟いた。
「……いいですよ。以前の俺なら決して許さないことでも……今の俺なら、許します……
中学生の頃、お下がりでボロボロの制服を着ていただけで、毎日俺をイジメた同級生たちも、
俺が拾った一万円札を、盗んだと叫んで奪い取った近所の主婦も、『こんなブサイクな男に
部屋を掃除させるな』と会社にクレームをつけたカネ持ちの女も……許します。あなたたちが
大勢死んでくれたから……許しがたいことだが、許します。あなたたちが死んでくれたから
……何もなければ絶対に許せないことだけど……特別に、許します」
 亮介は言葉を切り、感情の高ぶりを鎮めるために床に置いたペットボトルのコーラを手に
取り、震える手で、それをラッパ飲みする。炭酸が胃の中で泡立つのを待ち、部屋の隅を
見つめて深呼吸をする。

「……でもね」
 そこで亮介は口をつぐむ。少し微笑み、また口を開く。
「……許せないことは……まだまだたくさんあるんだよ」
 亮介は低い声で、誰もいない部屋の隅を見つめた。そこには、2つの銀色のアタッシュ
ケースが無機質な光沢を放ちながら静かに横たわっていた。
 亮介は目を閉じ、これまで自分を苦しめていたヤツらが炎に包まれて焼け焦げる様子を
想像した……。


 ――次の目標は決まっている。グローバルゲートだ。
 なぜ? 
 理由は……ん? わからないな……。
 イオン今池はテレビでCMしていたから……? ミッドランドスクエアは、動画サイトで
広告が入っていたから……? グローバルゲートは? そうだ。郵便受けに毎日チラシが
入っていたから、だっけ……?
 ――まぁ、どうでもいいか。
 ――本当、どうでもいいな……。

 そう。
 俺はただ、殺したいだけだ。殺して殺して、殺しまくりたいだけだ。殺しても殺しても、
まだまだ殺し足りないだけだ。
 
 ……たぶん、俺に爆弾を贈ったヤツも、同じ気持ちなのだろう……。
 
―――――

 『激昂するD!』 eに続きます。

 









 本日のオススメ!!!
 Aimer(エメ)さん……↓……新曲出たので💚
  
  ……seesが思うに、Aimerさんほど完璧な女性シンガーはもうしばらく、世に現れるとは
 思えないスね……。seesの貧乏ブログでも何度か紹介させていただきましたが……本当に、
 何度聞いても飽きることがない歌唱と歌詞。そしてミステリアスな風貌と、非現実的な
 表現力……。……こんな人が近くにいたら、seesは全財産を貢いでしまいそうだ……😢
  商業的な匂いもなく、媚びたような歌詞でもなく――ただ、ただ、美しい魅力に溢れて
 ますネ、マジで……。
 
 
               ↑新曲の宣伝用す。
 
                                                                                                                 
               ↑『六等星の夜』……名曲すね。
 
 
               ↑『StarRingChild』……ああ、美しい。
 Aimerさんのアルバムす↓……seesはもちろん購入済。皆様も、どーぞ。
   

 ……お疲れサマです。seesです。
 しばらくぶりの更新で皆様に忘れ去られてはいないかと心配😟……まぁ、こんな駄文で
制作欲を発散させてるようなヤツですからね……。
 仕事の都合でPC触れず無念。会社の業務形態が少し変わり、当面忙しい状況が続きそう。
 そう。
 実はsees……。
 単独で昇給、しちった(⌒∇⌒)ヤッピー。  
(これは昇進も確定かな~? ww来年度の人事、楽しみww……🐷ブヒヒ~ンwwwさっ、大事に
取っておいた8000円のラフロイングと、イオン今池で買ったお肉で、すき焼き&ハイボール
祭りじゃあっ!!)

 ……て喜んでも、少しばかり給料と賞与アップ⤴の予定ってだけ。ストレスは今後もかなり
溜まりそう。年末賞与も査定が厳しくなるし……まぁ、ぼちぼち、コツコツ、がんばります。

 さて、今話も進行は遅めです。次回はかなり進ませる予定ですが……なかなか、良い文面が
思い浮かばない……本来ならキチンと校正してブラッシュアップしてから更新するべきなの
ですが……いかんせん、時間が……なひ😞 岩渕さ~ん、たしけて~😢

 でわでわ、ご意見ご感想、コメント、待ってま~す。ブログでのコメントは必ず返信いたし
ます。何かご質問があれば、ぜひぜひ。ご拝読、ありがとうございました。
 seesより、愛を込めて🎵
 


 好評?のオマケショート 『……見てくれよ。いや、見ろよっ!!!』

 友   「……じゃ、いっちん、ごめんなしって~(ToT)/~~~」
                   (徳島出身、さよならの意)
sees   「うぃ~すっ。んじゃオカピー、またよしこサヨナラ~✋✋」
                   (中日投手、又吉を揶揄する挨拶)
     
      ――ド深夜、12時。
      守山区の友人宅から帰路――夜の一般道を疾走するseesの車……。
      ……思ったより遅くなっちまったな。明日は公休か……ZERO見て、寝るか。
      桜井翔クンの顔を思い浮かべながら――ハンドルを握るsees……。
      そう。
      それは何てこたーない。何の変哲もない、ただの帰り道になる、ハズだった。
      ………

      ――げっ!
      あれは……検問っ!!  ……ヤダ、ヤダーっ!

      見ると、道路の一帯をパトカーが占拠し、赤灯🚨がユラユラと回っているではないか。
警官A  「はーい。止まりなさーいっ! 🚓千種署でーすっ! 交通安全週間で~すっ! 
      ご協力、お願いしま~すっ!」
sees   「はーい。(チッ、この私としたことが……安全週間の情報を聞き逃していたとは)」
      警官たちはseesの車のドアをゴンゴンと手荒く叩き、「開けて」「開けて」と
      言い放った。
警官B  「はい。息」
sees   「へ?」
警官B  「飲酒の確認っ!! ほら息っ、私の顔に向かって息吐いてっ」
sees   「ふ、ふはぁーー……。💢(何が悲しくてオッサン警官に息かけなきゃならんねん)」
警官B  「よし、免許」
sees   「……は、はぁ。えーと……ゴソゴソモタモタ」
警官B  「……もういいっ!! 行って良しっ!!」
sees   「え? いや、免許ありましたケド……(なんやコイツ)」
警官B  「あるのはわかった。俺らは雰囲気でわかるんだよ。さ、早く行きなさいっ!」
      ………
      ………
      ………
      この恥辱、許すまじ💢
      我怒る。我叫ぶ。
sees   「――見ろやっ! ワシの免許、見ろやぁぁぁぁぁっ!!!💢見てくれやっ!!!💢」
      何だろう、この妙な高揚感……。
      いやいや皆さん、検問てさ、結構、テンション上がらないっスか??

                                                                                                     🚨了🚨



  
こちらは今話がオモロければ…ぽちっと、気軽に、頼みますっ!!……できれば感想も……。

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Last updated  2017.10.24 19:49:02
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