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歌 と こころ と 心 の さんぽ

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2014.11.02
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カテゴリ:一日一首


♪ 人間の愚かな様を見続けて大樹は今日も立ち尽くしをり



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 大樹に魅せられる人は多い。何百年、何千年と無言で聳え立つ姿は崇高な上にも畏怖さえ感じさせる。天変と風雪に耐え、小さな存在である人間の愚かな生きざまを、無言のうちに見下ろしている。

バオバブ

マダガスカルのバオバブ

 「星の王子様」に出てくることで有名なバオバブの木。
 日本の名随筆79「会話」に、川田順造(文化人類学者)の「樹、そして伝えあい 抄」というのがあります。武満徹との往復書簡「音・ことば・人間(1980年)」からの抜粋です。その中に、サバンナのバオバブの傍らで暮らした話があります。とてもいい話なので、ほんの一部を引用します。青字の部分がそうです。



タンザニアのバオバブ

 「雨期のさなか、北の方を旅していて、葉のすっかり落ちたバオバブの大樹に、やはりシルエットになった鳥が、何十羽となくとまっているのを遠望したことがあります。はじめ、鴉か何かだろうと思っていたのですが、近づいてみると禿鷲で、そのバオバブの下に市が立っていて、屠殺された羊や山羊の残骸にありつこうと、市が果てて人が立ち去るのを待っているところだったのです。翼をひろげれば二メートルにはなる、この屍肉をあさる鳥どもが、午後の空に半球形にひろがったバオバブの枯枝に、思い思いの向きでとまり、禿げた首をかしげ、あるいは下界をのぞきこみしているさまは、面白い眺めでした。」


マダガスカル固有種






 「この樹は、曠野の地平線をかぎって独り立つだけではありません。人家も畑も絶えた荒れ野のおくに、稀に、バオバブの大群落があるのをご存知ですか?こういうバオバブの森に足を踏みいれるとき、私は、生物界で後からやって来た闖入者、もしかすると余計者であるかも知れない自分をあらためて感じるのです。

 しかし、このいつも上機嫌の樹木がそこにくりひろげている光景は、荘重さとか厳めしさとかいったものからは何と遠いことでしょう。てらてらした幹の表面には、大きなイボもあり(この木にはそれに、ちゃんとした枝もあるのに、幹からじかに葉を出してしまったりする”はしたなさ”もあるのです)折角はいた特大Lサイズの半ズボンが、ズボン吊りが切れて落ちてしまったような胴体のあちこちから、長くもない腕を何本も空中にさしあげ、声をたてずにばんざいをしている樹もあれば、目も口も思いきりゆがめて見せながら、両手のバチで胴体をどってこ、どってこと叩いている樹もある。」



乾季のアフリカ・バオバブ

 バオバブは、徳利状の幹に水分を貯えています。大木ではその量は100トン以上にもなるそうで、乾季になると葉を落として休眠し、幹に貯えた水分で生き延びるのだとか。


マダガスカル固有種


 「雨期の来る前、まだ雨にはならないながら、大気の中に少しずつ戻って来る水分に感応して、他の植物に先がけて赤ん坊の掌のような若葉をを出すバオバブ。煮て食べると独特の苦味とぬめりのあるその葉を取ろうと、村人が登り、枝から出ている葉を棒の先で叩いて落とすのを、下で子供やおかみさんが笊を持って待ち、上と下とで大声にことばをを交わしている。周十メートルにもなるバオバブは、幹に抱き付いて登るというわけにもゆかず、、足掛かりになる突起やくぼみでもないときには、幹からは登れないので、低く伸びている枝の先の方にとびついて尻上がりに足をからめ、枝から枝へ登ってゆくのです。乾季の始め、種子も果肉も有用なバオバブの実をとるときも同じで、このラグビーボールのような形の、長さ二、三十センチの実は、丈夫な花梗で枝についてさがっているので、棒で相当つよく叩かないと落ちない。あおい、毛ばだったビロード張りの狸のふぐりといった趣のもので、これが沢山巨木の枝にさがり、そろって風にゆられているさまはなかなかユーモラスです。」



 バオバブとは、アオイ目アオイ科(従来の体系ではアオイ目パンヤ科)バオバブ属の植物の総称だそうで、原生種が、アフリカに1種、マダガスカルに6種、オーストラリアに1種の8種類が存在するらしい。

 「バオバブ」という名前は、十六世紀に北アフリカを旅したイタリア人植物学者が「バ・オバブ」と著書に記したのが始まりです。もとはアラビア語の「ブー・フブーブ」(種がたくさんあるもの)から来ているという説があるそうだ。



アフリカ・バオバブの花



アフリカ・バオバブの未熟な果実




 
アフリカ・バオバブの成熟した果実

 アフリカ・バオバブの果実は、果肉で満たされています。成熟した果実では、果肉は乾燥し、固まり、崩れて、乾いた粉末状のパンの塊のように見える。
 乾燥した果肉は、ミルクまたは水に溶かして、飲み物として利用できる。カルシウムをホウレンソウより50パーセント多く含み、抗酸化食品であり、オレンジの三倍のビタミンCを持ち、「スーパーフルーツ」とも呼ばれる。さらに、種子からは食用油が採集できま、葉は、野菜として食べられるという。とても有益な植物なんですね。


世界最大のバオバブ(南アフリカ)

 放射性炭素年代測定法によって6000年と推測されている。メソポタミア文明が栄えるよりも前、縄文から弥生時代に当たる。その頃からこの大地に根を張っていることになる。
 空洞となった幹の中を使って、バー作られていたらしいが、今は営業していないらしい。

 「雨季の、毎日のようにやって来る驟雨の前、まっくらになった東の空から吹き寄せる強風の中で、髪をふるって叫ぶサバンナの喬木たち。高い樹には雷も頻繁に落ち、幹が焦がされ、引き裂かれる。モシ族のことばでは、『サーガ』は天空も雨も指し(古い日本語の『あめ』ということばを思い出します。)稲妻、雷も指すのですが、雷雨の中で、大地から突き出た樹と低くなった空を結んで稲妻が走るのをみると、このサバンナで、樹は、天と地の接点でもあることを感じます。

 大きなバオバブの樹は、50メートルもの根を地中に張っているそうです。それだけ大地に喰い込んでいるからこそ、この鉄分の多い、乾きがちのかたい土壌から、滋養に富んだ肉厚の葉をあれだけたっぷり繁らせ、大きな花を咲かせ、実をならせることができるのでしょう。殻といってもいい固い果皮の中に、種子を包んでつまっている白い果肉は、噛むとしこしことして駄菓子のラムネに似たかるい酸味があり、荒れ野で乾きと飢えをしのぐのによく、土地の人は水に浸して清涼飲料にもします。」


 「サバンナの人々の生活感覚の中で、樹木は(そして、私もそれに共感するのですが)閉じた一個の物体ではなく、宇宙のさまざまな要素が、鳥、虫、月の光、雷、大地、人間から祖霊や精霊にいたるまで、空間と時間を横切って相逢い、呼び交わし、交錯する開かれた場、しかし散漫な系ではなく、無数のベクトルがはげしく集中する点であるように思います。
 樹は寡黙ですが、音を欠いているわけではない。樹にもお喋りな樹と無口な樹がありますが、しかしそうした差異をこえて、樹はひかえめだが常に音をまとっています。あるいは、樹と人間も含めた他の生き物との伝えあいの媒体が、樹のまわりにはいつも流れているというべきでしょうか。」





◆2006年5月8日よりスタートした「日歌」が千首を超えたのを機に、「游歌」とタイトルを変えて、2009年2月中旬より再スタートしました。
◆2011年1月2日からは、楽歌「TNK31」と改題してスタートすることにしました。◆2014年10月23日から「一日一首」と改題しました。

「ジグソーパズル」 自作短歌百選(2006年5月~2009年2月)

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最終更新日  2015.01.18 15:03:48
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◆2006年5月8日よりスタートした「日歌」が千首を超えたのを機に、「游歌」とタイトルを変えて、2009年2月中旬より再スタートしました。
◆2011年1月2日からは、楽歌「TNK31」と改題しました。
◆2014年10月23日から「一日一首」と改題しました。
◆2016年5月8日より「気まぐれ短歌」と改題しました。
◆2017年10月10日より つれずれにつづる「みそひともじ」と心のさんぽに改題しました。
◆2019年6月6日より 「歌とこころと心のさんぽ」に改題しました。
「ジグソーパズル」 自作短歌百選(2006年5月~2009年2月)

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