♪ 寒ければ顕(た)つもののあり和紙と酒 墨や越後の寒ざらしなど
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私は寒いのが嫌いですが、寒いほどいいというものが世の中にはあって、寒くなるこれからがそれらの本番を迎える。
例えば、手漉き和紙作り。
先ごろ世界遺産にもなった日本の手漉き和紙(石州半紙、本美濃紙、細川紙)は、工芸品とも言える世界一良質の紙です。寒いほどいい紙が作れるというものです。
大陸から伝わった製紙法が、日本の風土で適した原材料と製法に変化し、楮(こうぞ)三椏(みつまた)雁皮(がんぴ)などの原材料を使って1000年以上もの伝統をもつ日本独自のもの。
楮から黒皮を除き、白皮を清流に数日間浸して自然漂白(川や雪に原料を薄く広げ5日程度晒す)。さらに水に浸して柔らかくした後、鉄釜で煮てあく抜きし、流水で洗った楮を石盤の上で木づちでたたく。その後、楮を水やトロロアオイという植物の粘液と合わせ、紙漉き作業を行う。
和紙が出来るまでには48回の工程が必要といわれ、しかも厳寒期の12月から5月が良質な和紙ができる最適期とされる。
全国手漉き和紙連合会
また、墨作りも寒いほどいいという。
墨は炭素末(煤)と膠と少しの香料をねり合せてできています。
すすは、黒々とした墨の色を示し、膠は紙や木に書かれたすすを定着させる働きをし、香料は膠のにおいを消し、清い香りをもって書く人の気持ちをやわらげる役割をはたします。
墨は気温が高く湿気の多い夏場は、膠が腐った固まりにくいため墨づくりには適さない。そのため墨づくりは毎年10月中旬から翌年4月下旬までの寒期に行ないます。
日本で墨づくりが始まったのは飛鳥時代。奈良時代には、仏教の伝来に伴い膨大な量の写経が行われ、平城京では図書寮と呼ばれる役所で4人の造墨手により、400丁あまりの墨が生産されていたという。
平安時代に入り、仮名文字が発明で文字は一般化し需要が高まる。奈良を中心に、丹波、播磨、太宰府など、松の豊富な山がある地域でも生産されるようになった。松の木や松脂を燃やして煤を採取し、墨を作るのだ。これを「松煙墨」という。
その後、日本各地の墨生産は次第に途絶えて、奈良の寺院での生産が中心になる。中国・宋では、墨の材料に松の煤を使うのではなく、油を燃焼させて採取した煤を使った格段に上質の「油煙墨」が開発されていた。
当時隆盛を誇った藤原氏の氏寺、奈良の興福寺ではその手法を取り入れ、南都油煙と呼ばれる上質の油煙墨を生産し、全国に知られるようになった。
「墨は黒いだけでなく、その黒の中に七色を味わうという。まず紫光色がよく、黒色はその次であり、青光色は更にその次となる。しかもそれはうわついた光ではなく底光するような色で、硯ですってみて清い香りがし、音のしないものがよい」と言われてる。
油煙墨はくっきりとした明確な黒が特徴であり、松煙墨は青みを帯びたやや薄めの色が特徴という。書家や水墨画家は、その表現の求める内容によって、油煙墨と松煙墨を使い分けている。
榊莫山『寒山拾得』
千年以上をも経た書跡に今も残る、鮮やかな墨の色。しかし、墨そのものは、膠が劣化していくためあまり古いものは用を為さなくなるという。珍重される古墨は、実用的価値よりも歴史的な価値に重きがあるようだ。
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◆2006年5月8日よりスタートした「日歌」が千首を超えたのを機に、「游歌」とタイトルを変えて、2009年2月中旬より再スタートしました。
◆2011年1月2日からは、楽歌「TNK31」と改題してスタートすることにしました。◆2014年10月23日から「一日一首」と改題しました。
★ 「ジグソーパズル」 自作短歌百選(2006年5月~2009年2月)
☆短歌集「ミソヒトモジ症候群」円居短歌会第四歌集2012年12月発行
●「手軽で簡単絞り染め」
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プロフィール
sunkyu
日本の四季と日本語の美しさ、面白さ、不可思議さ、多様性はとても奥が深い。日々感じたことを「風におよぎ 水にあそぶ」の心持ちで短歌と共に綴っています。 本業は染色作家
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