ニールセン:クラリネット&フルート協奏曲
ザビーネ・マイヤー、アマニュアル・パユのソロにラトル=BPOという万全のバックの素晴らしいニールセンの協奏曲集です。しかし、このCDで最も素晴らしいと思ったのは木管5重奏でした。就中バボラクのメロウなホルンにはすっかりしびれました。個人的にそれほど好きなホルン奏者であるわけではありませんでした。しかし、今回の5重奏でのメロウな音色にはまいりました。実に素晴らしい音色です。ということで最初からズレまくってしまいました。 メインのコンチェルトは申し分ない出来で、パユ、マイヤー両者の名人芸が存分に楽しめます。■ラプソディくな曲想とドラマチックな構成で楽しめる協奏曲集 ニールセンの管楽器のための協奏曲ですが、個人的には初めて耳にしました。どちらもラプソディックな曲想がとても新鮮です。ソロの技巧はそれほど難しいとは思いませんが、どちらもドラマチックな構成で、聴き応え十分です。今回のCDに収められた曲はニールセン晩年の作品です。軽快な動きと爽やかさとユーモアを感じさせる作風、それに独特なオーケストレーションで、とても新鮮で聞きやすい音楽です。■オケとソロの丁々発止の演奏がスリリング フルート協奏曲の第2楽章中間部でのホルンの旋律にのって独奏フルートとバイオリンが丁々発止とやり合う場面はスリリングです。終結部のティンパニとトロンボーンのグリッサンドも印象的です。 クラリネット協奏曲は最初の部分でのとぼけた味のテーマとオケがクラリネットをあおり立てる部分のダイナミックな動きを聴いていると、バックでクラリネットを支える奏者たちの感じる気持ちの良さを想像してして堪らなくなります。聴き手にも演奏する側にも幸福感をもたらす音楽です。静謐な「Poco Adagio」以降は少しシリアス気味になっていきます。オケとソロ・クラリネットとの火の出るような音楽の応酬に聴き手の心も熱くなります。最後のバルトーク風の「Allegro Vivace」前半での息もつかせぬ展開も見事です。■軽妙な五重奏 木管五重奏(1922年)はコペンハーゲン管楽五重奏団のために書かれ、2楽章構成のフルート協奏曲(1926年)と単一楽章のクラリネット協奏曲(1928年)もこのメンバーのために書かれました。本来全員のために協奏曲を書く予定であったが、残りの3人の協奏曲は書かれませんでした。 軽妙で伸びやかな曲想は、スカンジナビア地方の短い夏の柔らかな日差しを感じさせるようで、なかなかいい感じでした。■演奏の喜びが伝わってくる曲と演奏 CD全体を通して、スカンジナビア地方の空気を肌で感じさせるようなところもあり、これは渋いながらも素晴らしいCDだと思います。普段なら聴いていてどうのこうのと思うのものですが、演奏していて気持ちがいいだろうと思ったことは本当にまれな経験でした。これは広く聴いていただきたいアルバムだと思います。Nielsen:Clarinet&Flute Concertos(EMI 0946 3 94421 2 6)1. Flute Concerto: I - Allegro moderato2. Flute Concerto: II - Allegretto3. Clarinet Concerto: Allegretto un poco4. Clarinet Concerto: Poco adagio5. Clarinet Concerto: Allegro non troppo6. Clarinet Concerto: Allegro vivace7. Wind Quintet in A major, Op.43: Allegro ben moderato8. Wind Quintet in A major, Op.43: Menuet9. Wind Quintet in A major, Op.43: Praeludium: Adagio10. Wind Quintet in A major, Op.43: Tema con variazioni: un poco andantinoEmmanuel Pahud(fl)Sabine Meyer(cl)Sir Simon RattleJonathan Kelly(Ob,Cor.a.)Stefan Schweigert(Fg)Radek Baborak(Hr)Berliner PhilharmonikerRecorded 1-3,Vl,2006,Philharmonie,Berlin(1-2)18-20,V,2006,Jesus-Christus-Kirche,Berlin(3-6)8,Xll,2006,Teldex Studios,Berlin(7-10)